教師の人事異動はいつ決まる?

1.先生!行かないで~!

2.離任式は先生達との別れの場

 3月は別れの季節です。小学校では6年生、中学校や高校では3年生がそれぞれ旅立っていきます。学校現場では卒業生以外にも先生との別れもあります。

 3月の終わりに行われる離任式では、「お世話になった先生」と別れることに涙を流す生徒もいるでしょう。できる事なら異動して欲しくない「頼りになる先生」や「優しい先生」「面白い先生」もいるでしょう。

 逆に「嫌いな先生」や「やる気のない先生」が異動することを喜ぶ生徒もいるかもしれません。

3.人事異動は11月から始まっている!

 さて、先生たちの人事異動はどのように行われているのでしょうか?今回はそれについて、お話をさせていただきます。

 最初にお伝えするのは、定年退職ではなく「退職を希望する」先生についてです。

 11月に入るとスグに、校長が職員会議や打ち合わせで次のように言います

「次年度、退職を希望する先生は私の所に来て下さい。」

 3月に退職を希望する先生は、11月~12月の間に校長に「退職希望」を伝えるのです。

 なぜ、そんなに早く伝えなければいけないのでしょうか?

 これは、次年度の「新規採用枠」や「講師の確保」「予算」がこの時期に検討されるからです。

 子どもたちの「転校予定調査(次年度在籍調査)」も同じ趣旨から、この時期に行われます。

4.公務員を辞めて起業するには勇気と決意が必要!

 私は「公認心理師」の資格を取るために退職を考えていました。しかし、退職して起業するには勇気や決意が必要となります。子どもは2人とも小学校でしたし、住宅ローンもありました。

 独り身ならともかく家族がいます。そのため、安定した公務員を退職するには勇気と決意が必要だったのです。

 そんなとき、校長が職員会議で次のように言いました。

「次年度、退職を希望する先生は私の所に来て下さい。」

 まだ退職を決めていない私でしたが、今後について校長に相談をすることにしました。

5.校長に退職や起業について相談をすると・・・

「公認心理師の資格を取るため退職を考えているのですが・・・。」

 これに対して校長は少しだけ引き留めて下さいました。

「もうすぐ、西川先生は主幹教諭となるでしょう。」
「その後、教頭、校長となるはずです。」
「やめてしまうのは、もったいないのではないですか?」

 当時の私は何人かの管理職から「主幹教諭」や「教頭試験」についてお誘いをいただいていました。私が退職を悩んでいた理由の1つでもありました。

 また、ズルい話ですが次のようにも考えていました。

「退職後の仕事の目処が付いてから退職すれば良いのでは?」
「カウンセラーとしての目処が付かないのであれば、そのまま教師を続ける。」など

 この場合、「退職希望」は2~3月に伝えることとなります。

6.退職は10日前に伝えれば良いはずなのに・・・

 私が「2~3月に退職希望を決める可能性がある」と伝えると・・・。

「2~3月では教育委員会や校長会に迷惑がかかる。」
「退職するなら12月20日までに決めてもらわないと困る!」

 私が勤務していた県の規定では「退職希望は10日前までに伝える」となっていました。そのことを校長に伝えると・・・。

「そんなことしたら、教育委員会や校長会に迷惑がかかる!」
「人事のやり直しが必要になる!」
「常識的に考えて下さい!」
「自分の我が儘で他人に迷惑がかかるんですよ!」
「とにかく、退職するのであれば12月中に決めて下さい!」

 この言葉を聞いた私は退職することを決めたのです。

7.異動(残留)希望調査表って何?

 話を人事異動に戻したいと思います。

 年が明けると全ての教員に「異動(残留)希望調査表」が配布されます。組合に入っている先生たちには、組合からも「異動(残留)希望調査表」が配布されます。

 ちなみに、教育委員会から配布される調査表と組合から配布される調査表は、ほとんど同じ書類です、2つの書類の違いは、教育委員会の書類が「縦書き」で組合の書類が「横書き」かダケです。

 また、「異動(残留)希望調査表」には、異動したい学校を書く欄が3つあります。もちろん、その学校を希望した理由を書かなければなりません。

「子どもが小さいため、家に近いA小学校を希望します。」
「妻の転勤のためB市のB中学校を希望します。」など

 個人の都合以外の理由を書く(書かされる場合)もあります。

「C小学校で行っている研修に興味があるため、C小学校を希望します。」
「自分の苦手な学級運営を学ぶため、学級運営に力を入れているD中学校を希望します。」など

8.希望した学校に異動出来ない場合は?

 異動希望を出した先生は高い確率で「異動」をすることができます。

 さらに。組合に入っている先生の場合は高い確率で「希望した学校」に異動することができます。
 なぜなら、組合が校長会や教育委員会と交渉をしてくれるからです。

 もちろん、全ての先生が「希望した学校」に異動できるわけではありません。ただ、「希望した学校」に異動できなかった場合でも、異動先は同じ区内や市内の学校となります。

 自分が希望した地域以外の学校に異動させられることはほとんどありません。

 実際、私の25年間で「異動希望」と全く違う遠くの学校へ異動させられた先生は1人だけです。
 その先生は、校長と犬猿の中で常に対立をしていた先生です。

 自分も含め、他の全ての先生は「異動希望を出した学校」、もしくは「同じ区内や市内の学校」に異動することができていました。

9.異動希望を出していなくても異動させられる?

