学級崩壊を発達障害のせいにする学校

発達障害を疑う前に、自分の授業を疑え!


1.学級崩壊を発達障害のせいにする学校

※ 同じような事例の相談を、毎年、いただきます。

ある中学校で特別支援コーディネーターをしていたときの話です。

私は校長に呼ばれこう言われます。

「1年1組が学級崩壊になりそうだ!」
「大地くん(仮名)がクラスを悪い方向に導いている。」
「どうやら、大地くんは発達障害のようだ!」
「スクールカウンセラーと一緒に授業を見てくれ!」

私はスクールカウンセラーと一緒に1年1組の国語の授業を見にいきました。

2.ADHDの傾向はあるけど・・・・

スクールカウンセラーと一緒に1年1組の授業を見ていると、気になる子どもが2人いることに気づきます。

さりげなく名前を確認すると、気になる子の1人が大地くんであることが分かりました。

確かに落ち着きがないようには感じます。

注意も散漫で常にキョロキョロしているのです。

しかし、担任の先生が問題を解くよう指示を出すと、大地くんは何も言わず問題に取りかかりました。

ただ、大地くんには難しい問題だったようで、すぐに諦めて問題を解くのをやめてしまいます。

問題を解くことが出来ないと思った大地くんは、席を離れて友達の所に歩いていきました。

3.教師の授業力(指導力)にも問題があるのでは?

これをみたスクールカウンセラーは私に耳打ちしました。

「スグに飽きてしまう!集中できない!動き出す!」
「大地くんは完全にADHDですね!」

大地くんがADHD傾向であるという意見に対しては反対はありません。

私も同じように感じたからです。

しかし、教員を20年(当時)してきた私には、大地くんの行動以上に気になることがありました。

それは、担任の授業進行や声かけ、机間支援の「未熟」さです。

4.問題を解き終わった子が苦手な子に教えるシステム

最初に担任は黒板を使い問題の解き方を説明します。

そして、その後の指示を出します。

「問題を出来た人は先生の所に持ってきて!」
「先生が○付けをするからね!」

子どもたちは急いで問題に取りかかります。

当然、大地くんも問題に取りかかりました。

勉強が得意な子がスグに問題を解き終わり、担任のところにノートを持っていきます。

先生は○付けをして、その子を褒めています。

問題を解き終わった子どもたちは、ぞくぞくと先生のところに並んでいきます。

すると、先生がこのような言葉を発します。

「合格した子は分からない子に教えてあげて!」

5.それぞれの指導法法にはメリットとデメリットがある

これは、小学校や中学校で良く見られる授業の光景です。

先に問題を解いた子が、問題が分からない子どもに教えるのです。

このような指導方法にはメリットもあればデメリットもあります。

どちらにしても、この指導方法は「落ち着いているクラス」や「子ども同士の仲が良いクラス」で効果を発揮する指導方法です。

逆に「荒れているクラス」や「スクールカーストがあるクラス」では、デメリットの方が多くなってしまいます。

1年1組は学級崩壊一歩手前のクラスです。

案の定、この指導補方法によるデメリットの方が多くなっていたのです。

6.問題を教えずにおしゃべりを始める子どもたち

合格した子は、仲の良い友達のところに行きます。

そして、まだ、問題を解き終わっていない友達に問題を教え始めました。

しかし、大地くんのところには誰も教えに来てくれません。

これでは、大地くんが永遠に問題を解き終えることはないでしょう。

合格した子が増えてくると、次のデメリットが生じます。

合格した子が、仲の良い友達のところに行くのです。

ただ、その友達も合格をしています。

そうです。問題を教えに行くのではなく、おしゃべりをしにいくのです。

大地くんが、問題を解き終わっていないのに席を立ったのはこの時です。

クラスの1/3の子どもが合格をもらい出歩いていたときなのです。

7.大地くんばかりが担任から注意をされる!

