教育委員会の指名で「荒れている学校」の生徒指導主事に①

4月に正しい支援を行うことで問題行動0(ゼロ)!

1.行政異動で荒れている学校の生徒指導主事に!

ある年の4月。

私は荒れているA中学校に生徒指導主事として赴任しました。

『3年に甥っ子、1年に姪っ子がいるのに・・・。』
『近い親戚がいるんだから、別の学校にしてくれればいいのに・・・。』
『甥っ子も姪っ子も親戚のおじさんが生徒指導主事ってやりにくいでしょ!』
『このことは、校長と教頭しか知らない事実だけどね!』

私は生徒指導主事とともに1年生の副主任と担任も命じられました。

『姪っ子は自分のクラスじゃなくて良かった~。(当然ですが)』
『授業も姪っ子のクラスはやらなくて良いんだ~。(1学年6クラスの学校です)』
『それでも、やりにくい事に変わりは無いけどな~。』

希望していないのに、行政異動(教育委員会からのご指名)で生徒指導困難校(荒れた学校)の生徒指導主事を拝命しました。

さらには、3年には甥っ子、1年には姪っ子がいます。

この状況では、文句が出ないわけはありません。

しかし、私はそれらを理由に生徒指導をおろそかにしない事も決めていました。

2.荒れている学校でも1年生は純粋!

荒れた学校とは言っても、新1年生は「純粋」で「無垢」な状態です。

「この子たちが3年になるときは、A中学校を良い評判でいっぱいにしよう!」
「正しい支援や指導をして、子供たちの良い部分を伸ばそう!」
「副主任として学年の先生に支援方法を伝えよう!」
「生徒指導主事として学校全体で指導方法を統一しよう!」

1年生の対応はどこの学校に行っても同じです。

4月は全ての子供たちが「心機一転、ガンバろう!」と思っている季節です。

特に、小学校を卒業し中学校という新天地に来ている新1年生の「ガンバろう!」という気持ちはとても強いものです。

私はその「ガンバリの気持ち」を素早く見つけ、その場で褒めたり、帰りの会で褒めたり、学級通信で褒めたりしていきます。

また、子供と一緒に過ごす時間が長ければ長い方が、「ガンバリの気持ち」を見つけやすくなるのは言うまでもありません。

そのため、私は春休み中に授業の準備を全て終え、子供たちが学校にいる時間のほとんどを「教室で一緒に過ごせる」ようにしていました。

3.10分前に着席して待つ新1年生!

入学式翌日。

A中学校には「8時に出席確認する」というルールがあります。

そのため、子供たちは8時には席に着き、担任はチャイムと同時に出席をとります。

その後、10分の朝読書や朝学習があり、8時15分から朝の会、8時30分から1時間目が始まります。

私は7時50分に教室に行きました。

すると、ほとんどの子が席に着いています。

A中学校は3つの小学校から子供がくるため、まだ、話す友だちがいない子もいます。

また、初めての中学校ということで緊張もあるのでしょう。

子供たちは、出席確認10分前にも関わらず、静かに座って授業の準備や読書をしていたのです。

4.ルールは「8時」のチャイム着席だからね

私は8時のチャイムと同時に子供たちが「10分前チャイム着席」を自分たちで考え実行していたことを褒めます。

「みんな、学校のルールを守ってエラすぎる!」
「このクラスはきっと良いクラスになる!」
「いや、先生が何もしていないのに良いクラスになってる!」
「スゴすぎるよ~。」
「このことは学級通信にのせてお母さんたちにも報告しなきゃ!」
「もしかしたら、お小遣いがアップするかもよ!笑」

ただ、ルールを守る上での注意点(?)も付け加えます。

「でも、10分前にチャイム着席しなくてもいいからね!」
「ルールは『8時にチャイム着席をしている』だから、2~3分前には座っていれば100点だよ!」
「もちろん、今日も100点!」
「この後の学級活動で友だちと仲良くなるための授業をやるから、新しい友だちも出来ると思うよ!」
「そうしたら、2~3分前までは友だちと楽しくおしゃべりをしてね!」

5.出歩いてしゃべるように声をかける!

私は翌日の朝も7時50分に教室にいきます。

しかし、まだまだ、緊張している子供たちのほとんどが席に着いています。

「みんな、エラいね~。」
「でも、昨日も言った通り、2~3分前に座ればいいよ!」
「10分前から黙って座っているのも怖いよ!笑」
「ハイっ!」
「出歩いて、おしゃべり、おしゃべり!」

すると、ノリの良い子が席を立ち友だちの所に行きます。

「おっ!」
「AくんとBくんは仲が良いんだね~!」
「ギリギリまでしゃべって良いからね~!」

私の声かけを聞いた他の子たちも出歩き始めます。

「みんな、仲良くしゃべっていて良いクラスだね~!」
「でも、時計は意識してね~!」
「2~3分前には座ってね~!」

6.2回の支援で「1年間チャイム着席」の注意なし!

まだまだ、入学3日目です。

子供たちは緊張感を持っています。

そのため、私が声をかけなくても時計を意識し3分前には席に着き始めます。

周りの子が席に着き始めると、おしゃべりに夢中になっていた子も周りに会わせて席に着きます。

当然ですが、8時のチャイムが鳴ったときには、全員が席に着いている状態となりました。

「完璧!」
「本当に素晴らしい!」
「2分前には全員が席に着いてる!」
「早すぎず、遅すぎず、ちょうどいい!」
「これからも、2分前着席を意識してね!」

当然、翌日も子供たちは7時57分までは、準備をしたり、おしゃべりをしたりしてノンビリ過ごし、2分前には席に着くことができていました。

この支援により、残りの1年間、私がこのクラスでチャイム着席を注意することは、ほとんど無くなったのです。

7.教室は音楽室などが最も遠い新校舎の端

新1年生が入学してから1週間が経ちました。

今日から、本格的に各教科の授業が始まります。

「今までどおり各教科の授業も2分前には準備と着席をしているんだよ!」
「先週もちゃんと出来ていたから大丈夫だと思ってるけどね!」
「あっ、そうだ!」
「理科室や音楽室、技術室などは遠いから早めに教室を出るんだよ!」
「遠いからって授業に遅れていいわけじゃないからね!」

私が担任をした1年A組は、理科室や音楽室などの特別教室がない新校舎にあります。

さらには、新校舎の4階で階段から最も遠い奥にあるのです。

そこから、最も遠い音楽室に行く場合は、階段で2階まで降り渡り廊下で旧校舎へ!

そして、旧校舎の4階にある音楽室まで階段を3つ登らなければなりません。

(音楽室は階段から最も遠い奥にあるのです。)

8.遠いからと言って遅れるのはダメ!

音楽室や理科室、技術室や家庭科室などの特別教室には、最低でも歩いて5分がかります。

そのため、授業開始の2分前に到着するには、前の授業が終わった後、スグに音楽や理科の準備をして自分たちの教室を出発しなければなりません。

それでも私は子供たちに伝えます。

「遠いけど、授業に間に合うように行くんだよ!」
「もし、前の授業が延びたりしたときも急いで行くんだよ!」
「でも、走ってケガをしたりはしないようにね!」
「もちろん、授業が延びたことは教科の先生に言うんだよ!」
「先生からも、音楽の先生や理科の先生に伝えておくからね!」

また、次のような事も伝えました

「もし、前の授業が延びて移動の途中でチャイムがなったら・・・。」
「先輩たちは授業中になるから、しゃべらないで行くんだよ!」
「もちろん、休み時間に異動しているときは、楽しくおしゃべりしながら行っていいよ!」

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時間を守らない教師と生徒!「荒れている学校」の生徒指導主事に②

荒れている学校の「教師」は時間にルーズ

1.教科担任には事前に声かけの具体例を!

私は各教科の先生たちに、事前に声のかけ方のお願いをしておきました。

「子供たちには2分前着席を伝えています。」
「入学したての子供たちは、2分前着席を守ろうとガンバっています。」
「子供たちが授業開始のチャイムのときに座っていたら、褒める声かけをお願いします。」
「この時期にガンバリを褒め、認めることで、子供たちの中で2分前着席が普通になります。」
「申し訳ありませんが、子供たちのガンバリを褒めてください!」

また、授業の終了時間について、国語、数学、社会、英語の先生にお願いをしました。

「授業は終了のチャイムと同時に終わりにして下さい。」
「次の授業が音楽や家庭科、技術、理科など特別教室の授業のときは注意して下さい。」
「1年A組は特別教室から最も遠い教室になります。」
「そのため、少しでも授業が延長すると、次の授業に間に合わなくなってしまうんです。」

逆に音楽や技術、家庭科、理科、体育、美術の先生には、遅刻のときの指導についてお伝えさせていただきました。

「遅刻をしたときは指導をして下さい。」
「先生方の考えに合わせて注意をお願いします。」
「ただ、次のような声かけだけは止めて下さい。」

『教室が遠いから、遅刻しても仕方ないよ!』
『別に授業に遅れても良いからね~。』

2.「遠いから仕方無い」はNGワード!