 私は25年間で8つの学校に勤務しました。その中で異動希望を出して異動できなかったことはありません。
 ただ、希望の学校に移動できたのは2校だけでした。

 逆に、「希望をしていない」のに他の学校に異動となったことはあります。

 このように「異動」を希望していないにも関わらず、異動が決定する場合もあります。これは「行政異動」や「地域ルール(新規採用や交流)」「引き抜き」という異動です。

 もちろん、無断で異動が決定する訳ではありません。ただ、上記の異動のほとんどが決定事項となっていることが多く、異動を拒否すると・・・。

 ちなみに私は「特別支援学校」への交流異動を教育委員会から提案をされたことがあります。私がそれを断ると、教育委員会のお偉いさんが突然、学校にやってきて・・・。

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先生たちの基本勤務年数は?校長は?最長は?

1.同じ学校に10年いるのはなぜ?

2.離任式は先生達との別れの場

 3月は別れの季節です。小学校では6年生、中学校や高校では3年生がそれぞれ旅立っていきます。学校現場では卒業生以外にも先生との別れもあります。

 離任式では、「お世話になった先生」と別れることに涙を流す生徒もいるでしょう。できる事なら異動して欲しくない「頼りになる先生」や「優しい先生」「面白い先生」もいるでしょう。

 逆に「嫌いな先生」や「やる気のない先生」が異動することを喜ぶ生徒もいるかもしれません。

3.新規採用教員の基本勤務年数は3年

「1つの学校に○何年以上、勤務してはいけない!」

 このような法律はありません。しかし、1つの学校に長くいることには「メリット」と「デメリット」があります。

 特に若い先生が1つの学校に長くいると、その学校や地域のやり方のみしか知ることができず、教師としての成長が止まってしまうという「デメリット」があります。

 そのため、義務教育の先生たちには勤務年数の「目安」があります。その1つが新規採用教員の勤務年数の目安です。

 教員の世界では「新採3年」「10年3校」と言われることがあります。これには次のような意味があります。

「新規採用教員の新任学校勤務年数は3年とする。」
「採用後の10年で3校に勤務する。」

4.「10年で3校」は各学校に3年ずつ?

「10年で3校に勤務する」に関しては、下記のような事例も可能となっています。

①3年→3年→3年→(10年目は4校目に異動)
②3年→4年→3年→(10年で3校に勤務)
③3年→6年→4年→(10年目で3校目に勤務)

 どのような形であれ、10年の内に3つの学校に勤務すれば良いのです。ただ、コレは目安ですので必ず新規採用教員が3年で異動するわけではありません。

 2年で異動する新規採用教員もいれば、最初の学校に4年や5年いる新規採用教員もいるのです。

5.一般教員の基本勤務年数は5年

 昭和の時代には1つの学校に「10年」も居続ける先生がそれなりにいました。ただ、平成や令和では1つの学校に長くいる先生はほとんどいません。

 現在、一般教員の勤務年数の目安は最長で「5年」と言われています。ただ、部活などで結果を出している先生が、1つの学校に5年以上いることは少なくありません。

 これは、「保護者の要望」や「議員の命令(?)」などの結果です。

6.教員生活46年で勤務校は3校?

 ある学校にバレーボールで全国大会常連の先生がいました。その先生は私が勤務する5年前から、その学校に勤務しています。

 3年後。私がその学校を異動することになった時、まだ、その先生は異動となりませんでした。

 その先生に異動しない理由を聞くと・・・・。

「保護者から続けて欲しいという希望が多いんだよ!」
「さらには保護者が議員に働きかけている!」
「その議員が教育委員会に命令しているんだ!」
「だから、オレはA中とB中を行ったり来たりしているんだ!」
「オレがこの市を出ることはないと思う!」
「知っている保護者が多くて指導をしやすいからね!」

 この先生は教員生活43年(定年後含む)で3つの学校にしか勤務しませんでした。

 ちなみに、現在、その先生は市のバレーボール協会会長となっています。

7.校長・教頭の基本勤務年数は2年

 校長や教頭などの管理職の基本勤務年数は2年です。

 教頭が異動するときは校長が残り、校長が異動するときは教頭が残るというように、必ずどちらかの管理職が学校に残るようになっています。

 校長と教頭の2人同時に異動することは滅多にありません。

 例外的に長く勤務する校長もいますが、それには様々な理由があります。

 実際に私が勤務した学校の校長で「6年」も同じ学校に勤務していた校長がいました。この校長が6年もの長期に渡って異動できなかったのは「裁判が終わっていなかったから」です。

 校長がその学校に勤務した年、体育の授業中に事故が起こり、子どもが「下半身麻痺」となってしまいます。
 その子どもの保護者が事故に対しての裁判を起こしたため、裁判が終わるまでの間、校長と体育教師は異動ができなくなったのです。

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1~2年の異動には公に出来ない理由が!

1.「学級崩壊」や「親からの苦情」以外にも・・・

2.講師の先生が1年で異動するのは珍しくない

 あなたの学校に1年、もしくは2年で異動した先生はいますか?