クラスの半分以上が出歩いて、問題を教えている(しゃべっている)状態になりました。

出歩いておしゃべりをしているのは大地くんだけではありません。

しかし、先生は大地くんを真っ先に注意します。

「大地くん!」
「あなたは、まだ、合格してないでしょ!」
「何で、出歩いてるの!」
「席に戻って、問題をやりなさい!」

大地くんは、素直に席に戻り問題を解こうとします。

しかし、答えがわからない大地くんはまた出歩いてしまいます。

ただ、冷静に回りを見てみると、大地くん以外にも合格をしていないのに出歩いている子が何人もいます。

それでも、他の同じような子は注意をされず、大地くんだけが注意をされます。

「大地くん!何度言ったらわかるの!」
「席に戻って、問題をやりなさい!」

8.イライラする大地くんと回りで騒ぐクラスメイト

大地くんは席に戻り机に突っ伏してしまいました。

表情からはイライラが伝わってきます。

私の予想ですが、大地くんはこう思っていたのではないでしょうか?

『何で、俺ばっかり注意されるんだ!』
『俺以外にも出歩いている子はいるのに!』

私はクラス全体を見てみます。

すると、黒板の磁石を勝手に持ってきて、いたずらをしている子。

電子黒板を勝手にいじっている子。

出歩いておしゃべりをしている子。

自分の席に座っているのは、注意をされてイライラしている大地くんと数人の女の子だけです。

9.大地くんがキッカケではないことでも怒られるのは?

先生のところに並んでいた子どもがいなくなりました。

すると、先生はまた授業をはじめます。

当然ですが、大地くんの授業意欲はなくなっています。

その後、国語の授業で大地くんは5回ほど注意をされました。

確かに、「大地くんが怒られて当然」という行動が2回ありました。

しかし、残りの3回の行動は「他の子が先に出歩いた」「他の子がおしゃべりを始めた」「他の子がヒソヒソ話を始めた」ことがキッカケです。

もちろん、そのキッカケに乗ってしまい、大地くんが一緒に出歩いたり、騒いだり、ヒソヒソ話をしたのは事実です。

しかし、担任の先生が怒るのは大地くんだけです。

「大地くん!何で授業をちゃんと受けないの!」
「いい加減にしなさい!」
「今は休み時間ではありません!」

一緒に遊んでいた子を先に怒ったり、一緒に怒ったりすればいいのですが・・・。

怒られるのは大地くんだけでした。

10.私は悪くない!あの子が発達障害だから!(担任)

大地くんは授業に参加しようとしていました。

しかし、授業の内容が分からなくなってしまい、やる気をなくしてしまったのです。

本来であれば、教師が上手に授業を行うことで大地くんは授業に参加できたはずです。

担任が上手に支援を続ければ・・・・。

ADHDの特徴を「得意」と思うことができれば・・・。

しかし、担任は大地くんの「何にでも興味を持つ」という部分を「悪い」と決めつけました。

「授業に集中しない!」
「自分勝手な行動をとる!」
「説明の途中に口を挟む!」
「授業中に出歩く!」など

担任が自分の教科である国語に興味を持たせることが出来ていれば、授業の内容に対する「つぶやき」が多く出るようになるのに・・・。

そして、最終的にこのような結論に達します。

「どうして、あの子は言うことを聞かないの?」
「なぜ、他の子と同じ事ができないの?」
「私は何も悪くない!」
「あの子が発達障害だから授業が上手くいかないんだ!」

11.薬を飲ませましょう!(スクールカウンセラー)

授業参観後、校長、担任、学年主任、特別支援コーディネーター(私)、スクールカウンセラーでケース会議を行いました。

「大地くんは、どうでしたか?」
「やっぱり発達障害ですよね!」

担任の問いにスクールカウンセラーが答えます。

「あの子は発達障害です!」
「完全にADHDでしょう!」
「だから出歩いたり、しゃべったりしてしまうんです!」
「まずは病院で検査をしてもらいましょう!」
「そして、薬を処方してもらいましょう!」
「もらった薬を飲めば、落ち着くでしょう!」

このことばに担任は笑顔で答えます。

「やっぱり!そうですよね~!」
「私もそう思っていたんです!」
「だから言うことを聞かないんですよね!」
「話を理解できないってことですよね~!」
「発達障害だから!」