1年A組は様々な場所から、最も遠く離れています。

下駄箱からも最も遠く、職員室からも最も遠く、グランドや体育館にも最も遠く、音楽室や理科室にも最も遠い場所です。

しかし、私は子供たちに授業開始時間には着席しているように言います。

私の「開始時間」の考えについて、次のように思う方は少なくありません。

「遠いんだから間に合わなくても仕方ない!」
「子供たちがかわいそう!」

事前に「指導」をお願いした先生の中にも、同じように仰る先生もいました。

※ 荒れているA中に何年もいる先生たちは「遅刻は仕方ない」と言っていました。

それでも、私は音楽や美術、理科、体育、家庭科、技術の先生に「指導」をお願いしたのです。

3.授業開始時間にこだわる2つの理由

私が「授業開始」時間にこだわる理由は2つです。

1つ目は、「学級崩壊」クラスは「授業の開始時間を守れない」ということを知っているからです。

逆説的になりますが、「授業の開始時間を守るクラス」で「学級崩壊」しているクラスは見たことがありません。

2つ目は、学校のルールを「個々の教師の判断」で変えてしまうと、学校が「荒れる」と分かっているからです。

例えば、校則で「くるぶしソックス」禁止という項目があったとします。

『靴下なんて何だって良いじゃん!』
『何でくるぶしソックスっがダメなの?』

このように考える先生も少なくないでしょう。

(実際、私も同じように思っています。)

しかし、自分の判断で「ルールを破っている子供」を見て見ぬ振りをしてしまうと・・・。

子供たちは学校のルールを軽視するようになります。

→小学校の先生が中学校を荒れさせた

もし、そのルールが間違っていると思うのであれば、職員会議で戦えばいいのです。

実際、私は「くるぶしソックス」の校則廃止を職員会議で訴え続けました。

その結果、2年ほどかかりましたが、校則を変えることができたのです。

4.時間のルーズさを指摘!改善案を!

5月の職員会議。

私は生徒指導主事として、A中の1ヶ月間を見た感想を伝えます。

※ 本当はダメな所だらけなのですが、ダメ出しばかりでは「勤務の長い先生方」の反感を買うので、ポイントを1つに絞りました。

「4月から生徒たちを見てきて気になるポイントがあります。」
「それは、時間に対するルーズさです。」
「落ち着かない学年の子供たちのほとんどが時間を守る意識が希薄になります。」
「逆に考えると、時間を守る意識ができれば、学級や学年は落ち着いてきます。」
「注意したり、怒ったりしろとは言いません。」
「ただ、子供たちが時間に遅れたときは、声をかけて下さい。」
「声をかけたからと言ってスグに時間を守れるわけではありません。」
「しかし、声をかけなければ、悪くなる一方です。」

新しく赴任してきた校長が、私の発言に賛同してくれました。

「西川先生の仰る通りだと思います。」
「時間を守る意識が身につくように、声をかけていきましょう。」

5.教室が遠いから授業に遅刻しても仕方ない?

私の次は「学習指導部長」の矢野先生が提案をする番です。

矢野先生も4月からA中学校に赴任している先生です。

「偶然ですが学習指導部の提案は生徒指導部と同じです。」
「生徒たちに、授業開始時間を守らせたいと思います。」
「その為には、先生方も授業開始時間には教室(特別教室)にいるようにして下さい。」
「また、生徒たちが遅れてきた場合は声をかけて下さい。」

この提案に対して、3年部の主任である渡壁主任が意見をします。

「前の授業が伸びてしまったりした場合、授業に遅れるのは仕方ないと思いますよ!」
「また、教室と違って特別教室や体育館に行くには時間がかかります。」
「開始時間を守らせるのは大切ですが、ムリなことを強要するのはかわいそうですよ!」

渡壁主任の発言は「子供たち」のことを考えての発言なのでしょうか?

それとも、3年生が授業開始時間を守れないことの「保険」なのでしょうか?

※ 3年生の教室は全て旧校舎にあり、体育館や特別教室に最も近いのですが・・・。

6.「休み時間を5分延長して!」は却下された

私も子供たちに「ムリ」を強要するのは好きではありません。

そこで、この学校で最も体育館や特別教室に遠いクラスの担任である私は、次のような提案をします。

「ムリを強要するのは良くないというのに賛成です!」
「しかし、授業開始時間を守るのは大切だと思います。」
「私の1年A組は新校舎4階の最も奥にあります。」
「そのため、子供たちは移動教室に間に合うように常に時間を意識しています!」
「そこで、ムリを強要せず、開始時間を守れるようにする提案をさせて下さい!」

『全ての休み時間を5分延長して15分とする!』

もちろん、私の提案は却下されました。

「休み時間を延長すると混乱が生じる。」
「友だち同士のケンカやトラブルが増える。」
「他の学校の休み時間は10分だからA中だけ変えるのは・・・。」など

教頭や主幹教諭、学年主任たちの反対意見は、どれも非論理的なものでした・・・。

最終的には次のような決着となりました。

「休み時間は10分のママとする。」
「なるべく授業開始時間を守るように声をかける。」

7.教師個人の判断で「遅れて良い」は×

入学してから1ヶ月半の間、時間を意識して生活をしてきた1年A組の子供たちは、その後も時間を守り続けます。

もちろん、前の授業が延びて「授業に遅れる」場合も一言「すみません」と言えば教師側か怒ることはしません。

理由はどうあれ「遅れてすみません」の一言が生徒指導では大切になります。

ここで、自分の「優しさ」をアピールしたい教員は次のように言ったりします。

「ムリしなくて良いからね~。」
「遅れても仕方ないよね~。」
「授業の開始に間に合わなくて良いんだよ~。」

この言葉を聞いた生徒たちが、「感謝」の気持ちを持って、次からも時間を意識してくれれば良いのですが・・・。

このような声かけにより、学級や学年が崩壊していく事は珍しくないのが現実なのです。

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問題行動を注意したら主任に怒られた!「荒れている学校」の生徒指導主事に③

信頼関係が無くても怒った事には訳がある!

1.その場で褒めたり、学級通信で褒めたり

もちろん私は常に子供たちのガンバリを認め、称える声かけを続けていました。

「遠い音楽室にも間に合ってるんだって!」
「休み時間が慌ただしくなっちゃうね!」
「それでも、みんな時間を意識して守っているんだね!」
「体育の先生や音楽の先生から、褒め言葉をもらったよ!」

『学校の中で1番、時間を守ることが出来ているクラス!』
『1番、遠くに教室があるのに、いつも時間を守れている!』
『2年生や3年生の見本になってる!』
『遅れてくるときも急いで来てくれる!』
『必ず「遅れてすみません」と言ってくれるから許しちゃう!』
『遅れ理由は前の授業が長引いたしか聞いたことがない!』など

さらに私は先生方からいただいた「嬉しい言葉」を、学級通信で保護者の方にも伝えていました。

授業参観でも「クラスの自慢」として親御さんに伝え、家でも褒めていただいたのです。

2.授業中にしゃべりながら移動する3年生

5月の終わり頃。

私と1年A組の子供たちは「総合」の授業を技術室で行っていました。

授業が始まって5分ほどが経ったころ。

3年A組の子供たちが技術室の前の廊下を通っていきます。

学級委員を先頭に体育館に向かっているようです。

(最初は気づかなかったのですが、後方に渡壁先生がいました。)

3年A組の子供たちは各教室が授業中にも関わらず、まるで休み時間のように大きな声でおしゃべりをしながら歩いています。

その声の大きさに、私も1年A組の子供たちも驚いていました。

3.うるさい3年生を注意した!

百歩譲って、授業中に体育館に移動することは許すとします。

もしかしたら、何か事情がある可能性も捨てきれないからです。

※ 授業中に体育館に移動した理由は係の子が「御用聞き」をサボったからだそうです。

もし、事情があるのであれば、他のクラスの「授業の邪魔」にならないよう、「静か」に、そして、「急いで」体育館に向かえばよいのではないでしょうか?

