クラス替え①クラスはどうやって決まる?

クラス替え(準備編)

1.1人ひとりの短冊作成

 少し早いと思うかもしれませんが、学校では1月下旬から2月初旬にかけてクラス替えの準備が始まります。具体的には、生徒1人ひとりの「短冊」をつくる作業です。

 生徒1人ひとりの「短冊」とは、「前学年のクラス」「氏名」「成績」「部活」「ピアノ演奏」「運動能力」「PTA役員」「リーダーの資質」「友人関係」「その他」の情報が入った細長い紙のことです。この情報の入力は各クラスの担任が主となって行います。ただ、「運動能力」や「ピアノ演奏」「PTA役員」などは、体育の先生や音楽の先生、主任や副担任、級外(担任をしていないが学年を支援する先生)が行うこともあります。

 それでは、それぞれの項目について詳しくお伝えしていきたいと思います。

2.項目:前学年のクラス

 前学年のクラスとは、子どもが「今いるクラス(短冊作成時のクラス)」です。1組、2組、3組やA組、B組、C組などです。私が学年主任をしていたときは、前学年の部分を色分けして印刷をしていました。1組→赤、2組→青などです。これをしておく理由は後の確認をしやすくするためです。

 前学年のクラスの項目を作る理由は、新しいクラスに旧クラスの生徒を均等に割り振るためです。例えば、クラス数が4クラスで1クラスに男子が20人いる場合、新しいクラスには旧クラスの男子を5人いれるようにします。もちろん、法律で決められているわけではないので「必ず均等にしなければいけない」わけではありません。

 これを元に考えると、新しいクラスに旧クラスの友達が極端に少ない場合は、そのクラスには、教師の意図が隠されていると考えても良いでしょう。具体的には「いじめの加害者グループをバラバラにした。」「多くの親から別のクラスにしてほしいという要望があった」などが考えられます。

3.項目:氏名

 この項目には、それぞれの生徒の氏名が書かれています。親の離婚や親権の問題により、本名ではない氏名が記載されていることもあります。

4.項目:成績

 小学校では成績の項目を作らず、子ども同士の人間関係や親同士の関係でクラスを作ることがあります。

 中学校では高校受験を視野に入れなければならないため、クラスの成績を均等にする傾向があります。「1組の中間テストの平均点が80点」「2組の平均点が50点」のように差が出来てしまうと、親や塾から苦情がきてしまいます。これでは平均点が高いクラスはより高くなり、低いクラスはより低くなってしまう可能性もでてきます。これは子ども1人ひとりの「可能性を伸ばす」という観点からも良い事ではありません。

 私が勤務した学校では、2学期の期末テストの合計と冬休み明けに行った実力テストの合計を足し1000点満点で記入をしていました。

5.項目:部活

 この項目も小学校にはないでしょう。中学校では部活が友達関係に深く関わってきます。
部活が終わったあと一緒に帰ったり、土日の部活に一緒に行ったり、土日の部活終了後に、そのまま遊びに行ったりすることもあるでしょう。そのため、旧クラスの項目と同様に、新クラスに同じ部活の子が均等に入るように配置をしていきます。

 クラス数が多い学校の場合、必ずしも同じ部活の子が均等に入るわけではありません。例えば「A組に野球部は4人」「B組に野球部は0人」「C組に野球部は3人」など、特定の部活の子が全くいないクラスがあったりもします。
 私が関係した学年では、「新しいクラスに同じ部活の子が1人もいない」という状況は一度も作ったことはありません。これらの配慮は主任の考え方が強くでる傾向にあります。

6.項目:ピアノ伴奏

 この項目も小学校にはないかもしれません。中学校では文化祭で「合唱コンクール」を行う学校が多くあります。昔は「金賞」「銀賞」などの優劣をつけていましたが、現在は「発表会」として優劣をつけない学校も増えています。

 合唱を行う際に必要となるのが「ピアノの伴奏者」です。ピアノの伴奏は1日、2日で出来るものではありません。そのため、各クラスに最低でも1人はピアノを弾ける子どもを入れるようにしているのです。

 そこから逆に考えると、ピアノを弾ける子が少ない学校では、どんなに仲がよくてもピアノを弾ける子ども同士を同じクラスにできない現象が発生します。

 合唱コンクール当日だけ来てステージに上がろうとする不良少年を教師が抑えると「歌わせてやれ!」と言う親の声が!毎日、努力してきた子どもの気持ちを考えろ!