12.授業改善の提案をするも・・・

「ちょっと待って下さい!」
「病院とか薬とか言う前に授業を工夫してみませんか?」

私の意見に対して校長が質問をしてきます。

「具体的に、どのような工夫をするんですか?」

そこで、私は授業の改善点を伝えます。

① 大地くんに勉強の個別指導を行う

大地くんは「勉強をがんばりたい」という気持ちがあります。

授業中の様子を見ると、分からないところを先生に教えてもらいたいという気持ちがあるように見えました。

もしかしたら、「友達には教えてもらいたくない!」というプライドがあるのかもしれません。

担任が個別指導を行うことで大地くんとの関係を良くすることが出来ます。

さらには、褒める場も作ることができるため、大地くんの担任への信頼が高まり、授業態度の改善にも効果があると思われたのです。

② 合格をもらった子が歩き回るのはやめる

合格をもらった子は「終わっていない友達に教えにいく」ことになっています。

しかし、現状はこの指導法により授業はざわつき、大地くんを指導する回数が増えています。

また、実際に「終わっていない友達に教えている子」はほとんどいないのが現状です。

逆に出歩いて「おしゃべり」や「いたずら」をしている子がほとんどです。

それならば理想を追い求めるのはやめ、この指導方法は封印するべきです。

ADHDの傾向がある大地くんは、回りの子が出歩いていると気が散ってしまうのです。

当然、一緒になって出歩いたり、しゃべったりする可能性は高まってしまいます。

③ 教え合うなら前後左右の子に限定する

担任として「教え合い学習」を大切と思うのであれば、他の方法を考えるといいでしょう。

例えば、教えていいのは「前後左右の友達」に限定するなどはどうでしょう?

出歩くことは禁止とすることでクラスが落ち着くとともに、「教え合い学習」による知識の理解も深まります。

もちろん、クラスが落ち着いてきたら、少しずつ「席を立って教えてもいい」とルールを緩和してもいいと思います。

こうすれば、今の指導方法より、スムーズに担任の思いを実現できるはずです。

④ 問題合格後にやるべき課題を伝えておく

合格した子は「教える」という大義をもって、堂々とおしゃべりをしています。

これでは、授業の規律が守られません。

おしゃべりに夢中になるため、その後の授業でもおしゃべりが続いてしまう可能性もあります。

問題合格後にやるべき課題やプリントを用意し、明確にするのはどうでしょう?

子どもたちはそれに真剣に取りくむのではないでしょうか?

少し難しい問題のプリントを用意するのがオススメです。

そのような問題であれば、友達との「教え合い学習」が活発になると思うのですが。

もちろん、問題合格後は読書や宿題を「静か」に行うというルールもオススメです。

13.前の学校では上手くいってました!(担任)

私は授業の改善方法を具体的にお伝えしました。

しかし、この提案は担任の癇に障ったようです。

「前の学校では、このやり方で上手くいっていました!」
「大地くんがいるから、上手くいかないだけです!」
「あの子は発達障害だから、私のやり方についてこれないんです!」

スクールカウンセラーもこう言います。

「まずは病院で検査をしてもらったほうがいいと思います。」
「薬を飲めば多動を抑えることが出来ます!」
「親御さんに病院を勧めた方がいいと思います。」

最終的に校長の判断で、担任とスクールカウンセラーの意見が採用されます。

14.大地くんママに病院での検査を勧めると・・・

その後、学年主任が大地くんママに「病院での検査」を勧めると、大地くんママはこのように言ってきたそうです。

「確かにADHDの傾向はあるかもしれません!」
「でも、小学校の時はしっかり授業を受けていました!」
「本人は担任が嫌いと言っています!」
「担任の対応が悪いんじゃないですか?」
「専門家であるスクールカウンセラーに相談をさせて下さい!」

相談を受けたスクールカウンセラーは、大地くんママの圧力に屈したのでしょうか?

ケース会議とは反対のことを大地くんママに伝えてしまいます。

「小学校のときは普通に出来ていたんですね。」
「それでは、大地くんに検査は必要ないかもしれませんね。」
「私から授業改善を学校に伝えておきますね。」
「検査についても保留でいいと思います。」

「あの子は遅かれ早かれ不登校になっていた!」学級崩壊クラス担任の言葉!問題行動を子供のせいにする教師達①

悪いと思った人が注意をすればいいと思います?