しかし、3年A組の生徒は「急ぎ」もせず、さらには休み時間のように大きな声でしゃべりながら廊下を歩いています。

私は技術室のドアを開け、大きな声で注意をします。

「こらっ!」
「授業中だぞ!」
「静かにしろ!」
「移動するなら黙って、急いで行け!」
「他のクラスに迷惑をかけるな!」
「3年だろ!」
「他の学年の見本になるように行動しろ!」

4.小声で文句を言ったり、睨んだりする○○

私を睨む子供もいれば、小声で文句を言っている(ように見える)子供もいます。

ただ、子供たちはそれ以上の反抗を見せませんでした。

私が赴任してきたばかりの生徒指導主事で、どのような教師か分からなかったからでしょう。

下手に反抗して目を付けられたり、ボコボコにされるのを恐れたのでしょう。

(もちろん、体罰をする気はありません。笑)

私の強い指導により、3年A組の子供たちは静かになり足早に体育館に向かいました。

しかし、子供たちの後方にいた1人が私を睨んでいます。

そうです、渡壁先生が私を睨んでいたのです。

5.職員室に戻ると3年主任から・・・

総合の授業が終わって職員室に戻ると、渡壁先生が私の所にやってきます。

「先生は生徒指導主事とはいえ来たばっかりでしょ!」
「さらに3年生の授業をしてないよね!」
「当然、3年生との信頼関係は0(ゼロ)に近いでしょ!」
「部活の子くらいしか知らないよね!」

どうやら、先輩教員として(?)、3年学年主任として(?)、私にダメ出しをしにきたようです。

「信頼関係がないのに大きな声で怒鳴ったら逆効果だよ!」
「次から西川先生の言うことを聞かなくなるよ!」
「西川先生が怖いから指示を聞く子はいるかもしれないけど。」
「生徒指導主事として問題行動を起こした子の指導をするでしょ!?」
「でも、あんな怒り方をしたら、3年生は言うことを聞かないよ!」
「もうちょっと、怒り方や信頼関係の作り方を考えた方がいいよ!」
「子供心理学を学んだ方がいいんじゃない?」

6.何で注意をしないの?信頼関係があるの?

当時から「学校心理士」や「ガイダンスカウンセラー」の資格を持っていた私に対して、よく「心理学」の話ができたものです。

渡壁先生のダメ出しにはツッコミどころが満載でした。

『そもそも、授業中に廊下を歩いているのはおかしいでしょ!』
『さらに、大声でおしゃべりしているのもダメでしょ!』
『っていうか、後にいたなら注意をしろよ!』
『学年主任3年目なんだから、信頼関係が出来ているはずでしょ!』
『信頼関係が出来ているアンタが注意をすれば静かになったんじゃないの?』
『ん?』
『もしかして、信頼関係が出来ていないから注意をしなかったの?』
『信頼関係作るのに何年かかかるの?』
『2年じゃ足りないってこと?』
『アンタこそ青年心理学や児童心理学、発達心理学を学んだらどうですか?』

もちろん、私は大人ですので先輩である渡壁先生のアドバイスを静かに聞き流しました。

7.なぜ、3年生を怒ったと思いますか?

皆さんは私が3年生の子供たちを怒った理由がわかりますか?

私は自分が怒ったことで「3年生の行動」が変わると思っていません。

さらに言うと、「3年生」のために怒った訳ではありません。

もちろん、私の強い指導をキッカケに「自分自身を振り返る3年生」が1人でもいてくれたのであれば、それは嬉しい事です。

しかし、生徒指導はそんなに単純なものではありません。

・子供たちが悪いことをした!
→教師が強い指導をした。
→子供たちが自分の行動を反省した。
→2度と同じ過ちを繰り返さなくなった。

このようなことが現実に起こるのでしょうか?

もちろん、そんなことはありません。

8.悪い事をしている子を怒らなかったら・・

私が3年生を怒った理由は「自分」の為と言えるでしょう。

もし、あそこで「生徒指導主事」の私が3年生のおしゃべりを注意しなかったら。

もし、「1年A組の担任」である私が3年生のおしゃべりを注意しなかったら。

私のクラスの子供たちはどのように思うでしょう?

「先生は常に時間を守れって言ってる!」
「遅れるときは他のクラスに迷惑がかからないように静かにと言ってる!」
「3年生は時間を守らず、さらに大きな声でしゃべってる!」

子供たちが3年生の行為を迷惑に思っている時に、私が3年生を注意しなかったら・・・。

「えっ!?」
「何で先生は怒らないの?」
「いつも、あんなにダメって言ってるのに?」
「1年生は怒るけど、3年生は怒らないの?」
「もしかして、3年生が怖いの?」
「結局、先生は弱い物しか注意しないんだ~。」
「最低~。」

9.子供も教師もルールを守らなきゃダメ!

私は3年生を怒ったあと、クラスの子供たちに言いました。

「周りに迷惑をかけるのはダメだよ!」
「それは、1年でも、2年でも、3年でも一緒!」
「ダメなものはダメだからね!」
「だから、先生もちゃんと時間を守るよ!」
「もし、遅れてきてもエラそうにしてたら、みんなが怒ってね!」
「でも、謝ったときは許してね!笑」

この子たちが3年生になったとき、A中学校は保護者や地域、他校から「お褒めの言葉をたくさんいただく学校」となります。

さらには、部活の大会でほとんどの部活が優勝や準優勝、3位以内にはいり、成績も地域で一番の学校となります。

このように、A中学校の「荒れ」が改善した1つ目のポイントが「この指導」だったと私は感じています。

なぜなら、この子たちが卒業して5年後の成人式で、次のような言葉を言われたからです。

「あの時、先生が3年生を怒ってビックリしたよ!」
「岩泉先生や沢登先生は3年生がうるさくても注意してなかったよ!」
「西川先生は良くも悪くも差別(区別)しないんだって思ったよ!」

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学級崩壊の授業を見てきた①不登校になった理由は学級崩壊

一部の子供たちの言いなりになる担任

1.新クラスで「登校をしぶった」理由は?

 先日、知り合いのお母さんから、娘さんの「登校しぶり(不登校)」についての相談を頂きました。小学校6年生の娘さんの相談です。

「(5年生の)春休み、娘はクラス替えを楽しみにしていました。」

『Aちゃんと同じクラスになれるといいな~。』
『BちゃんとCちゃんでもいいかな~。』
『Zくんは良いけどYくんは苦手なんだよな~。』
『Xくんと一緒だったら最高だな~。』など

「同時に新しい担任が誰なのかも楽しみにしていました。」

『今年も○○先生だといいな~。』
『□□先生は優しいけど怒らないからな~。』
『△△先生みたいなシッカリしている先生だったらいいな~。』など

 登校しぶりの原因はクラス替えによって仲の良いメンバーと別のクラスになったことでしょうか?

「仲の良い友だちや塾の友だちと同じクラスになれました。」
「そのことを娘はとても喜んでいました。」
「担任は、いつも笑顔で優しい先生です。」
「ただ、今にして思うと『優しい』が・・・・・。」

 どうやら、「登校しぶり(不登校)」の原因はクラスの友達関係ではないようです。

2.登校しぶり(不登校)の理由は友人関係ではなく・・・

 それでは、娘さんの「登校しぶり(不登校)」の理由は何なのでしょう?

「最初は、毎日、笑顔で登校していました。」
「しかし、ゴールデンウィークが終わってから・・・・。」
「娘は『登校をしぶる』ようになりました。」
「最近(7月)は学校を休むことが増えて・・・。」

 私は娘さんの「登校しぶり(不登校)」の理由をお母さんに聞きました。

「娘に『登校しぶり(不登校)』の理由を聞くと素直に話してくれました。」

『授業中に出歩く子がいる。』
『おしゃべりする子も増えてきた。』
『こっそりタブレットで動画を見ている子もいて・・・。』
『勝手に(学習)ゲームをやっている子もいて・・・。』
『落ち着いて授業を受けることが出来なくなっている!』

 娘さんが言っている「クラスの状態」が本当であれば・・・・。娘さんの「登校しぶり(不登校)」は「学級崩壊」の前兆を無意識に感じ取っていたことが原因となるでしょう。

3.不登校の原因はHSC?

 お母さんは、娘さんの「登校しぶり」について、担任に相談をしていました。そのとき、担任からスクールカウンセラーとの面談を勧められたそうです。

「お子さんはHSCだと思われます。」
「そのため、他の子の言動が気になってしまうんです。」
「それによって神経が疲れてしまい、登校できないのでしょう。」
「ムリに登校させず、ツラいときは休ませてあげましょう。」

※ HSC(ハイリー・センシティブ・チャイルド):とても敏感な子

 たしかに、この娘さんがHSCの可能性はあるでしょう。

 しかし、「不登校」や「登校しぶり」の原因は「授業中のおしゃべり」や「出歩き」「一部の子どもの『わがまま』な態度」です。それらの改善を担任に要望するのではなく、相談にきた子供を病気あつかいしてよいのでしょうか?

※ HSCは正式な病名ではありません。

4.授業や休み時間の様子は?

 お母さんは娘さんに私との面談を提案したそうです。すると、娘さんは二つ返事で面談を了承します。ほとんどのお子さんが「第三者に相談したくない!」と思う中、娘さんは相談を希望しました。これは、娘さんが「本当に困っている」証拠と言っても良いでしょう。

「先生が話をしているのに無視してしゃべっている子が多いんです。」
「授業中に出歩く子も増えてきています。」
「タブレット(教科書アプリ)を読んで大事な所に線を引く時間なのに・・・。」
「動画を見ている子もいるし、ゲームをしている子もいます。」

 どうやら、娘さんのクラスは授業が成立していないようです。これでは真面目な子が授業に集中できなくなるのは仕方のないことです。

 私は休み時間の様子についても聞いてみました。

「休み時間になると教室中を走り回る子がいて机をぐしゃぐしゃにされます。」
「友だちにぶつかっても謝らないで走り続けてるんです。」
「逆に『ジャマだ!』『どけ!』とか言ってくる。」
「大きな声で奇声を発している子もいます!」

5.授業中の問題行動に先生はどう対応している?