 もし、その先生が講師であれば、それほど珍しい事ではありません。講師の先生の契約は単年契約だからです。

 そのため、1年後に講師をやめたり、別の学校に行ったり、転職したりする先生は珍しくないのです。

 教員採用試験に合格して「正規の教員」となるために講師をやめる先生もいます。この場合も形式としては1~2年で異動という形になってしまいます。

3.1~2年で異動したのが正規の教員だったら・・・

 1~2年で異動したのが講師の先生ではなく正規の先生の場合、異動には必ず理由があります。

 私が一緒に仕事をしてきた先生たちで1~2年で異動した先生たちの理由は下記の4つです。

① 個人の事情による異動
② 校長による引き抜きで異動
③ 学級崩壊や保護者からの苦情で異動
④ 公に出来ない理由で異動

4.個人の事情による異動

 個人の事情による異動とは、家族や生活に変化が合った先生の異動です。具体的には下記のような事情があげられます。

・親の介護が必要になり実家に帰ることになった。
・結婚により他地区に引っ越すことになった。
・同じ学校に勤務していた2人の先生が結婚した。
(同じ学区、同じ市内でも、どちらかの先生が異動することが多いです。)
・妻もしくは夫の転勤で引っ越すことになった。

 最近では、親の介護をするために、比較的、安定している小規模校に異動を希望する先生も増えています。

5.校長による引き抜きで異動

 校長が力を認めた先生を自分の学校に引き抜くこともあります。

「君の力が必要だ!」
「ぜひ、私の学校に来てくれ!」

 自分の力を買ってくれている校長から、こう言われたら断ることは難しいのではないでしょうか?

 ちなみに、私は校長から2回ほどご指名を受けたことがあります。どちらもちょうど、1年担任→2年担任→3年担任として働き、子どもたちを送り出した後でしたので、そのまま異動が許可されました。

 校長は闇雲に先生を引き抜くわけではありません。そこには必ず明確な理由があります。

「文部科学省から学級活動の研修指定校に任命された!」
「学活のスペシャリストであるA先生が欲しい!」

「新しくできた道徳推進教諭の活用研究校に選ばれた!?」
「道徳主任を長くしてきたB先生に来てもらおう!」

「学校が荒れている!」
「今の先生たちでは、この学校を建て直すことはできない!」
「C先生に生徒指導主事をやってもらおう!」

 私がご指名を受けた2回の理由はどちらも「学校の荒れ」でした。もともとは楽しい授業をするために教師になったのですが・・・・。

 もちろん、どちらの学校にも喜んで異動させていただきました。

6.学級崩壊や保護者からの苦情で異動

 クラスが学級崩壊をしたり、いじめが起きたりしても対応をしない先生がいます。子どもたちとの関係が逆転してしまっている状態なので先生が動けない場合もあります。

 しかし、親にしてみれば大事な子どものクラスが学級崩壊をしていたり、いじめがあったりするのを看過することはできません。当然、学校にお願いをしたり、苦情を言ったりするでしょう。

 学校や学年がチームとして対応する場合もありますが、担任の先生まかせにする学校や学年もあります。正直、学級崩壊やいじめが起きているクラスを担任1人で改善するのは不可能です。

 確かに学級崩壊やいじめの原因は担任の指導力不足です。しかし、担任に全てを任せるのは間違っています。学校には学年や生徒指導部などのチームがあります。担任や子どもたちが困っているのであれば、チームで役割分担をすればいいのですが・・・・。

 学級崩壊やいじめを経験し、さらには保護者からの苦情を浴び、同じ学年の仲間が助けてくれない。担任の先生の心はボロボロになっているでしょう。

 当然、その学校で教員を続ける勇気は出てきません。そんな先生たちは1~2年でも異動をしていくのです。

7.公に出来ない理由で異動

 公に出来ない理由で異動をする先生もいます。本来なら「事件」であったり、「犯罪」であったりするのかもしれません。

 以下に示した「1~2年で異動した理由」は公にされている理由ではありません。ただ、1~2年で異動する先生には必ず理由があります。
 下記の理由は、教員時代の私が同僚の先生たちから聞いた話です。もちろん、先生たちの噂であるため真偽は定かではありませんが・・・。

・生徒と教師が性的関係をもったことがバレて異動した。
・教師が学年のお金をギャンブルに使っていたことがバレて異動した。
(その先生が「パチンコ好き」で「横領金額が3万円」という噂だったので、教師全員が信じました。)
・教師同士で不倫(デート)をしている所を保護者に目撃されたことで異動した。

 これらの噂は本当だったのでしょうか?


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突然の教育長からの呼び出し!その理由は?

1.呼び出された理由は?

2.突然の校長室への呼び出し!

 教員になって6年がたち、学級運営や授業、部活に熱心に取り組んでいた頃の話です。

 その年の11月。私が部活の練習でグランドにいると、私を呼び出す放送がかかります。

「西川先生!」
「至急、校長室においで下さい!」

 悪いことをした記憶が無かった私は、練習メニューをキャプテンに伝え、すぐに校長室に向かいます。

 職員室に入ると教頭が私の所にきて、こう言います。

「服装は・・・、まあ、仕方ないか!」
「シャツをズボンにしまって!」
「タオルは机に置いてきて!」

 Tシャツに短パンの私の服装を整えさせた教頭がこう言います。

「お前、何したんだ?」
「教育長がアポなしで来たぞ!」
「お前を名指ししているんだ!」

3.校長室に行くと教育長と2人っきりに!

『○○くんを怒ったから、保護者が教育委員会にいったのかな?』
『(嫌がらせをされた)先輩教師の悪口を言ったのがばれたかな?』
『あっ、でも、あれは大学の友人に言っただけだからな~!』
『まさかあいつ(大学の友人)が教育委員会に訴えたの?』

 とにかく、教育長に呼び出された理由が分かりません。考えても仕方がないので、私は校長室のドアをノックします。

「コンコン、コンコン」
「失礼します。」

 校長室に入ると講演会などで何度か見たことがある教育長がいます。校長は教育長の紹介をして校長室からでていきました。
 私は校長室で教育長と2人にされてしまったのです。

4.私を褒めまくる教育長!