7.項目:運動能力

 運動会や体育祭を考えたとき、1つのクラスに足の速い子が集中してしまう事は避けなくてはなりません。なぜなら、運動会や体育祭を行う前に勝敗が決してしまうからです。これでは子どもたちの「やる気」がでません。

 そのため、「足の速い子」や「運動能力の高い子」も、ある程度ですが各クラスに分担するようにします。ただ、この項目は「部活」の項目同様に優先順位は高くありません。年に1度の運動会や体育祭のために「人間関係」が良くない子ども達を同じクラスにしてはクラス替えの意味がなくなってしまうからです。

8.項目:PTA役員

 PTAの役員さんも各クラスに分散するようにしていました。PTA主催の活動(奉仕作業や講演会)の時に各クラスをまとめる仕事があるからです。また、授業参観後の懇談会の司会をPTA役員さんが行う学校もあります。

 ただ、クラスをまとめる仕事も、懇談会の司会も、ほとんどの場合が担任や担当教諭が行っていました。慣れていない役員さんが行うよりも、教師が行ってしまうほうが早いからです。

9.項目:リーダーの資質

 学級の中に「学級委員」などのリーダーとなれる資質のある子どもも分散して配置するようにしています。ベテランの先生は「リーダーの資質」にこだわらない先生が多いのですが、やはり若い先生などは「リーダーの資質」がある子が多くいると安心できるようです。

 私も大学を卒業して最初に勤務した学校では、頼りになるリーダーに助けられたことが何度かあります。(カズキ!あの時は助かったよ!ありがとう!今は50才くらいかな?)

 教員としての勤務を続けていた私はリーダーは「作るもの」「育てるもの」という感覚になっていきました。学校のリーダーは何百人の会社を運営する社長とは違います。実際に、上手に支援をしてあげることで、誰しもがリーダーになれると分かったのです。

 このような考えで学級運営を学び続けたことで、教員生活の後半では「学級委員の選出」に困るほどでした。最後のクラスでは学級委員になりたい子が男子7人、女子9人もいて決めるのに苦労をしました。(安易に投票にはしたくなかったので、じっくり話し合いを行いました。)

 学級委員の立候補者が3人以下の事がない!学級委員を推薦で決めた事がない!子どもが積極的に学級委員に立候補するクラスを作るには?「いいクラス!」ってどんなクラス?

10.項目:友人関係

 この項目には「相性の良い子」や「相性の悪い子」の名前を記入していきます。「いじめ」などの問題行動があった場合は「被害者(A山花子)」「加害者(B川一郎)」などと記入します。

 また、「親からの要望」や「本人からの要望」などの人間関係についても記入をします。私見ですが、25年の教員経験から、この項目には「教師の学級運営力」が表れると思っています。

「AとBを一緒にするとうるさくなる!」
「CとDは些細な事でケンカをする!」
「EはFがいると気が大きくなり問題行動を起こす!」など

 このように、「相性の悪い子」ばかりを書いたり、「マイナスの内容」ばかりを書いたりする先生の学級は「落ち着きがない学級」「まとまりがない学級」となっていました。これは、教師が学級運営において「マイナス」にばかり目を向けてしまうクセが付いているからです。そのクセのせいで、「子どもを褒める」より「子どもを叱る」回数が増えてしまうのです。

 逆に「相性の良い子」や「プラスの関係」を書き込む先生の学級は「落ち着いた学級」「笑顔の絶えない学級」「まとまりのある学級」でした。かく言う私は、下記のような視点で学級の子どもたちを見るように努めていました。

「AとBを一緒にすると相乗効果で力を発揮する!」
「CとDは励ましあう仲間なんだ!」
「EとFはクラスを明るくしてくれる!(ただし、暴走注意!)」など

11.項目:特記事項

 この項目には、「アレルギー」「病気」「発達障害」「不登校」などの内容を記入していきます。

 新しく担任になった先生が知っておいたほうが良いと思われる情報を記入しておくのです。ただ、最近では「学年費未納」「給食費未納」「モンスターペアレント」などの言葉も記入するようになっています。

12.1人ひとりの短冊が完成!