 先生の対応についても聞いてみました。

「先生は基本的に注意をしません。」
「たまに笑顔で優しく声をかけます。」

『Aく~ん、Bさ~ん、気をつけるのよ~。』
『授業中に出歩くのはやめようね~。』

「もちろん、先生の言うことを聞く子はいません。」
「それどころか、おしゃべりする子や出歩く子が増えています。」
「先生がおしゃべりする子を注意しないのが問題だと思います。」
「みんな、先生のことをナメているんです。」

6.問題行動を起こす子が増えるのはなぜ?

「先生の言うことを聞く子はいません。」
「それどころか、おしゃべりや出歩く子が増えています。」

 このクラスのように問題行動を起こす子が増えていくのは必然です。なぜなら、AくんやBさんが、ふざけたり、遊んだりしていても先生は「優しく注意」するダケだからです。

 当然、先生の対応をクラスメイトは見ています。

「授業中に出歩いても怒られないんだ~。」
「先生の話を聞かずに、おしゃべりしてもいいんだ~。」
「つまらないときはダブレットで動画を見たり、ゲームをしたりしてもいいんだ~。」

 クラスの子供たちがこのように思うのは必然です。このように考える子が「悪い」のでしょうか(?)

 それとも、このように思われるような対応をしている「担任」が悪いのでしょうか?

 申し訳ありませんが、25年間、学校現場で様々な役職を務めた私はハッキリと言わせていただきます。

「子どもは悪くない!」
「悪いのは担任だ!」

7.発言力のある子の意見を優先する担任

 娘さんは次のようにも言っていました。

「昨日、強い女子の子が先生にお願いをしました。」

『先生!』
『そろそろ、席替えをした方がいいと思います!』
『毎日の学校を楽しくするため『好きなもの同士』がいいと思います!』

「まだ、席替えをして2週間しか経っていませんでした。」
「私は席替えに反対だったのですが・・・。」

『そうね、それなら席替えをしましょうか!』
『みんな、新しい席の友だちと仲良くするんだよ!』

「先生は『好きなもの同士』の席替えを許可しました。」

 どうやら担任は「強い女子」の言いなりになって、意見を全て受け入れているようです。

 席替えは予想どおり「好きなもの同士」の席替えとなります。そして、「好きなもの同士」の席替えでよく起こる、「1~2人が余る」現象が起きてしまいます。当然ですが、「余った子」をどの班に入れるかで、もめてしまったそうです。

※ 余った子たちの気持ちを担任は考えていたのでしょうか?

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学級崩壊授業を見てきた②担任が何も言えない状態に!

特別支援学級の子をバカにして笑う子供ち

1.副担任に注意をされた子たちの反応

 2学期の終わりにはクラスは完全な学級崩壊状態となります。娘さんの話では次のようなことがクラスで起こっていたそうです。

「3人の子が特定の男子や女子に『悪口』を言われていた。」
「担任は、それを見ていても注意をしない。」
「副担任が悪口を注意すると・・・・。」

『私たち○○さんお悪口は言ってません!』
『先生の勘違いじゃないですか?』

「男子たちは、先生に注意をされると・・・・。」

『はぁ?』
『ちょっと、何、言ってるかわかんないです!(サンドウィッチマンのように)』

(その後、副担任をカラカって笑っている。)

 徐々に副担任も、何も言わなくなってしまったのです。

2.朝の会や帰りの会に遅刻してくる担任

 このとき、授業はもちろん「朝の会」や「帰りの会」も成立しなくなっていたようです。司会の子は離席している子がいても「朝の会」や「帰りの会」を始めます。しかし、誰も司会の話を聞いていません。

 その時、担任は何をしていたのでしょうか(?)「朝の会」や「帰りの会」の時間に担任は教室にはいなかったようです。

 教室に来るのがイヤだったのか、それとも、他の仕事をしていたのか、理由は分かりません。どちらにしても、「朝の会」や「帰りの会」が始まってから5分~10分後に教室に来ていたそうです。

3.先生が連絡をしようとすると・・・

 当然、クラスの子たちは担任の話を聞かないようになっています。司会の子が「帰りの会」最後のプログラムである「先生の話」と言うと・・・。

 いつもトラブルを起こす、女の子や男の子が大きな声で声をかけます。

「全員、起立!」

 取り巻きの子たちが立ち上がります。その子たちに、いじめられたくない他のクラスメイトも立ち上がります。

「帰りの挨拶!」
「さようなら!」

 大事な連絡が出来ていなくても、先生が怒ることはありません。

「さようなら。」
「気をつけて帰って下さいね。」

4.授業中に無断でトイレに行く子が増加

 授業中に無断で廊下に出る子も増えていきます。

「トイレに行ってきます!」

※「行かせて下さい」ではなく「行ってきます」が気になります。

 最初は担任に許可をもらっていた子たちも、少しずつ許可を得ずにトイレに行くようになったようです。それに対して担任は自分を納得させるように声をかけます。

「トイレですね。」

 3~6人が立て続けに「トイレに行く」事も少なくありません。ただ、それでも先生は注意をしません。

 10~15分後、3~6人が一緒に教室に戻ってきても・・・。担任がその子たちを注意する事はなかったようです。

5.昼休みに駄菓子屋にお菓子を買いに行く

 休み時間に教室でお菓子を食べている女子グループもあったようです。クラスメイトがそのことを担任に伝えても・・・・。担任がその子たちを注意することはありません。

 最初は家からお菓子をもってきてコッソリ食べていた女の子たちですが・・・。少しずつ行動が大胆になっていきます。
 ある日の昼休み、女子グループの3人は無断で学校の敷地を出て、近くの駄菓子屋に向かいました。そこで、自分たちの好きな駄菓子を買って学校に戻ってきたのです。

 ただ、学校に戻ってきたときには5時間目の授業は始まっていました。女の子たちが10分ほど遅れて(恐る恐る?)教室に入ると・・・・。

「体調は大丈夫ですか?」

 担任は女の子たちがトイレにいると思っていたようです。

 女の子たちは、予想外の優しい声かけに驚いたことでしょう。ただ、これ以降、女の子たちの問題行動はさらにエスカレートするのです。

6.ベランダから水をまく子や低学年をいじめる子

 娘さんの話によると次のような問題行動をする子もいたそうです。

・給食で「自分の好きなおかず」を多くしろと脅す。
・休み時間に理科室や音楽室に忍び込みイタズラをする。
・ベランダからゴミを投げたり、水をまいたりする。
・掃除用具でチャンバラをしたり、おとなしい子を叩くフリをしたりする。
・1年生や2年生などの低学年を突き飛ばしたり、脅したりする。
・特別支援学級の子の事を大声でバカにしたり、カラカったりする。
・脅かしたり、カラカったりして、驚いた反応をした子を笑う。など

 お母さんのママ友情報によると、これ以外にも様々な問題行動があったそうです。

 これは、完全に「学級崩壊」の状態ですが、担任は全く注意を「しない」というよりは「できない」状態となっていたようです。

7.保護者が教頭に訴えたことで学校が対応するも

 2学期の後半になると「登校しぶり」や「不登校」が増えていきます。

 そんな中、ある保護者がクラスの「いじめ」について教頭に訴えました。最初は担任に訴えていたそうですが、改善がみられないことに業を煮やし教頭に訴えたそうです。
 これをキッカケに、我慢をしていた他の保護者も「担任」や「学級崩壊」について教頭に訴えるようになります。

 事の重大さを感じた校長はスグに学級懇談会を開きます。そして、「いじめ」への対応について説明をしました。

「学校で『いじめ』を見つけたときはスグに指導をします。」
「子どもたちの気持ちに寄り添い対応をしていきます。」
「加害者の子が理解できるように話をしていきます。」
「御不安なことがある場合は教頭に連絡を下さい。」
「学校として対応を検討させていただきます。」

 加害者への対応について質問をした親御さんもいたそうですが・・・。

「個人情報、守秘義務の問題があるため、お答えすることは出来ません。」

 ただ、懇談会の時に学校はこのようにも言ってくれたそうです。

「いつでも授業参観に来て下さい。」
「どのような状態かを見て下さい。」

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学級崩壊授業を見てきた③学年主任と副担任の授業編

テスト中に堂々とカンニングする子がいても・・・

1.校長の許可をもらい授業参観へ

 知り合いのお母さんから授業参観のお誘いをいただいたのは2学期の中頃です。

「先生!」
「一緒に授業参観に行ってくれませんか?」
「クラスの様子や先生たちの対応を見て下さい。」
「学校の対応が正しいのか、間違っているのか確認して下さい。」