 教育長が話し始めます。

「教員には慣れましたか?」
「確か先生は、去年、市の論文で最優秀賞を取りましたね!」
「あの論文はとても素晴らしかった!」
「子どもの成長が読み取れましたよ。」

 さらに教育長は続けます。

「部活動にも熱心だそうですね!」
「校長先生に聞きました。」
「何でも今年は市内で1、2を争う強豪になってきたとか。」
「テニスの経験者なのですか?」

 それに対して、私は答えます。

「論文を褒めていただき、ありがとうございます。」
「子どもたちがガンバってくれているのをまとめただけなんです。」
「それを褒めてもらうのは、少し申し訳ない気がします。」
「これからも、子どもたちが授業を楽しいと思ってくれるように、がんばっていきたいと思っています。」

 部活についても答えます。

「テニスは素人です。」
「ただ、休日を使って指導者研修に参加しています。」
「子どもたちが熱心なので、なんとかそれに応えてあげたくて。」
「子どもたちに、わかりやすく指導する大変さを感じているところです。」

5.より良い支援方法を知りたくないですか?

 教育長は私にこう言います。

「子どもたちが楽しく思えるように!」
「子どもたちにわかりやすく伝えるように!」
「とても素晴らしい事です!」

 私を褒めたあと、教育長は私にこう言いました。

「先生!」
「子どもたちが、もっと勉強を楽しくなる方法を知りたくないですか?」
「子どもたちに、もっと理解しやすく教える方法を知りたくないですか?」

 細かいことを考えていなかった私は二つ返事でこう答えます。

「知りたいです!」
「教えて下さい!」

 すると教育長はこう答えました。

「特別支援学校にいけば、全ての事を学べます!」

6.特別支援学校に行けば高度な支援方法を学べます!

 後で知ったことですが、教員の異動には交流というものがあります。

・小学校の先生が中学校へ、中学校の先生が小学校へ行く交流異動。
・中学校の先生が高校へ、高校の先生が中学校へ行く交流異動。
・別の地域の教育方針を学ぶために、他市へいく交流異動。
・小学校の先生や中学校の先生が、特別支援学校にいく交流異動。

 当時、私は特別支援教員の免許を持っていませんでした。そこで、そのことを教育長に伝えました。

「中学校と高校の教員免許しかもっていないので支援学校には行けません!」

 すると教育長は答えます。

「大丈夫です!」
「交流ですので、免許はいりません。」

7.学級運営を極めたいんです!

 このときの私は学級運営や部活指導に興味をもっていました。そのため、教育長に次のように伝えました。

「すみません。」
「今、私は学級運営に力を入れています。」
「去年、不登校だった子が私のクラスで学級復帰をしてくれました。」
「その子も含め、同じように困っている子の力になりたいと思っています。」
「その子たちに必要な支援を勉強したいんです。」

 すると教育長は次のように返してきます。

「特別支援学校の子には同じような体験をしてきた子がたくさんいます。」
「その子たちの支援をすれば、さらに困っている子の気持ちも理解できるようになりますよ!」

8.楽しくて分かりやすい授業を極めたい!

 私はこのように言ってみます。

「楽しい授業をしたくて、教員になりました。」
「まだまだ、私の授業は半人前です。」
「楽しくて、覚えやすくて、自然と知識になる授業の研究をこの学校でしたいです!」

 すると教育長は次のように返してきます。

「それは大丈夫です!」
「特別支援学校の子どもは、得意な教科もあれば苦手な教科もあります。」
「極端な子が多いのです。」
「そんな苦手を持っている子どもたちが、『楽しくてわかりやすい!』と思える授業ができれば、それは通常級の子どもたちの『楽しくてわかりやすい授業』になります!」
「ぜひ、特別支援学校で、『楽しくてわかりやすい授業』を極めて下さい。」

9.部活指導を極めたいんです!

 私は最後の切り札を出します。

「今、テニス部が強くなってきています。」
「子どもたちと一緒に、努力してきました。」
「あれだけ熱心な子どもたちを放ってはおけません。」
「このまま、この学校で働かせてもらいたいです。」

 すると教育長はまた切り返してきます。

「そんなに熱心な子どもたちなんですね!」
「とても素晴らしい指導です。」
「でも、そういう子たちなら、先生がより成長するために特別支援学校に行くことを認めてくれるでしょう!」
「さらには先生のために、もっとがんばるのではないでしょうか?」
「3月まで指導をしていただき、それ以降は生徒に任せても大丈夫でしょう!」

10.特別支援学校に行けば全てを極められます!

 さらには教育長は次のように言ってきました。

「特別支援学校の子どもたちは、体を動かすことが苦手な子もいます。」
「そんな子どもたちに、運動の素晴らしさを教えてあげて下さい。」
「先生なら、それができると思います。」
「また、特別支援学校から帰ってきたとき、それが部活の指導にも役立つはずです。」
「運動が苦手な子にも上手に指導できるようになっているでしょう!」

11.人事権は教育委員会にあることをお忘れなく!

 私は必死に教育長に反論(?)をしました。しかし、さすがは教育長です。私の反論(?)はことごとく打ちのめされたのです。

 2時間ほど反論(?)をした私に教育長は次のように言って学校を去ります。

「先生の気持ちはお聞きしました。」
「ただし、先生のご希望がかなわないことも十分あります。」
「そのときは、申し訳ありませんが指示に従っていただきます。」
「先生方の人事権は教育委員会にあることをお忘れ無く。」

12.前向きに特別支援学校について勉強!