1.教え子のお母さんから「妹」の相談が

先日、教え子のお母さんから次のような相談をいただきました。

「西川先生、お久しぶりです!」
「あの時はお世話になりました。」
「○○は大学生になりました。」
「西川先生のような先生になりたいと言って教員課程を受けています。」

このように言ってもらえるのは嬉しい限りです。

「突然で申し訳ないのですが・・・・。」
「先生に相談したいことがありまして・・・・。」
「小学校6年生になった○○の妹の事なんです。」
「妹のクラスが・・・・。」

私は○○くんの家に家庭訪問をしたときの事を思いだしました。

『あの子がもう小学校6年生なったのか~!』
『○○が大学生になっているわけだ!』

2.担任は○○大学付属中学校から異動してきた

「担任は4月に異動してきた先生です。」
「前任校は○○大学付属中学校だったそうです。」
「そこで、6年間の研究と研修を終えてきたと・・・。」

先生の中には「○○大学付属中学校(小学校)」や「研究指定校」「教育大学院」で勤務をする方がいらっしゃいます。

このような先生方に対する私の印象は・・・・。

『一定レベルの学力を持っている子供たちは上手に扱えるが・・・。』
『成績や能力にバラつきのある公立学校では・・・。』
『クラスを学級崩壊させてしまう先生もいるんだよな~。』

本当に優秀で尊敬できる先生もいました。

ただ、私が一緒に仕事をさせていただいた先生の中には「特定の条件がそろっている学校」でしか力を発揮できない先生もいたのです。

3.子供を怒らず気づかせる学級運営をする?

「4月の最初の授業参観で先生は次のように仰いました。」

『私は子供を叱り(怒り)ません!』

「その理由についても話して下さいました。」

『子供は考える力をもっています。』
『さらに言うと、自分で気づく力ももっています。』
『勉強でも、学校生活でも、私はこの力を大切にしていきたいと思います。』
『これが文部科学省の言う「生きる力」なのです。』

お母さん方は「先生の話」を聞いて共感したそうです。

ただ、後から振り返ってみると、次の言葉が心に引っ掛かったと言っていました。

『私は子供を叱り(怒り)ません!」

4.暴言を吐く子や友達をカラカう子が増えた

1学期の終わり頃、お母さん方の間で次のような話が出始めます。

「Aくん(ヤンチャな子供)が、授業中に暴言を吐いてるらしい!」
「先生の指示に対して文句を言っているらしい!」

『あ~うぜ~な~!』
『めんどくさい!』
『なんで、そんな事をやらなきゃダメなの?』

「BくんやCくんも一緒になって騒いでいるらしいよ!」
「でも、先生は注意はしないらしいよ!」

どうやら、先生に怒られない(叱られない)事が分かり、エラそうな態度をとっている子供がいるようです。

「Dちゃんが不登校になったらしいよ!」
「授業中に発表したら、その子たちにカラカわれたらしいよ!」
「その時も先生は注意をしなかったんだって!」

5.子供たちにも「怒らない!」と宣言した担任

お母さんは娘さんにクラスの様子を聞きます。

「先生が4月の最初にクラスで次のように言ったの!」

『先生はみんなを怒りません(叱りません)!』

担任の先生は親御さんダケでなく、クラスの子供たちにもハッキリと言ったようです。

「それを聞いたAくんが次のように言った!」

『ラッキー!』
『何しても怒らないだよね!』
『先生を怒らせる事をしようぜ!』

この時、Aくん達は先生を試したのだと思います。。

もしかしたら、冗談のつもりで発言したダケだったかもしれません。

6.「今は何をする時間かな?」と聞かれた子は・・

「Aくん達は授業中にふざけたり、おしゃべりしたり、出歩いたりしたの。」
「でも、先生は注意をしなくて・・・。」
「たまに、注意をするときも優しく声をかけるダケなんだよね。」