 ただ、保護者でもない私が無断で授業参観に行くことには抵抗があったので、事前に校長に許可をもらっていただくことをお願いしました。
 お母さんが校長に連絡をすると、スグに良い返事をいただくことが出来ました。そして、次のようなお言葉を頂きました。

「授業参観をして下さって結構です。」
「参観後、対応についてのアドバイスを頂きたいです。」

2.シッカリと授業指導ができる学年主任

 授業参観当日。

 最初に参観したのは学年主任が担当している音楽の授業でした。

「ふざけるはやめなさい!」
「ちゃんとやりなさい!」
「周りの子に迷惑です!」

 注意をするだけだと思ったら、やる気を引き出す声かけもしています。

「あなたには力があります!」
「でも、授業中にふざけているから力が伸びないんです!」
「授業に集中すれば力を伸ばすことが出来るでしょ!」
「ちゃんと授業を受けなさい!」

 怒られている子を見て、他の子が「ニヤニヤ」笑っています。学年主任はその子たちにも注意します。

「怒られている人を見てニヤニヤしない!」
「Aくんは授業に集中しようとしているんですよ!」
「ガンバろうとしている人を笑うのは許しません!」
「あなたたちもシッカリと授業を受けなさい!」

 授業が始まって10分間は、学年主任の「指導の時間(説教タイム)」でした。しかし、学年主任の「説教タイム」によって落ち着きのない子たちは授業に集中することが出来たのです。

 どうやら、学年主任は子どもたちに一目置かれているようです。後に娘さんに話を聞いてみると次のように言っていました。

「主任の先生の授業は授業崩壊していない。」
「問題を起こす子も授業を邪魔したりしない。」

3.1度だけ注意をして授業を続ける副担任

 次の参観授業は副担任の算数です。ただ、副担任が説明を始めても、半分以上の子は話を聞いていません。それに対して副担任が注意をします。

「Bさん、Cさん、おしゃべりはやめて!」

 しかし、BさんもCさんも副担任の注意を無視しておしゃべりを続けています。

 娘さんの話では、以前の副担任は子どもたちの問題行動に対して毅然とした対応をしていたようです。ただ、それで子どもたちの授業態度は変わりませんでした。

 そのような状態が続き疲れてしまったのでしょうか(?)いつの間にか副担任は「1度だけ注意」をして、それ以降はおしゃべりをしている子たちを無視して授業を続けるようになったそうです。

 実際、私が参観した授業もそうでした。

 最初に注意をして以降、副担任はおしゃべりが続く中、そのまま問題の説明を続けていました。半分以上の子は説明を聞いていませんでしたが、そのまま説明を続けたのです。

 何度、注意をしても態度を改めない子たちに心が折れてしまったのかもしれません。

4.授業改善への意欲を無くす副担任

 副担任は若い先生です。そのためか、授業にメリハリがありません。

※ 若い先生の授業が、全てメリハリがないとい訳ではありませんし、ベテランの先生でも、授業にメリハリがない先生はたくさんいます。

「先生が教科書を読んで説明する。」→「問題を解く。」→「答え合わせをする。」→「先生が教科書を読んで説明する。」→「問題を解く。」→「答え合わせをする。」→「・・・・・」

 算数が得意な子でも、算数が苦手な子でも、副担任の授業は「つまらない」と言わざるを得ないでしょう。
 当然、子どもたちは授業への集中力をなくしていきます。同時に「おしゃべりをする子」や「出歩く子」が増えていきます。

「副担任は最初から授業への意欲がないのか?」
「学級崩壊のため教える気持ちが無くなってしまったのか?」

 どちらなのかは分かりませんが、形だけの注意をして淡々と授業を進めます。これは「学級崩壊」しているクラスの「よくある授業風景」の1つです。

5.テスト中に堂々とカンニングをする子

 授業後半の15分は、その日に習った問題の小テスト(確認テスト)を行うそうです。

「今から小テストをします!」
「テスト隊形になって下さい!」

※ テスト隊形:全員が前を向き、前後左右を均等に離す隊形。

 しかし、クラスの子の1/3は机を動かしません。それどころか、「隣の子と机をつける子」がたくさんいます。斜め前の仲の良い友だち(?)と「机をつけた子」もいました。

 それでも、副担任はテスト隊形の確認をせず、注意もせず、小テストを配り始めます。そして、小テストが配られると「出歩いていた子」も席に戻ります。
 もちろん、授業を真面目に受けていない子たちは、小テストの問題を解くことができません。

 そんな子どもたちを見ていると、子どもたちは驚くべき行動にでました。

「1番の答え教えて!」
「2番を見せて!」

 堂々とカンニングを始めたのです。もちろん、先生はその行為を注意しません。これでは、真面目な子たちがやる気を無くしてしまうのは仕方のないことでしょう。

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学級崩壊授業を見てきた④学級崩壊チェックポイント!

教室はゴミだらけ!ロッカーはぐちゃぐちゃ!

1.学級崩壊かどうかをチェックする2つのポイント

 長年、私は生徒指導主事として多くのクラスを見てきました。そんな私は教室に入ったときに最初にチェックするポイントが2つあります。それが次の二つです。

①教室の環境

・ゴミは落ちていないか?
・ロッカーの上に私物が置かれていないか?
・ロッカーの中は整理整頓されているか?
・机はそろっているか?
・机の周りにプリントやノートが落ちていないか? など

②掲示物の状態

・丁寧に作られているか?
・内容は適切か?
・書いてある量は適切か?
・未提出の子はいないか?
・時期があっているか?
・先生からのコメントはあるか? など

 実際に「学級崩壊」や「荒れ」ている学級(学校)では、総じて2つのポイントがおろそかになっています。

 さて、このクラスの結果はどうだったのでしょうか?

2.ゴミだらけで机はバラバラ!ロッカーの上は私物だらけ!

 このクラスの評価は完全にマイナスです。教室にはゴミが多く、ロッカーの上も中も乱雑になっています。先生の机上にも様々なものが山積みにされています。当然ですが、机は縦列も横列も全くそろっていません。

 このような汚い状態では、ゴミが増えることはあっても減ることはありません。

 ある学校に生徒指導主事として赴任したとき、校長から「学級崩壊クラス」の支援を命じられたことを思い出しました。

 その教室もゴミだらけだったため、担任でもない私は常にホウキをもって、そのクラスをキレイにすることから始めました。

 担任がクラスの子が「来る前」や「帰った後」に担任が教室をキレイにしていれば、ここまで学級崩壊しなかったかもしれません。

 なぜなら、子どもたちは教員がしていることを常に見ているからです。

3.廊下にある個人掲示に「1学期の目標」が入っている子が・・・

 掲示物も最悪でした。

 最初に確認したのは「個人掲示」の内容です。私が授業参観をしたのが11月末でしたので、本来であれば「個人掲示」の場所には「修学旅行の思い出」や「学芸会の感想」が掲示されているはずです。
 実際、何人かの子の「個人掲示」の場所には「学芸会の感想」が掲示されていました。

 しかし、それ以外の子の「個人掲示」の場所には「学芸会の感想」は掲示されていません。その代わりに掲示されていたのが・・・・。

「夏休みの思い出」
「2学期の豊富」

 中には「新しいクラスの仲間へ」という、4月の最初に作成された掲示物で更新がストップしている子もいました。

4.記入欄は10行なのに1行~2行がほとんど

 内容もひどいものばかりです。

(学芸会の感想が掲示されている子たちの内容はしっかりしていました。)

・夏休みの思い出
「たくさんゲームをして楽しかった。」
       
  思い出を書く欄は10行ほどあるのですが、最初の1行にしか思い出を書いていません。同様に10行ほどある「2学期の豊富」の欄には下記のようにかいてありました。

・2学期の豊富
「ケンカをしない。」

 クラスの子たちのほとんどが「1~3行」しか内容欄に記入していません。ただ、4月の子たちの掲示物を見ると、丁寧にしっかり書いてある子がほとんどです。

 想像するに、最初は子どもたちも真剣に掲示物の作成をしていたのでしょう。しかし、担任が掲示物の確認をしていないことがわかり、少しずつ手を抜くようになったのではないでしょうか?

 そして、最終的には作成すらしなくなったと考えられるのです。

「えっ?」
「あんなに少しでいいの?」
「1行だけでも注意されないの?」
「○○くんたちは怒られてないぞ!」
「面倒だからテキトーにやろう!」
「あっ!」
「やっぱり何も言われない!」
「やらなくてもいいかも!」

 やはり、クラスを学級崩壊させたのは、担任であると言わざるを得ないでしょう。

5.掲示物から学級崩壊が始まった日が分かる!