 教育長の話から、私の異動は決定しているようです。異動が決定しているのを「行きたくない!行きたくない!」と言っていても意味がありません。

 私は教育長の言うように特別支援学校という場所で様々な支援を吸収してこようと考えを改めました。

 そこで、特別支援学校を経験したことがある先輩教諭に、特別支援学校の様子をいろいろと聞いたり、特別支援教員の免許について調べたりしました。

 当時は、特別支援教育についての知識がほとんど無かったため、本を買ってきて勉強をしたりもしました。

13.特別支援学校への異動が白紙に!その理由は?

 教育長と話をして2ヶ月が経ちました。

 私は特別支援が学校でガンバルという決意を持っています。

 そんな、2月の寒いある日。部活でグランドにいた私を呼び出す放送がかかります。

「西川先生!」
「至急、校長室においで下さい!」

 私が急いで校長室に行くと、校長先生が電話の受話器を渡します。電話の相手は教育長です。

 電話にでた私に教育長が次のように言いました。

「2ヶ月前は、お話を聞かせていただきありがとうございました。」
「担当の者と話をした結果、先生の熱心なクラスや部活への思いを尊重して、特別支援学校への異動は白紙に戻すこととしました。」
「これからも、A市の子どもたちのためにご尽力下さるようにお願いいたします。」

 あとで聞いた話では、私の前に異動依頼をした小学校の先生がいたそうです。その先生は、最初は異動を断ったそうなのですが、私への電話の数日前に教育委員会に異動希望を伝えました。

 その結果、「嫌がっている私」より「希望しているその先生」に交流異動をしてもらうことを教育委員会は決めたそうです。

 特別支援学校には行かなかった私ですが、この話がきっかけで特別支援教育に興味をもち、最終的には教員免許を取り、特別支援教育コーディネーターになったのでした。

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荒れた学校で多くの先生が異動希望を出したら?

1.異動希望を無視できない教育委員会は・・・

2.同じ市内にある2つの荒れた学校

 ある市内に2つの中学校がありました。東中と西中です。東中と西中は昔から落ち着きがなく「常に荒れている」と言われている学校です。

 そんな東中に私は生徒指導主事として赴任をしたのです。

 4月になり学校が始まりました。確かに「やんちゃな子」がたくさんいます。ただ、私はそれまでにも様々な学校で「やんちゃな子」の相手をしてきています。その経験から、私は東中の子どもたちに次のような印象を持ちました。

「やんちゃだけど、極悪ではないかな~。」
「悪いことをするけど、正しい対応や支援をすれば素直になるな~。」
「この学校が荒れているのは、教師の指導力不足によるものではないかな?」

3.生徒指導主事と1年担任として支援開始!

 私は生徒指導主事と1年生の担任となりました。そして、1年部の先生と一緒に子どもたちの支援を行います。

「落ち着いた学校にする。」
「自分で考え自分で行動できる生徒を育てる。」

 私たちはチームとして、この2つの目標を共有し様々な活動や支援を行いました。

 その効果はすぐに現れます。私が赴任した翌年には「問題行動」や「不登校」が劇的に減少します。さらには成績も上がっていきました。
 もちろん、子どもたちや保護者の笑顔も増えていったのです。

4.2年後、笑顔の絶えない楽しい学校に!

 私が赴任して2年後。私の学年が3年生になったとき、全ての学校活動が円滑に進むようになりました。

・授業でムダなおしゃべりをしたり、出歩いたりする子がいない。
・ふざけすぎたり、しゃべりすぎたりすると、仲間同士で注意をしあう。
・提出物や忘れ物がほとんどない。
・友達とのトラブルが少なく、トラブルとなった場合もすぐに解決する。
・部活に熱心に取り組む。
・生徒会活動が盛ん。
・地域の方に明るくあいさつができる。など

 東中に悪い印象を持っていた地域の方からも「お褒めの言葉」をいただくようになりました。

 3年前までは、地域からの電話と言えば「うちの犬をからかうな!」「ゴミを庭に投げてきた!」など苦情ばかりだったんです。

5.東中に残りたい気持ちはあれど・・・

 私は東中に赴任する前、前任校の教育委員会から次のように言われていました。

「B市の教育委員会から連絡がありました。」
「西川先生に東中で生徒指導主事をやってもらいたいとのことです。」
「東中に行ってもらえませんか?」
「その代わり3年後にはA市に戻れるようにします。」
「A市とB市の交流という形で書類を整えます。」

 東中は落ち着きました。それ以上に他の学校に負けないくらい良い学校になりました。子どもたちも、毎日、笑顔で学校を楽しんでいます。このまま、東中に居続けたい気持ちでいっぱいです。

 しかし、東中での仕事が終わったいま、A市とB市の交流という形で東中に来た私はA市に戻らなければなりません。交流期間の3年は今年で終わりです。東中に残りたい気持ちもありましたが私は覚悟を決めて異動希望を提出したのです。

6.異動希望を出していないのに異動?

 東中を転出する先生は合計で10人でした。私は同じ学年に勤務していた2人の先生に声をかけます。

「東中が落ち着いて良かったね!」
「この状態なら東中に残りたかったよね~。」
「僕は交流だからA市に戻るんだけど先生たちは?」
「なんで異動希望を出したの?」

すると先生達から思いがけない言葉が・・・。

「私は異動希望を出してないのに西中に行くんです。」
「僕もです!」
「突然、校長から異動を命じられました。」
「このまま東中にいたかったのに・・・。」
「西中は荒れているから行きたくないんですが・・・。」

 私は他の異動する先生たちに「異動理由」と「異動先」について聞いてみました。すると、私以外の全ての先生が「異動希望」を出していないことが分かったのです。

 私の異動先は希望通り「B市」の中学校です。しかし、残りの9人は全員が「西中」への異動です。

 そのとき異動をする10人の教員のうち、異動希望を出したのは1人(私)で、残りの9人は異動希望を出していませんでした。

 異動先も同様です。私の異動先は希望したB市の中学校です。しかし、残りの9人は希望していない「西中」に異動することになっていたのです。

7.荒れている西中の先生たちは異動したい!