『今は何をする時間か考えましょうね~。』
『しゃべる時間かな~?』
『何のために出歩いているのかな?』
『周りの仲間の気持ちを考えてみようね~。』など

「先生が何を言っても、Aくん達はふざけて返すだけ。」

『考えました~!』
『しゃべっていい時間だと思いま~す!』
『友達と話すために出歩いています!』
『みんなは嬉しいと思いま~す!』など

最初は先生を試すダケのつもりだったのでしょうが、何をしても「怒られない(叱られない)」ことで、Aくんたちの箍が外れてしまったのでしょう。

娘さんは最後に次のように言ったそうです。

「先生はAくんたちに何も言わなくなったよ!」

7.授業参観で「ムリ~」「うぜ~」と発言する子

2学期に入ってスグに授業参観があったそうです。

そこでは、授業参観にも関わらず、次のような光景が目に入ってきます。

・半分の子供は先生の話を聞いていない。
・先生が指示を出しても「やだ~!」「ムリ~!」「うぜ~!」と声が出る。
・先生は何も言わずに授業を続ける。
・寝ている子供がいる。
・勝手に出歩く子供がいる。
・一部の子供の発表だけで授業が進む。
・座ったままの子供がいても授業終了のあいさつをする。
・授業後すぐに先生は職員室に戻っていく。
・子供たちは机の上に座ったり、走り回ったりする。

これは、完全に「学級崩壊」であり、かなり「深刻な状態」と考えて良いでしょう。

なぜなら、この光景は「授業参観」の光景だからです。

普通はどんなに悪いクラスでも「授業参観」では少しは猫をかぶるのですが・・・。

※ もしかしたら、この光景が「猫をかぶっている」状態なのかもしれません。

8.あの子は遅かれ速かれ不登校になっていた

授業参観終了後、お母さんはママ友と一緒に職員室に向かいます。

そして、担任の先生に「授業態度」についての心配を伝えたのですが・・・。

「子供たちには、考えるキッカケを与えています。」
「子供たちが自分で考え、そして、行動しなくては意味がありません。」
「自分で考え、行動できるようにするのが教師の仕事なのです。」

ママ友が次のような質問をしたそうです。

「Dちゃんは、授業中にカラカわれて不登校になったと聞いたのですが・・・。」

すると担任は次のように答えます。

「個人情報なので詳しくは言えません。」
「ただ、Dさんは他人の目を気にしすぎる性格です。」
「そこから、集団への苦手意識を持つようになっていました。」
「Dさんは遅かれ早かれ不登校になっていたはずです。」
「まあ、小学校で自分の『向き不向き』が分かったのは良い事だと思っています。」

9.学級崩壊について校長に相談する

担任の考えに納得できなかったお母さん達は、次のように思ったそうです。

『このまま担任と話をしていても埒が明かない。』
『学級崩壊について校長や教頭に伝えなければ!』

お母さん達は校長室に向かいます。

突然、校長室をノックすることに緊張を覚えたそうですが、子供のためを思って勇気を出してノックをしたそうです。

校長先生は笑顔で校長室に入れて下さり、真剣に話を聞いて下さいました。

お母さん方が授業参観の様子を伝え終わると・・・。

「実は、少し前に他のお母さん達からも同じ話を聞いたばかりなんです。」
「主任会で彼(担任兼主任)からは、『特に問題なし』と聞いていたのですが・・・。」
「正直、私も驚いているんです。」

どうやら、クラスが「学級崩壊状態」である事は校長先生に伝わっていなかったようです。

10.話し合いから1週間が経っても・・・

「実は何度か6年生の授業は見ていて・・・。」
「少しずつ騒がしくなっているのは知っていたのですが・・・。」
「担任に確認をすると『問題ありません』『必要な状態』と言われて・・・。」

どうやら、校長は担任が「○○大学付属中学校」から来たということで、「生きる力に必要な段階である」という言葉を信じてしまっていたようです。

「この後、すぐにでも彼から話を聞いてみます。」
「学校として子供たちのために最善を尽くします!」

校長と話ができたことで、お母さん達は安心して学校を後にしました。

しかし、1週間が経っても学校から「今後」についての「連絡」や「通知」はありません。

『親に連絡はないけど、対応をしてくれているんだろうな。』
『少しずつクラスが良くなってくるんだろうな。』

このように思っていたお母さんが、娘さんにクラスの様子を聞いてみると・・・。

「何も変わっていないよ!」

11.校長が本気で学級崩壊改善に乗り出した!