 個人の掲示物はクリアファイルに重ねて入れていくタイプです。

 隣のクラスの掲示物を確認すると、ほとんどの子の掲示場所には「学芸会の思い出」が掲示されています。1~3人ほどの子は、1つ前の掲示物であろう「修学旅行の思い出」が掲示されています。

 私は「全ての掲示物が入っているであろう子」のクリアファイルを調べました。するとそこには合計で9枚のプリントが入っています。

 しかし、学級崩壊状態のこのクラスで、9枚すべてのプリントが入っている子は35人中7人だけです。

(他のクラスでは、9枚すべてのプリントが入っている子は35人中、32~34人でした。)

 9枚のプリントが入っている7人を除いた28人のうち、ほとんどの子の掲示が「夏休みの思い出」のプリントで止まっています。

 このことからも、このクラスの「学級崩壊」がひどくなったのは2学期であることが想像できるのです。

6.習字の掲示は他のクラスと同じ5枚だけど・・・

 このクラス(学年)には「個人の掲示」とは別に「習字」を掲示する場所がありました。そこを見ると、全ての子が「習字」を5枚以上、重ねて掲示しています。

『担任は習字には厳しいのだろうか?』
『習字の授業ごとに確実に掲示させているのだろうか?』
『もしかしたら、習字の授業は他の先生の担当なのだろうか?』
『その先生が確実に掲示させているのだろうか?』

 このように考えながら、掲示されている「習字」をめくってみると・・・。

『同じ漢字が重なってる!』
『あ~、そういうことか~。』

 もちろん、他のクラスも確認してみました。当然ですが、掲示されている5枚の「習字」は全て違う漢字のものです。

 どうやら、担任は最近の授業で書かせた「習字」を重ねて掲示させていたようです。

7.習字をかさ増しした理由は?

「どうして、同じ漢字を重ねて掲示したの?」

 このように感じた方も多いのではないでしょうか?

「掲示物ファイルには、入っていないプリントがあるのに。」
「全員がそろっていないのに。」
「どうして習字だけは全員そろえさせたの?」

 25年間、教員として働いてきた私は「理由」を次のようなものであると推測しました。

「数日後に教育委員会の指導主事が来るの?」
「教室の掲示をチェックされるからやらせたのでは?」

 子どもたちに「教育委員会のエライ先生が来るから掲示物を作成しなさい」とは言いにくいものです。そこで担任は次のように考えたのではないでしょうか?

「掲示の『感想』や『思い出』を全て書かせるのは時間がかかる・・・。」
「文句を言う子もいるだろう・・・。」
「そうだ!」
「明日は習字の授業だ!」
「習字だけなら何とか書かせることができる!」
「そこで書いた習字を重ねればいいんだ!」
「さすがに指導主事が習字をめくることはないだろう!」

※ 実際、私が授業参観をする翌週に「教育委員会の指導主事訪問」が予定されていたことが後に分かりました。

8.掲示物に「夜露死苦!」や「殺す!」の文字が!

 その他の掲示物もひどいものでした。

例えば、「班」や「係の役割」を紹介する掲示物では・・・。

「班の目標:新しい彼氏と仲良くする。元彼を無視しない。」
「班の目標:○○(歌い手)のファンを増やす。」
「意気込み:仕事をやらないときがあります!」
「でも、怒らないで下さい!」
「仲間へ一言:夜露死苦!」
「仲間へのお願い:係の言うことを聞かなかったら殺す!」

 これらの掲示物のほとんどは「殴り書き」「汚い字」「雑」に書かれています。さらには、どの掲示物も現在の「班」や「係」の物ではないようです。

 担任も1学期は掲示物を確認していたようですが・・・。

 2学期に入り「真面目に書かない」「注意をしても聞かない」子たちに対して、指導(支援)をやめてしまったようです。

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学級崩壊授業を見てきた⑤担任の授業編

注意する教師に「ウザい!」「死ね!」

1.保護者が見ているのに授業が崩壊している!

 私とお母さんは5、6時間目に再び授業参観させていただきました。どちらも担任の授業で5時間目が「社会」、6時間目が「体育」です。

 結論を述べさせていただくと、どちらの授業も「崩壊」していました。

 私とお母さん+3人の保護者が授業参観をしていたのですが・・・。保護者が5人いる状態でも授業が「崩壊」しているのです。
 担任が1人で授業を行っているときは、目の前の状態以上に授業は「崩壊」していることでしょう。これでは、担任が「教室に行きたくない」と思うのは仕方ありません。

 ただ、何度も書かせていただきますが、クラスを「授業崩壊」や「学級崩壊」の状態にしたのは担任の指導力不足(支援力不足)です。

「子どもたちの質が悪い。」
「親たちは、どういう子育てをしてきたんだ。」

 このように言って自分の指導力不足を反省しない教員は少なくありません。しかし、多くのトラブルを解決してきた私に言わせると「学級崩壊」は子どもや親のせいではありません。

 完全に教員の「指導力不足」に他ならないのです。

2.出歩き、おしゃべり、ゲームの子を注意しない

 参観した授業について具体的に紹介させていただきます。

(悲しいことですが、これから紹介する授業風景は他の学校でも散見する授業風景です。)

 担任は「昔の高校」のような授業をしていました。先生が一方的に説明をして大切な部分を黒板に書く。子どもたちは黒板の内容をノートに書き写す。

 もちろん、授業に興味を持てない子たちの多くがノートに何も書いていません。黒板に書かれた内容をノートに書き写しているのは一部の真面目な子たちだけです。

(ノートを書いている子たちは掲示物もシッカリしている子たちです。)

 授業に興味を持てない子たちは「おしゃべり」を始めます。さらにはタブレットで動画を見たり、ゲームをしたりしている子もいます。無断で友だちの席に行き「おしゃべり」を始める子もいます。

 当然、担任は気づいているでしょう。もしかしたら、その情景がツラすぎて脳が見えないと思い込んでいるのかもしれません。
 そのため(?)担任は全く注意をしません。それどころか、その子たちを無視して淡々と授業を続けています。

3.注意をする先生に「ウザい!」「死ね!」と言う子

 授業が始まって15分ほどした頃、教務主任(主幹教諭)が教室に来ました。40代後半の男性の先生です。

 教務主任は手紙を回している女の子の所に行き無言で手紙を没収します。すると、その女の子は教務主任に向かって暴言を吐きます。

「クソッ!」
「ふざけるな!」
「死ねよ!」
「ウザいんだよ、お前っ!」

 あまりにもひどい暴言に私とお母さん、他の保護者は驚いてしまいました。

 しかし、教務主任は暴言を気にせず、「出歩いている子」や「おしゃべりをしている子」「タブレットでゲームをしている子」の所に行き、無言でそれらを止めさせます。

 無言のプレッシャー(注意)を感じた子たちは渋々ですが授業に参加し始めます。

 その後も何度か「おしゃべり」や「出歩き」はありましたが、その都度、教務主任が対応をしたことで、スグに授業妨害はなくなりました。

 それでも、担任が子どもたちの問題行動を注意する場面は1度もなく、教務主任がいることに気づいていないように淡々と授業をしていたのです。

4.真面目な子も担任に嫌気がさして・・・

 授業の後半、3人の保護者の方が教室に入ってきました。少しはカッコイイところを見せたいと思ったのでしょうか?
 担任が問題の解答を児童に答えるように促します。

「Aさん1番の答えを言ってもらっていいですか?」

 この発問に対してAさんは驚くべき返事をします。

「イヤです!」

 しかし、担任は気にせず次のように言いました。

「それではBさんは分かりますか?」

 これに対してBさんは無表情で・・・・。

「わかりません。」

 こう言ったBさんは、先生を無視するかのように着席し教科書を読み始めました。

「難しいですよね。」
「それではCさんお願いします。」

 AさんとBさんは「おしゃべり」や「出歩き」をせずに、授業に取り組んでいたお子さんだったのですが・・・。

5.体育は体育着で受けるルールだけど・・・

 最後は担任による「体育」の授業です。しかし、この授業も「社会」同様に「授業崩壊」していました。

 最初に気になったのは「体育着に着替えていない子」が半分ほどいたことです。

『見学が多いな~。』
『インフルエンザや風邪がはやっているのかな?』

 こう思った私の考えは間違っていました。その子たちは「私服」のまま、体育の授業を受けていたのです。

※ この学校では「体育の授業」は体育着に着替えるルールがあります。

 体育館の前方では5年生が授業を行っています。当然ですが、1名の見学者を除いて全ての子が体育着で授業を受けています。

 この学校では5年生の授業風景が「普通」の状態のはずなのですが・・・。

 もちろん、担任は「私服」について注意をすることはありません。これも「学級崩壊」しているクラスの特徴です。

 学級崩壊は担任が注意(指導や支援)を怠ったことで、子どもたちが学校や学級のルールを守らなくなることから始まります。
 子どもたちがルールを守らなくなって、慌てて注意をしても子どもたちは言うことを聞かない状態になっています。