 なぜ、そのような異動が起こったのでしょうか?

 後日、私は西中に勤務している知り合いの先生から話を聞くことができました。そこで、教えてもらった理由が下記のものです。

・西中の荒れは解消していない。
・問題行動や不登校が多く生徒も落ち着いていない。
・西中の先生の多くが異動希望を提出した。
・数が多いため、年功序列や西中での勤務年数によってで異動が決まった。
・毎年、半分に近い先生が異動する。

 これは東中とは逆の状態です。

・東中の荒れは解消した。
・問題行動や不登校はほとんどなく生徒も落ち着いている。
・東中の先生で異動希望を出したのは1人。

8.どうする教育委員会?

 先生たちの異動希望を無視することはできません。特に組合に入っている先生であればなおさらです。

 当然、教育委員会や校長は、先生たちの異動先を探します。しかし、人数が多いため全ての先生の異動願いを叶えることはできませんでした。

 さらに、西中と言えば「荒れた学校」の代名詞です。自分から「西中に行きたい!」と言う先生はいないのが現状です。

 それでも、異動希望を出している先生たちの希望を叶えないわけにはいきません。もちろん全員は無理としてもです。

 そこで、教育委員会と校長が考えた奥の手は「行政異動」です。

9.行政異動ってなに?

 私が「行政異動」という言葉を聞いたのはこのときが初めてです。それでは「行政異動」とはどのような異動なのでしょう?
 
 西中には異動希望を出している先生がたくさんいます。校長や教育委員会は、その希望を受け入れなければなりません。もちろん、全ての異動を受け入れるのは不可能です。

 出る先生がいれば、入る先生も必要です。しかし、西中に来たいと言ってくれる先生は市外にほとんどいません。

 教育委員会や校長は、まず、新規採用教員を積極的に受け入れます。なぜなら、新規採用教員には拒否権がないからです。

 次に行うのが「行政異動」です。

 西中からの異動を希望している先生は東中に異動してもらいます。それと同時に東中の先生を西中に異動させます。これが「行政異動」です。簡単に言うと、同じ市内や区内で先生を交換するというものです。

 本来は「養護教諭(保健の先生)」がやむを得ない理由で異動や退職をしたときに使われる異動です。

(養護教諭は専門職のため各学校への配置は1人が基本です。そのため、どこかの養護教諭の異動が決まると、自動的に他校の養護教諭も異動することになります。)

10.3年後、荒れた学校に逆戻り

 私が東中を異動してから3年後。再び東中が荒れ始めます。ただ、これは仕方のないことです。

 以前に書いたとおり、「学校の荒れ」や「学級崩壊」は教師の指導力に依存しています。同じ子どもたちでも指導力のある教師が担任をすれば学級は崩壊しません。同様に指導力のある校長がいれば「学校が荒れる」こともありません。

 東中と西中では行政異動が一般化しています。そのため、何人もの先生が「東中」と「西中」を行ったり来たりしているのです。

 当然、この先生たちは「荒れた学校」を立て直す方法を知りません。逆に「落ち着いた学校」を荒れさせる対応を無意識に行ってしまいます。

 なぜなら「荒れた学校」を「落ち着いた学校」にした経験が無いのですから。




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家族や親戚がいる学校には赴任できないんじゃ?

1.荒れている学校から生徒指導のご指名が来た

2.希望を出していないA市に異動が決まった?

 今から約10年前(執筆時2024年)の3月1日。

 当時、生徒指導主事をしていた私は校長室に呼ばれ次のように言われます。

「A市の学校に行ってもらうことになったから!」

 基本的な人事は3月の時点でほとんどが決まっています。しかし、急な変更で勤務校が変わることもあるため、この時点では配属される「市内だけ」が告知されます。

 ただ、おしゃべりな校長は、ついつい学校名を言ってしまうことも・・・・。

3.A市には荒れている北中がある!

 A市には北中と南中の2つしかありません。この時点で私が4月から勤務する学校は北中か南中に絞られます。

 しかし、私には心配事がありました。それは北中が「荒れた学校」であると言うことです。北中は近隣で「最も荒れている学校」と言われていました。校内での問題行動だけでなく、校外でも問題行動を起こしています。

 少し前に行われた、各学校の生徒指導主事が集まる研修でも、話題の中心は「北中」の問題行動です。

「いや~、本当にやばいよ!」
「常識が通じないんだよ!」
「あいつら、本当にやばいよ!」
「西川先生!」
「4月から北中に来てよ!」
「生徒指導主事を変わってよ!」

 私の先輩である北中の生徒指導主事の言葉です。

 とても力のある先生が弱音を吐いている姿を見たときは本当に驚きました。同時に北中がとても大変であることも実感したのです。

4.北中に行くことはない!なぜなら!

 反対に南中はとても落ち着いた学校です。学校の規模は変わらないのですが、同じ地域にあるとは思えないほど良い学校です。
 部活の練習試合で2つの学校を見比べると違いは一目同然です。南中の生徒が礼儀正しく爽やかであるのにたいし、北中の生徒は「ヤンキー」としかいいようのない態度です。

 私は「生徒指導困難校(荒れた学校)」で生徒指導主事を何度もしてきました。自分の希望ではなく校長や教育委員会のご指名で「荒れた学校」に異動したことが何度もあります。

「もしかしたら、西川先生の次の移動先は北中?」

 こう思って下さった方もいるのではないでしょうか?