 担任が入力した「クラス替えシート(切る前の短冊)」は、印刷する段階で「女子」と「男子」に分けられています。また、男女別で成績順にならべ変えてもあります。それを、主任や副担任(担任外)は、1人ひとりの幅で切っていきます。このときに切り取ってできた生徒1人ひとりの細長い紙を「短冊」と呼ぶのです。

 当然ですが、短冊には個人情報がびっしり書かれています。そのため、短冊は「学級編成会議」で使用するとき以外は、他の重要書類と一緒に校長室の鉄庫で保管をしていました。

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クラス替え②クラス替えスタート!

短冊を使って基礎クラスを作成!

1.成績順に並べ替えて新クラスの基本が完成!

 2月の中旬になると、2週間に1~2回の割合で「学級編成会議」が始まります。もちろん、子どもたちには「今日は会議があるから早く帰るんだよ!」としか伝えません。子どもたちが帰った後、学年部の先生たちは、それぞれの部屋に集まり「学級編成会議」を始めます。

 副担任(担任外)の先生がクラスの数×2枚の画用紙を準備してくれています。そこには「1組男子」「1組女子」「2組男子」「2組女子」・・・と書かれています。また、左端には一直線に両面テープが貼られています。

 各クラスの担任はテストの成績が記入された、個人の短冊を持って画用紙の周りを囲みます。すると、主任が声をだして数字を読んでいきます。

「男子から始めるよ!」
「1000点(直近2回の定期テスト合計点です。500点×2回)」
「999点」
「998点」
「997点」
「はい!Aくん、997点です。」

 成績の項目に「997」と書かれている短冊を持っている担任は、1組男子の画用紙の一番上にその子の短冊を貼ります。主任は続けます。

「996点」
「995点」
「はい!Bくん、995点です。」

 成績の項目に「995」と書かれている短冊を持っている担任は、2組男子の画用紙の一番上にその子の短冊を貼ります。

 このように、生徒を成績順に振り分けていきます。ポイントは「折り返し」の部分です。この作業は各クラスの成績を平均化するために行う作業です。そのため、折り返し部分をつくらなければ1組の平均点が高くなってしまいます。

 分かりやすくするために、「4クラスの学年」を例にお伝えしたいと思います。(下の図をご覧になりながら説明を読んでいただけると助かります。)

 成績の合計が1位の子の短冊はA組、2位の子の短冊はB組、3位の子の短冊はC組、4位の子の短冊はD組に貼られます。ポイントは5位の子です。5位の子の短冊を「A組」に貼ってしまうと、自然と「A組」の平均点が高くなってしまいます。そこで5位の子の短冊は「D組」の2番目に貼るようにします。同様に「6位はC組」「7位はB組」「8位はA組」「9位はA組」「10位はB組」「11位はC組」・・・・。

 このように「折り返し」の部分を作っていくことでクラスの成績が均等になるのです。

2.情報を元に生徒の短冊を入れ替える

 最初の作業で各クラスの成績は、ほぼ平均化されました。次に行うのは「短冊の入れ替え」です。

「1組にはピアノを弾ける子がいません!」

 どうやら1組にはピアノを弾ける子が1人もいないようです。すると、他のクラスの短冊を見ていた先生が返事をします。

「3組にはピアノを弾ける子が2人いるよ!どちらか1人を1組に移動させよう!」
「ピアノが弾ける子の成績は・・・。1人は849点!もう1人は658点です!」

 ここで1組の短冊を見ている先生は「849点」もしくは「658点」に近い子を探します。

「1組に652点の子がいます!この子と入れ替えましょう!」

 このように点数が近い子を入れ替えることで、クラスの平均点の差を小さくしていくのです。同様に「PTA役員」や「走力」「部活」についても均等にするため、確認をしながら入れ替えていきます。

 この作業は、それぞれの項目が均等になるまで続けます。ただ、この時点では機械的作業に徹します。「いじめ」や「人間関係」「問題行動」などについては、各項目が均等になってから、本格的に確認と入れ替えを行っていくからです。

3.「均等」にクラスをつくる?それとも・・・?

 基本クラスができた状態から、子どもたちの人間関係などを考えて、より良いクラスをつくって行くのですが、この後のクラス作りには2つのタイプがあります。1つが「均等タイプ」でもう1つが「担任を予測してタイプ」です。この2つの違いについて説明をさせて下さい。

 均等タイプとは、全てのクラスを均等につくる事を言います。例えばトラブルメーカーが3人いたとします。クラスが3つある場合は、1組、2組、3組にそれぞれ1人ずつトラブルメーカーを入れていくタイプです。トラブルメーカーの人数によってはクラスに偏りがでるでしょう。そんなときは、別の要素で調整します。

「1組はトラブルメーカーが多いから、リーダーの子を多めにしよう!」
「モンスターペアレントは別のクラスにしよう!」など

 均等タイプは「どのクラスを担任しても同じ」という考えが基礎にあります。また、担任が正式に決まってから、微調整をしようという考えもあります。
(担任の正式決定は4月ですが、実は1月に内々で決まっているのです。)

4.担任を予測してクラスをつくる?