 その結果、担任は子どもの顔色を窺ったり、注意を一切しなくなったりするのです。

6.授業中に3人でトイレに行く子たち

 授業の開始とともに先生が「準備運動」の声かけをします。しかし、子どもたちは、おしゃべりをしながら、見るからにダラダラと「準備運動」をおこなっています。

 すると、ガラの悪い男の子たち3人が体育館から出て行こうとしました。ちょうど入り口で見学をしていた私は、その子たちに声をかけます。

「授業中だよ!」
「勝手に体育館を出ちゃダメだよ!」

 すると彼らはこう言いました。

「トイレに行くんで~す!」

 私が体育館のトイレを指さすと、彼らはこう言います

「体育館のトイレは使いにくいので!」
「担任に許可はもらっています!」

 その子たちは15分ほどして戻ってきました。戻ってきた子たちに、先生は次のように声をかけました。

「お腹は大丈夫?」

7.チャイムと同時に勝手に帰る子たち

 6時間目終了のチャイムがなりました。

 5年生がキレイに並んで、終了のあいさつをしています。

 その横で、6年生はおしゃべりをしています。勝手に教室に戻る子もいます。係の子が「ありがとうございました。」と授業終了の号令をかけても、一緒に挨拶をする子は数人です。

 挨拶をせず、仲間とおしゃべりをしている子に対して担任が声をかけます。

「寒い中、体育をがんばってエラかったね!」

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学級崩壊授業を見てきた⑥崩壊クラスの担任は「話し合い」が好き

話し合いで問題を解決しようとするが・・・

1.学級崩壊の対応はたくさんあるけど・・・・

 私は相談を受けたお母さんに「授業の感想」を全て伝えました。すると、お母さんはこのように聞いてきます。

「どうしたら学級崩壊を改善できますか?」
「改善方法を教えて下さい!」
「私から校長に伝えます!」

 しかし、私にはこのような危惧がありました。

『学級崩壊を解決する方法はあるけど・・・・・。』
『校長や担任が本気でやれば解決するけど・・・・。』
『勤務時間内ではできないとか言われそうだし・・・・。』

 お母さんに、このような心配があることを伝えた上で、私は学級崩壊の対応をお伝えしました。

2.学級崩壊あるある:話し合いで問題を解決しよう

「クラスの問題は子どもたち同士で話し合って解決させます。」
「教員が命令したり、注意をしたりして、問題を解決しても意味がありません。」
「子どもたちが自主的に問題に向き合い、自分たちで解決することが大切です。」
「私はクラスや友だち同士で問題があったときは、子どもたちに話し合いをさせます。」
「自分たちで問題を解決することは生きる力になると思っています。」

 このように仰る先生は少なくありません。確かに仰ることは間違っていません。子どもたちが自分たちで問題を提起し、その対応を全員で考え、それを解決することが出来れば、これほど素晴らしいことはありません。

 しかし、自分たちで問題を提起し、自分たちで解決できるクラスは、どのくらいあるのでしょうか?

 私は教員生活25年の間、常に学級担任をしてきました。また、学級運営や人間関係の構築研究に力をいれてきました。その結果、「自分たちで問題を提起し、自分たちで解決できる」クラスを作ってきた自負があります。

 ただ、「自分たちで問題を提起し、自分たちで解決できる」クラスを作ることができたのは40代に入ってからです。それ以前は、もちろん良いクラスだった自負はありますが、全てを自分たち解決できるクラスではあったかと聞かれると・・・。

3.学級活動での話し合い禁止!

 学級崩壊を解決するため、私が最初に伝えた対応は「学級活動での話し合い」をやめることです。

 なぜ「学級活動での話し合い」の中止を最初に伝えたのかというと、授業参観の時に次のような掲示(言葉)を多く目にしたからです。

「学級の問題点を解決するための5箇条!」
「みんなで決めたルール!」
「学活で話し合ったことを守ろう!」
「トラブルが起きたときは話し合おう!」など

 背面黒板、教室後方掲示場所、教室横掲示場所にこれらの言葉が貼られていました。前面黒板を見ると「みんなで決めたルール」と書かれた掲示物が貼られています。

・先生や友だちの話はしっかりと聞こう!
・授業中のおしゃべりをやめよう!
・授業中に出歩くのをやめよう!
・時間を守ろう!
・悪口は言わないようにしよう!

※ なぜ、「悪口禁止」と書かないのでしょうか?

 そして、最後に次のような言葉が書かれていました。

「みんなで話し合って決めたことは守ろう!」

 しかし、「みんなで決めたルール」が守られている気配はありません。

4.目標を掲げるのは良いことだけど・・・

 目標を掲げ、それを達成(守る)ことができれば子どもたちの「自己効力感」や「自己肯定感」は高まるでしょう。しかし、目標を掲げても、それを達成(守る)ことができなければ、当然、「自己効力感」や「自己肯定感」は上がりません。

 子どもたちの「自己効力感」や「自己肯定感」が変わらないのであれば、まだ良いのですが・・・・。

「守らなくても何も言われない!」
「誰にも怒られない!」
「みんなで決めたことは守らなくていいんだ!」

 このように、子どもたちが誤学習してしまうと・・・・・。

 子どもたちの「自己効力感」や「自己肯定感」を高める以前の問題として「学級崩壊」が起きてしまうのです。

5.自主性や自治を育てるには基礎が大切!

 担任が「クラスの問題を話し合いで解決することが大切」と思っているのは、「学級崩壊あるある」の1つです。

「私は子どもたちの自主性を尊重しているんです。」
「クラスの問題を自分たちで考え、自分たちで解決することが大切だ!」
「教員がルールを押しつけるのは良くない!」
「自分たちでルールを決めることで、子どもたちはルールを守るようになる!」
「子どもの成長には自治的活動が必要なんです!」

 確かに仰ることは「理想の対応」だと思います。しかし、教師が「理想の対応」を行ったからと言って、子どもたちが必ず「理想の行動」を取るわけではありません。

 更に言えば、子どもたちが「自治的活動を行えるようにするには、「話し合いの基礎」や「人権感覚」、「自己効力感」「他者理解」「モラル」などのスキルや知識の基礎が必要不可欠です。

 教師がこれらの指導や支援をせず、ただ「自主性が大切!」「自治をさせたい!」と言っても、子どもたちが上手にできるわけがないのです。

6.教師が「強い指導」をしてはいけないの?

 次の①~④の「教師の対応」と「子どもたちの活動結果」の中で、あなたが「良いクラス」と思えるのはどれですか?

 可能であれば順位をつけて下さい。

①教師が「理想の対応」を行ったことで、子どもたちが「自治的活動」を行えた。
②教師が「理想の対応」を行ったが、クラスは「学級崩壊」してしまった。
③教師が「強い指導」を行ったことで、子どもたちが「自治的活動」を始めた。
④教師が「強い指導」を行ったことで、クラスは「学級崩壊」してしまった。

 当然ですが、教師が①の対応を行い、子どもたちが①の結果を出してくれることが最も望ましいでしょう。

 それでは、2番目に良いクラスと思われるのは②~④のどれでしょう?

 ②のように教師が「理想の対応」を行うことでしょうか?

 それとも、③のように教師が「理想の対応」ではなくても、子どもたちが「自治的活動」を始めることでしょうか?

 私は「理想主義者」でもありますが、「現実主義者」でもあります。そんな私が2番目に良いクラスと思うのは③のクラスです。

 なぜなら、③のクラスには「辛い思い」をする子がいないからです。

 確かに③では、「自己効力感」や「自己肯定感」はそれほど上がらないかもしれません。それでも、「辛い思い」をする子がいない状態にはなっています。

 1人ひとりの能力を高めることは大切ですが、全ての子が安全に生活できる環境を提供することの方が大切ではありませんか?
 もしかしたら、子どもたちの「成績」や「能力」「スキル」は成長しないかもしれません。それでも、教室が誰1人「辛い思い」をしない空間である方が良くないですか?

 いじめや無視、悪口などがなく、みんなが笑顔で過ごせる教室。1人ひとりの居場所がある教室が良いと思いませんか?

7.学級崩壊しても自分のやり方を変えない教師

 私は①~④に次のような順位をつけます。

「①→③→④→②」

 3番目に良い状態を④とし、最も悪い状態を②とした理由は「その後の教員の対応」を考えたからです。

「私は子どもたちの自主性を尊重しているんです。」
「クラスの問題を自分たちで考え、自分たちで解決することが大切だ!」
「教員がルールを押しつけるのは良くない!」
「自分たちでルールを決めることで、子どもたちはルールを守るようになる!」
「子どもの成長には自治的活動が必要なんです!」など

 このように考えている教員は、クラスが学級崩壊したときに次のように考える傾向があります。

「前の学校では上手くいった!」
「だから、私の対応は間違っていない!」
「悪いのはクラスの子どもたちだ!」
「親がちゃんと子育てをしていないからだ!」
「私は何も悪くない!」など

 このように考える教員は、自分の対応を変えようとしません。当然、クラスの状態は更に悪くなってしまうのです。

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学級崩壊授業を見てきた⑦学級崩壊を改善する方法は?

少しの支援で改善するのに・・・

1.放課後or朝の教員による教室清掃はできる?