お母さん達は「PTAの学年委員」と一緒に「学級崩壊」についての相談を校長にします。

すると、「相談の場」で次のような内容が校長から語られました。

「連絡が遅くなって申し訳ありません。」
「学校は6年1組を学級崩壊に近い状態と考えています。」
「そこで、来週から6年1組の授業に補助員を配置します。」
「しかし、補助員を雇うことはできないので、私と教頭、教務の3人で補助を行います。」
「基本的には、全ての授業に3人のうちの誰かが付く予定です。」
「ただ、出張や会議などで担任が1人で授業を行うこともあると思います。」
「それでも、可能な限り私たちの3人が6年1組を補助したいと思っています。」

校長先生は「学級崩壊状態」であることを認め、現状で可能な対応を考えて下さったようです。

「保護者の方にお願いがあるんです。」
「クラスが気になると思うので、いつでも見学に来て下さい。」
「授業を見ている人数が多い方が良いと思うんです。」
「それにより、少しずつですが落ち着いて授業に取り組めるようになるんです。」
「毎日が授業参観と思っていただき教室に来て下さい。」
「他のお母さん方にも広めていただいて結構です。」

12.理想の対応ではなく現実に即した対応を!

お母さんは私に次のように聞いてきました。

「校長先生の対応は正しいのでしょうか?」
「これで学級崩壊は改善するのでしょうか?」
「担任の先生が変わらなくてもよいのでしょうか?」

私は「25年の教員経験」から、次のようにお伝えさせていただきました。

「私が生徒指導主事の時も同じような対応をしたことがあります。」
「大人(担任)は簡単には変わりません。」
「特に自分に『自信のある』人間はなおさらです。」
「もちろん、理想は『子供たちが自分で気づき行動を変える』事です。」
「ただ、それに時間がかかる場合は『教師の管理』も必要だと思います。」
「理想の対応ではないかもしれませんが、安心する子供が増えるはずです。」
「Aくん達にしてみれば、イヤな状態でしょうね。(笑)」

13.教頭先生は「出歩き」や「私語」を注意!

少し経って娘さんの表情が明るくなってきたそうです。

「最近、教頭先生や校長先生が授業に来るようになったよ!」
「お母さん達が来る日も多いよ~。」
「○○くんのお母さんや□□くんのお母さんは、毎日、教室に来てるよ!」

表情が明るくなった事やクラスに対しての発言から、Aくん達の問題行動が少しずつ落ち着いて来ているように感じます。

「昨日、教頭先生が教室に来た時、Aくんが出歩いておしゃべりしてたんだ!」
「それを見た教頭先生がAくんを廊下に連れ出したんだよ!」
「そして、廊下でAくんを怒ってた!(怒鳴ったりではないようです)」
「そうしたら、いつも五月蠅いBくんやCくんが静かになったんだよ!(笑)」

教頭先生は、子供が「悪い事」をした時にシッカリと「注意する」先生のようです。

14.教頭先生カッコいい!頼りになる!

教頭先生の指導により、BやCは静かになって来たようです。

もちろん、何度か注意を受けているAも静かになって来ています。

すると、女子達の中で「意外な言葉」が囁かれるようになりました。

「ねぇねぇ。」
「教頭先生ってカッコよくない?」
「普段は面白いのに、怒るときはビシッと怒るよね!」
「頼りになる感じだよね~!」
「教頭先生が担任だったら良かったのに!」
「昼休みに教頭先生のところに行こうよ!」
「いいね!」
「そうしよう!」

ルッキズムではありませんが、教頭先生はお世辞にも「イケメン」の部類ではありません。(笑)