 でも、大丈夫!安心して下さい!私は北中には行きません!なぜなら、北中の新3年生には甥っ子が!新1年生には姪っ子がいるからです。

 実は、校長から「A市に行ってもらう」と言われたとき、私は心の中でガッツポーズをしたのです。
 そうです!なぜなら、北中の新3年生には甥っ子が!新1年生には姪っ子がいるからです。

5.久しぶりの落ち着いた学校だ!やったー!

 初任者として勤務した学校が「荒れ」を立て直すプロ教師集団だったことが、私の教員人生を狂わせ(?)ました。学生時代の私は「子どもたちに勉強の楽しさを教える」ことを夢見て教師に憧れたのですが・・・。

 何も分からない初任者時代に、プロ教師たちの対応を見て、一緒に行動をしてしまった私の体には「荒れ」を立て直す遺伝子が組み込まれてしまっています。
 そのせいで、その後の教員人生で勤めた学校の全てが「荒れている学校」「学級崩壊学年」「内弁慶不良学校」などだったのです。

 もちろん「荒れている学校」にいる子ども(いた子ども)たちが嫌いなわけではありません。全ての子どもは良いところをたくさん持っているからです。
 今でも連絡をくれる子もいますし、年に数回ですが一緒に飲みに行く子もいます。

 しかし、元来、怠け者の私はこう思ってしまいました。

「やった!」
「落ち着いている南中だ!」
「荒れていないっていいよね~!」
「楽しみだな~。」

 私は「マイナススタート」ではない南中で「どのような支援をしよう?」「どのように成長をしてくれるのかな?」と妄想して楽しんでいたのです。

6.えっ?あの~甥っ子と姪っ子がいるんですが・・・

 3月の中旬。

 私は校長室に呼ばれます。ついに「南中」への異動命令をいただく日が来たのです。私はドアをノックして校長室に入りました。

 そこで・・・・。

「西川先生には4月から北中に行ってもらうことになりました。」
「北中の校長や教育委員会が生徒指導主事をしてほしいと言っています!」
「望まれていく異動です!」
「期待に応えられるようにがんばってください!」

 私は学校名を聞き間違えたのでしょうか?校長の口から「北中」と言う言葉がでてきたような・・・・?

 思考が停止してしまった私の頭が大事なことを思い出してくれました。そうです!私には甥っ子と姪っ子がいるのです!北中に「近い親戚」が2人もいるのです。

「あの~、すみません!」
「北中には甥っ子と姪っ子がいるのですが・・・。」
「南中の間違いではないですか?」

7.そんなことは気にしないで大丈夫!

 私の質問に対して校長が笑顔で答えます。

「大丈夫、大丈夫!」
「それは教育委員会もわかっているから!」
「そんなことは気にしないで大丈夫!」
「思う存分、力を発揮して下さい!」

 一般的に自分の子どもや親戚がいる学校に勤務することはありません。それによって、保護者から余計な疑いを持たれる恐れがあるからです。

 ただ、これはあくまでも慣例であり、自分の子どもや親戚が「同じ学校にいてはいけない」という決まりはありません。不必要な誤解を招かないように、慣例として「親戚」や「子ども」のいる学校に勤務させないようにしているだけだなのです。

8.俺なんか2人の娘と同じ学校に勤務したことがあるよ!

 ショックを受けた私がとぼとぼと職員室に戻ると、尊敬する先輩が声をかけてくれました。私は校長室での異動のいきさつを先輩に話します。
 すると、私の話を聞き終わった先輩は笑いながら自分の経験を話してくれました。

「俺なんか2人の娘と同じ学校に勤務したことあるよ!」
「あのときは、本当にやりにくかったよ!」
「生徒指導だから悪い子を怒らないとダメだろ!」
「でも、大きな声で怒ったり、悪い言葉を使うと、家で娘に注意されるんだよ!」

『パパ!恥ずかしいから大声を出さないで!』
『悪い言葉を使わないでよ!』
『私たちの事を考えてよね!』

「あれは、本当にやりにくかったよ!(笑)」

 私はお子さんと一緒の学校への勤務を引き受けた理由を聞きました。

「だってさ、子どものいる学校は良くしたいでしょ!」
「落ち着いた状態で勉強や部活をしてほしいでしょ!」
「楽しい学校生活を送ってもらいたいじゃん!」

 最後にこのように言われました。

「親戚くらい何てことないよ!」

 おっしゃるとおりです。自分の子どもと同じ学校に勤務するよりは良いのですが・・・。でも、やっぱり南中が良かったな・・・・。

※ 北中でも楽しく生活することができました。ただ、最初の1年は問題行動の対応で多忙を極めましたが・・・。(笑)


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雪の降る地域へ異動?諦めるしかないの?

1.権力をもった校長先生ありがとう!

2.異動先は雪が降る所?

 ある学校に赴任した私は中学1年生の担任となりました。そして、翌年は中学2年生、さらに翌年は中学3年生の担任となります。最初に担任をした子どもたちと一緒に学年が上がっていったのです。

 3年目。私は他の学校に異動することになっていました。当時20代後半だった私の異動先が決まるのは最後の最後です。

 その年の3月中頃。私は校長室に呼ばれます。そこで、初めて次に異動する学校のヒントをもらうことができたのです。

「異動先はまだ言えないけど寒い所だよ!」
「その学校の校長と教頭は西川先生と同じ教科だよ!」
「とても勉強になると思うからガンバってね!」
「明日にでも異動調査表を書き直してもらうからヨロシクね!」

 私の住んでいる所から車で1時間ほど移動すると雪が降る町があります。校長先生の言葉から私の異動先は100%、その町の学校のようです。

 職員室に戻った私に隣の席の先生が話しかけてきます。

「どうだった?」
「どこに行けって?」

 私は「寒い場所」「校長、教頭がともに同じ教科」と伝えます。

「A市のB中だよ!」
「あそこの校長と教頭は先生と同じ教科だよ!」
「絶対に決定だよ!」
「あそこは評判が悪いからね~!気をつけてね!」

3.雪が降る学校は大変!