 担任を予測してタイプは、内々で決まっている担任を想像してクラス替えを行うタイプです。前述したように1月の時点で人事異動の9割が決まっています。この時点で校長や教頭は次年度の校務分掌(誰が1年部で誰が2年部)を固めています。主任の意見を聞いて校務分掌を決める管理職もいます。そのため、「学級編成会議」が始まるころには、主任は新担任が分かっている状態です。

「1組にトラブルメーカーが2人いてもいいだろう!」
「逆に2組のトラブルメーカーも1組に入れよう!」
「発達障害の子どもは3組に多めに入れよう!」など

 ハッキリと新担任候補の名前をあげてクラス替えを行う主任もいますし、上記の会話のように新担任候補の名前は言わないまでも「におわせ」る主任もいます。ちなみに上記の会話の場合は「1組:エースの担任」「2組:新規採用や若手担任」「3組:支援学校経験担任」の可能性が高いでしょう。

 私の教員経験25年では、「均等タイプ」がほとんどでした。ただ、小規模校に赴任した時は「担任を予測してタイプ」で学級編成を行ったことがありました。そこで今回は最も一般的である「均等タイプ」のクラス替えについて詳しくお伝えしたいと思います。

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クラス替え③人間関係を考える!

クラス替えの一番大事な部分を!

1.人間関係を元に短冊の入れ換え

 ここからがクラス替えの本番となります。なぜなら、子どもたちの1年が掛かっているからです。単純に「好きなこと一緒で良かった」や「嫌いな子と離れて良かった」ではなく、「このクラスで良かった!」「みんなと仲良くなれた!」「一緒に努力できた!」のように1人ひとりの子どもが成長できるようなクラスをつくりたいと思っていました。

 最初に行うのは「人間関係」の項目を確認して短冊を入れ替える作業です。

「Aくんは、Bさんをいじめた加害者だ!別のクラスにしよう!」
「不登校のCさんはDさんと一緒にしないとまずいな!」
「EさんとFさんは同じクラスにするとうるさくなる!」
「GくんとHさんはクラスでイチャイチャするから離そう!」など

親からの訴えやお願いがある場合もココで反映されます。

「親からの要請でIさんとJさんは一緒にできない!」
「スクールカウンセラー経由でKさんとLさんは別のクラスと言われています!」など

 ある学校で学級編成会議をしていると、突然、校長がその部屋にやって来ました。

「先日、Mさんの親が私に相談にきた。」
「Nさんと同じクラスにして欲しいと言ってきた。」
「だから、MさんとNさんは同じクラスにしてやってくれ!」

 このように校長や教頭などに、直接、クラス替えのお願いをする親もいます。

 ちなみに私は、少し違う視点でクラス替えを行っていました。

「OくんとPくんは一緒だと元気倍増でおもしろいかも!」
「この2人をクラスの中心にすれば活躍するのではないか?」
「Qさんは誰と一緒になれば笑顔が増える?」
「RくんとSくんは部活は違うけれど、いつも一緒に帰っているから仲が良いはず!」
「TさんとUさんは○○オタクだから、同じクラスにしてあげたいな!」
「次の会議までに、もう一度、子どもたちを観察しながら考えよう!」

2.担任となった時を想像して入れ替え!

 クラスの形が決まってくると、今度は「担任として」「主任として」クラスをみていき、意見を出し合います。

「Vくんの親は若い女の先生を目の敵にしてるから男の先生がいいのでは?」
「2組には学級崩壊の主犯Wがいる!担任は怖い先生が良いと思います!」
「1組はモンスターペアレントが多くないですか?」

 各クラスの担任がほぼ決まっている(先生たちが勝手に決めている)状態で「クラス編成会議」をしたことがあります。その学校はいわゆる荒れている学校でした。その先生たちは、自分のクラスに面倒な子を入れたくありません。