それでも、メリハリの付いた指導を行っていた事や芯の通った指導を行っていた事で、女子達には「頼もしい存在」と映ったのでしょう。

そこから、クラスの女子達は「教頭先生ガッコいい!」「教頭先生と話したい!」と思うようになったのでしょう。

この後、教頭先生や校長先生、教務主任の先生の補助により、6年1組の「学級崩壊」は少しずつ改善していきます。

15.校長に呼ばれた担任が最初に言った言葉

話はココで終わりません。

実はその小学校の教頭先生は私の知り合いだったのです。

ここから先は教頭先生から聞いた「本当の裏話」となります。

話は「授業参観後にお母さん達と校長が話し終わった」時に戻ります。

校長はスグに教頭と教務を校長室に呼び、今後の対策について話をしたそうです。

少しして教頭は職員室に戻り、担任の先生に「校長室に来て下さい」と声をかけます。

しかし、校長室に入った担任は開口一番、次のように言ったそうです。

「後5分で勤務時間が終わります。」
「お話は5分以内でお願いします。」

勤務時間の話を出されてしまっては校長は何も言えません。

※ 教職員調整手当が至急されているので、残業を命令しても問題はないのですが・・・。

結局、その日は担任から話を聞くことが出来なかったそうです。

16.校長、教頭、教務、担任の話し合い

翌日。

6時間目終了後、校長室では校長、教頭、教務主任、担任(主任兼務)で話し合いが行われました。

校長が担任に「学級運営(学級経営)」についての考え方を聞くと・・・。

「私は子供を叱り(怒り)ません!」
「子供は考える力をもっています。」
「さらに言うと、自分で気づく力ももっています。」
「勉強でも、学校生活でも、私はこの力を大切にしていきたいと思います。」
「これが文部科学省の言う『生きる力』なのです。」

担任が4月に保護者に言った内容と全く同じです。

これに対して、校長は次のように話して担任を誘導(?)しようとします。

「その考えは正しいと思うけど・・・。」
「悪口を言っている子供が気づくまで待つの?」
「その悪口で不登校になってしまった2人はどうするの?」
「授業中に出歩く子もいるらしいね。」
「そのせいで、授業に集中できない子供もいると思うんだけど・・・。」

17.私は「出歩き」などが悪いと思わない?

校長の誘導(?)に対して、担任は次のように答えたそうです。

「僕は子供たちの行為が悪い事だとは思っていません。」
※ 行為=「出歩く」「悪口を言う」「おしゃべりをする」など
「本人が気づくために必要な事だと思っています。」
「自分で気づき、自分で考え、自分で行動を改める事が大切なのです!」

さらに担任はこう続けたそうです。

「もしそれが悪いと思うなら、そう思う先生が指導したらどうですか?」

口では理想を唱えていますが、コレが担任の最も言いたい事だったのではないでしょうか?

『子供たちが思い通りに気づかない。』
『○○大附属中学校の子供は気づいてくれたのに!』
『そもそも、悪口や出歩きなんて付属の子供たちはしなかった!』
『なんで、こんな当たり前の事が出来ないんだろう?』
『悪いのは私の対応ではない!』
『気づけない子供たちが悪いんだ!』
『だから、自分は悪くない!』

このように思っていたのではないでしょうか?

18.学校の価値観を押し付けたくない?

どうして「学級崩壊」していることを認めないのでしょう?

担任の「学級経営(学級運営)」によって、2人の子供が不登校になってしまった事実を受け入れないのでしょう?

担任が指導をする方向に誘導(?)したい校長に対して、担任は次のように言ったそうです。

「僕は自分の価値観が絶対だと思っていません。」
「僕が良いと思っても、他の人は悪いと思う事があるでしょう。」
「ただ、それは正しい事なのです。」
「様々な価値観があって、お互いに尊重することが大切なんです!」
「子供達も自分の価値観を持っていると思います。」
「僕はその価値観を大切にしたいと思っています。」
「ですから、子供達に学校の価値観を押しつけたくないんです。」

クラスの子供達がお互いの「価値観」を大切にし、お互いの「価値観」を否定せずに受け入れられたら・・・。

とても素晴らしいクラスになると思いますが・・・。

19.我慢をしている子の価値観はどうなるの?

担任の「価値観」は分かりました。

ただ、一部の子供の「価値観」によって、他の子供の「価値観」が踏みにじられているという現実が目の前にあります。

私が校長なら次のように担任に聞いてみたいところです。

「我慢して仲間の価値観を受け入れている子供の価値観はどうするの?」
「自分の価値観を押しつける子供はどうするの?」
「相手の価値観によって、不登校になってしまった子供が悪いの?」

しかし、校長は担任を誘導(?)することを諦めた(言えなかった?)ようです。

ただ、最後に次のように仰いました。

「先生のクラスに補助員をつけさせてもらいます。」
「補助員が『悪い』と思った部分は指導をさせてもらいます。」
「先生は今までどおり『学級運営(学級経営)』を行って下さい。」
「親御さんが心配しているので、先生の授業は全て自由参観とさせて下さい。」
「先生の素晴らしい『授業』や『学級運営(学級経営)』を、親御さんに見せてあげて下さい。」

担任は何も言わなかった(言えなかった)そうです。