 早速、雪が降る学校に勤務している知り合いに連絡をします。

「冬は雪かきをやるから大変だよ!」
「生徒が登校する前に、道路と玄関前の雪かきをするんだよ!」
「部活をやるときも雪かきしなきゃいけないし。」
「そうそう、車のスタッドレスタイヤも買わないとダメだよ!」

 私の住んでいる所は数年に1度しか雪が降りません。そのため雪がとても苦手です。もちろん、雪かきをしたこともありません。

 スタッドレスタイヤと言う言葉もこのとき初めて知りました。冬用のタイヤなんですね。私はすぐにスタッドレスタイヤの値段を調べます。するとそこには6~8万円という数字が・・・・。

 事務室で「A市に勤務した際のスタッドレスタイヤ購入費」について聞いてみます。当然ですが事務室からは「自腹です」と言う返事が戻ってきました。

「寒いところに行きたくないよ~。」
「スタッドレスを買いたくないよ~。」
「雪かきなんてしたくな~い!」

4.ため息をついている私に神の手が!

 私の心の叫びが神に届いたのか?ある先生が私に声をかけてきました。

「先生、ため息ばかりついてどうしたんですか?」

 今年度の4月に新規採用教員として私のクラスの副担任に配属された牧田先生です。

「今年は異動するって話をしたよね!」
「どうやら異動先がA市のB中らしいんだよ!」
「雪は降るし、車の運転は怖いし、遠いし・・・」

 すると、牧田先生から神の言葉が発せられます。

「父が生徒指導のできる先生が欲しいって言ってましたよ!」

 実は牧田先生のお父さんはC市D中学校の校長なのです。

3.神の言葉「父に頼んでみましょうか?」

「先日、父に西川先生の話をしたんです。」
「そうしたら『そういう教師が欲しい』って言ってましたよ!」

 どうやら牧田先生は私の良いところを、お父様に話してくれたようです。

「父に頼んでみましょうか?」
「家に帰ったら相談してみます!」
「でも、先生はC市でも大丈夫なんですか?」

 何もしなければ「寒い」「雪かき」「スタッドレス」は決定です。私はダメ元で牧田先生のお父様にお願いすることにしました。

4.神の言葉「荒れてるけど大丈夫?」

 翌朝。牧田先生が笑顔で私の所にきます。

「おはようございます!」
「父に聞いてみましたよ!」
「そして、父からの伝言を預かってきました!」

『うちの学校は荒れてるけど大丈夫?』

 私はすぐに牧田先生に返事をしました。

「荒れていても大丈夫と伝えて下さい!」
「学校を良くするためにがんばります!」
「よろしくお願いいたします!」

5.寒い学校への異動調査表の書き換え命令が下される!

 翌日。私は校長室に呼ばれます。

「もしかしたら、雪スタッドレスではなくD中に変更か?」

 しかし、校長が私を呼んだ理由は、私の希望を打ち砕くものでした。

「異動調査表の最後の欄にA市B中って書いて。」

 どうやら、完全に「雪スタッドレス」への異動が決まったようです。残念ですがスタッドレスを買わなければなりません。

 また、校長が異動調査表の下の欄に「A市B中」と書くように要求したのは、その後のトラブルを回避するためのようです。

 当時の私は何も考えず、指示されるままに異動調査表に「A市B中」と記入しました。どうやらコレは組合に加入していた私への対策ということです。

「私は異動希望に書いていない学校にムリヤリ転勤させられた!」

 私がこのように言って組合に訴えたとき、「A市B中」と記入された書類があれば、どのようにも戦えます。

「西川先生が自分で書いている書類があるんですよ。」
「本当に行きたくなければ記入はしませんよね。」
「脅した?そんなことはしませんよ。」など

 もちろん、私は組合に訴えませんでしたが、訴えたところで理由が「雪かき」「寒い」「スタッドレス」では、到底、勝つことは出来なかったでしょう。

6.校長会会長の「鶴の一声」で異動先変更!

 翌日。

 私は再び校長室に呼ばれます。校長室では校長が異動調査表を出していました。

「A市B中の所に訂正印を押してくれる。」
「そして、その横にC市D中って書いて!」

 どうやら、私の異動について教育委員会から校長に連絡があったようです。それにより私の異動先がC市のD中に決まりました。

 元々、希望をしていなかった行政異動でもあり、さらには、それほど重要ではない教員の異動です。牧田先生のお父様が、鶴の一声を下さったことで、私の異動先は「寒い」「雪かき」「スタッドレス」から変更になったのです。

「寒い所と言ったのは間違いだったよ!」
「少し荒れが強い学校になるようだ!」
「大変だと思うけど、がんばって下さい!」

 どちらも同じように「荒れている」と評判の学校でした。どうせ荒れている学校に行くのであれば「寒い」「雪かき」「スタッドレス」よりは、「温暖」な地域の学校に行きたいと思いませんか?

 後から聞いた話では牧田先生のお父様は、校長会の会長をしている超大物校長だったそうです。

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