 次にお願いをしたのは「教室清掃」です。

 これは比較的に簡単にできる「学級崩壊改善方法」の1つです。ちなみに、この改善方法は「ブロークン・ウインドウ理論(割れ窓理論)」の考えを学級運営に応用したものです。

 ブロークン・ウィンドウ理論(割れ窓理論)とは、アメリカの犯罪学者ケリングが提唱した理論です。

「1枚の窓ガラスが割られている状態を放置していると、それを見た他の人間により、その他の窓ガラスも割られていく。」
「当然、窓を割るという行為が街全体に広がり、軽犯罪→重犯罪が増加し、街が荒廃していく。」

2.学級崩壊クラスの教室は確実にゴミだらけ!

 学級崩壊しているクラスは総じて教室にゴミが散らばっています。これは、教師が「清掃活動」を「大切な活動」と考えていなかったことにより起こる状態です。

・元気の良い子(やんちゃな子)が掃除をさぼる。
・担任がサボりに気づかない(気づいても注意をしない)。
・付和雷同組の子たちが掃除をさぼり始める。
・真面目に掃除をしている子たちの「やる気」が下がっていく。
・教室にゴミが増えていく。

※ 付和雷同組の子:教師の様子を見て、良くも悪くも振る舞う子たち
※ この時点で慌てて担任が注意をしても、主犯格の子や付和雷同組の子は言うことを聞かなくなっている。

 学級崩壊している時点でクラスの子たちに呼びかけても「掃除」をすることはないでしょう。しかし、教室のゴミをそのままにしていれば更にゴミが増え、モラルや規範意識は低下していくのです。

3.教師がゴミを拾うことで仲間が増えていく!

「教室が汚いままだと、どんどんゴミは増えていきます。」
「ゴミを床に捨てるという小さなルール破りが日常化すると他のルールも簡単に破るようになります。」
「当然、教師の言うことは聞かなくなりますし、問題行動も増えていきます。」

 先生たちは私の提案を受け入れてくれない可能性が高いと思いましたが・・・・。

「子どもたちが教室に入る前に先生が教室掃除をするのはどうでしょう?」
「前日の放課後、子どもたちが帰った後で掃除をするのも良いでしょう。」
「毎朝、キレイな教室で子どもたちを迎え入れるのです。」

 また、休み時間や授業中にも積極的にゴミを拾ってもらうようにお願いをしました。

「先生の行動を見ている子は必ずいます。」
「これを続けていくと真面目な子たちが先生の味方になってくれます。」
「一緒にゴミを拾ったり、注意をしたりする子も増えてくるんです。」

 そして、最後にこのようにお伝えしました。

「手伝ってくれる子のことは帰りの会などで、たくさん褒めてあげて下さい。」
「写真をとって学級通信に載せるのも効果的です。」
「これにより付和雷同組の子も良い状態に戻ってきます。」

4.パワハラを恐れて放課後清掃を命令できない校長

 学級崩壊をしているクラスの担任は子どもたちを注意することを恐れています。面倒と思っている担任も少なくありません。
 そんな、子どもたちに対して「注意」をしても意味がありません。それどころか担任が精神的に疲れてしまいます。

 担任が「ゴミを拾う」や「教室清掃」は、教師の「指導を聞かない子」を注意するという作業ではありません。そのため、担任にとっては、それほど負担がある提案ではないのですが・・・。

「勤務時間外になってしまう可能性があるので、担任に掃除しろと言うのは・・・。」
「授業は『学ぶ場』ですので、担任がゴミを拾うのは・・・。」
「学級通信は担任裁量ですので、配布するように言うことも・・・。」

 校長は担任からパワハラで訴えられることを恐れて新しい提案ができないようです。

 確かに授業は「学ぶ場」ですが・・・・。

 学級崩壊している状態では授業は「学ぶ場」ではなく、「遊び場」になっているのですが・・・。

5.休み時間も教室にいて問題行動を未然防止すればいいけど

 次に「休み時間の悪口」や「ベランダからのイタズラ」についての対応を伝えました。

 これらの問題行動を防ぐのは簡単なのです。休み時間に教員が教室にいれば良いだけの話なのですが・・・。

「それでは、次の授業の準備ができなくなります!」
「ずっと子どもと一緒では教師が疲れてしまいます。」
「教師にも休憩は必要だと思います。」
「子どもたちの視点で考えても、教師が休み時間に教室にいるのは良くないと思います。」

 このように仰る先生方がいます。ただ、これも「学級崩壊あるある」の1つなのです。

「授業の準備は前日までに行うのが普通では?」
「休み時間は教師の休憩時間ではありません。」
「教師のいない休み時間に悪口やイタズラがあるんですよね?」
「悪口を言われている子は先生がいると安心するのではないでしょうか?」

6.休み時間に教室に行くのは不可能と言う学校

 休み時間の対応を担任1人でする必要はありません。学年部の先生と交代で対応することも出来るでしょう。

 この学校の場合は、校長、教頭、教務(主幹)がこのクラスに関わっています。そうであれば、4人で分担して休み時間の対応をすれば良いのではないでしょうか?そうすれば、1人あたり+10分~20分程度の負担増です。

 これだけの負担で「悪口」や「問題行動」が減る可能性があるのです。やらない手はないと思うのですが・・・。

 しかし、この対応も校長に却下されたそうです。

「先生たちは授業の準備で忙しいので・・・。」
「ずっと教室にいるのは不可能です。」
「他の先生も自分の仕事を持っているので・・・。」

 私は常に教室にいて子どもたちと話していたのですが・・・。

 生徒指導主事として「いじめのあった他のクラス」に休み時間ごとに行ったりもしたのですが・・・。

7.子どもを怒るのは教育的に良くない!?

 最後に「連携した指導や対応」についてもお伝えさせていただきました。

「生徒指導主任の先生などに、悪役(恐い先生)を演じてもらって下さい!」
「悪いことをしても誰も怒らない状況は良くありません!」
「教師として、大人として、ダメなことはダメと教えてあげて下さい!」

 しかし、これに対しても校長はこのように言ったそうです。

「私たちは子どもたちのレジリエンス(回復力)を信じています。」
「怒ったり、管理したり、恐怖政治を行うのは教育ではないと考えています。」
「子どもたち1人ひとりに寄り添い『気づく』ように支援をしています。」

 校長のおっしゃる対応で学級崩壊が改善に向かっているのであれば、何も問題はありません。ただ、「自主性」「尊重」「寄り添う」などの理想論にこだわり、現実が見えていないように感じてしまいました。

 学校は「問題行動」や「いじめ」を起こしている加害者の人権を大切にする傾向があります。本来は「学級崩壊」や「いじめ」のせいで「辛い思い」をしている被害者に寄り添わなくてはいけないのに・・・。

8.自治的活動が大切!だから、管理教育やゼロトレランスはダメ?

 私は、「自治的活動」についての実践論文で「賞」を頂いたこともあります。

(賞金15万円を頂きました。ありがとうございます!)

 都道府県の代表となって全国研修会に参加させていただいたり、全国研修会の司会をさせていただいたりもしました。

 このような経緯もあり、「自治的活動」については他の先生方より理解しているという自負があります。
 そんな私ですが、「管理教育」や「ゼロトレランス」を完全に否定する立場に立っている訳ではありません。

※ 管理教育:校則やルールをなどで子どもを管理する教育。
※ ゼロトレランス:寛容0(ゼロ)。ルールを破った場合は問答無用で罰する。

 先生方には「自治的活動」の素晴らしさを理解し、それを実現させるために努力をしていただきたいと思っております。
 ただ、教師の力が及ばず「学級崩壊」が起こっているのであれば、「管理教育」や「ゼロトレランス」を取り入れたほうが良いとも思っています。

「自治的活動を謳って学級崩壊する位なら、管理教育やゼロトレランスで学級崩壊を防ぐ方が良い。」

 理想の対応ばかりではなく、現実に即した対応が必要と考えているのです。

9.ゼロトレランスでいじめ被害者は安心!

 学級崩壊のクラスには、必ずと言っていいほど「いじめ」や「不登校」が起きてしまいます。そこで、「管理教育」や「ゼロトレランス」を行うと、学級崩壊の中心人物(加害者)たちは「窮屈」な思いをすることでしょう。

 反対に「いじめ」の被害者や「不登校」の子たちは「安心感」をもつようになります。なぜなら、「いじめ」の被害者や「不登校」の子たちは、学校の「ルールを守る」子であり、仲間の「悪口を言わない」子だからです。

 当然、「いじめ」の被害者や「不登校」の子たちが、「管理教育」や「ゼロトレランス」をしている教師から怒られることはありません。なぜなら、「ルールを守り」「悪口を言わず」「いじめ」をしないからです。

 もちろん、「授業中に出歩く」「おしゃべりをする」「友だちの悪口を言う」「問題行動を起こす」子たちは、教師に怒られる回数が増えるでしょう。

 これにより、クラスの真面目な子たちは教師に対して「安心」や「信頼」を持つようになるのです。

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