「私のクラスもモンペがいるので、これ以上は入れないで下さい!」
「僕のクラスにもモンペがいるので入れないで下さい!」
「私は、(自分の)子どもが小さいので問題児を担任することは出来ません!」
「Xくんってオタクですよね!気持ち悪いので誰か引き取って下さい!」
「Oちゃんはかわいいから僕のクラスに入れて下さい!」
「お母さんが美人だからKくんをもらいます!」

※ これらの会話は実際に「学級編成会議」で語られた言葉です。

3.最後の確認と調整

 3月の前半になると、クラス替えはほとんど終了しています。当然、「新しいクラス」も完成しています。予定されている最後の学級編成会議では最後の確認と最終調整を行います。

「同じクラスに同じ部活の子どもがいるか?」
「旧クラスの子どもが同じクラスにいるか?」
「全てのクラスにピアノを弾ける子どもはいるか?」
「PTA役員が各クラスに1人いるか?」など

 小学校では、この時点でクラス替えは終了となります。ただ、高校受験が関係している中学校の場合、最後に新クラスの成績の「平均点」を計算します。あまりにも平均点に差がある場合は、数人の生徒を入れ替えて調整をします。ただ、人間関係を優先して、成績は考えない主任もいます。

 問題行動を起こすが多いクラスの担任に!最初のテストで平均点がダントツ最下位!半年間あることを続けたことで平均点が学年トップに!全国学力学習調査でも全国平均+10ポイントに!

 主任の意向に寄っては3月に予定されている「学級編成会議」を行わない場合もあります。ただ、私は少しでも子どもたちが満足する学級をつくりたいという思いが強かったため、4月に入ってから子どもを入れ替えたこともあります。

4.新クラス決定!担任も決定!

 このような作業を経て新しいクラスは決定します。ちなみに「このクラスは○○先生」と担任を決めるのは学年主任です。校長先生や教頭先生が学年部の先生を決めた後、学年主任が「新しいクラス」と「新しい担任」の組み合わせを行います。私の経験では1度だけ、主任が決めた担任に対して校長がNGを出したことがあります。

5.モンスターペアレントの希望が最優先!

 ある学校に赴任して1年が経過していた頃の話です。私は持ち上がりで中学2年生の担任をすることが決まっていました。

 中学1年の担任をしているときに、私のクラスに「小学校で不登校だった2人の子ども」がいました。1人は入学式に参加し、1人は不登校を継続しています。
 私はそれぞれに合った支援を考えて実行しました。これにより1人は4月からの登校継続し、もう1人は5月から登校を開始、そのまま登校を継続することができたのです。

 隣のクラスのサキちゃん(仮名)は、中学1年生で不登校になってしまいます。5月から不登校となってしまったサキちゃんは、中学1年生の間は、ほとんど学校に来ることができませんでした。その状態を見ていた学年主任は私に相談をしてきます。

「4月からサキちゃんをお願いしていいかな?」
「AとB(小学校で不登校の2人)は別のクラスにするから!」
「サキちゃんを頼むよ!」

 私は主任の依頼を快く引き受けました。ただ、AとBの担任も引き続き行うことを条件に出しました。なぜなら、不登校が解決した子が安定して登校できるようになるには2年は必要であると経験で分かっていたからです。もちろん、学年主任はOKをしてくれました。

 サキちゃんママは、小学校のころから「(プチ)モンスターペアレント」と言われていました。サキちゃんが不登校になってからは定期的に学校に来ては校長に苦情を言っています。

「不登校を解決するためにはサキちゃんママとの関係がポイントとなる!」

 このように考えた私はサキちゃんママについての情報を収集します。すると、サキちゃんママが私が住んでいるところから少し離れたスーパーに勤めている事が分かりました。私は買い物をするときは、意図的にそのスーパーを利用するようにします。サキちゃんママと関係を良くするキッカケがあると感じたからです。

 4月に入り「学年会議」を行っていると、校長が会議場所に現れます。

「サキちゃんの担任は誰に決まった?」
「西川先生です。」
「西川先生もいいと思うけれど○○先生の方がいいと思うよ!」
「いえ、西川先生にお願いするつもりです。」
「いや、サキちゃんは男性の先生のクラスで不登校になったから女性のがいいと思うよ!」
「いえ、西川先生なら大丈夫だと思います。」
「いや、やっぱり女性の先生がいいでしょう!○○先生にして下さい!」

 後で分かったことですが、サキちゃんママは校長に新2年の担任の希望を伝えていたそうです。トラブルになることを恐れた校長はサキちゃんママの意見を採用します。そして、すぐに確認をしたところ担任が希望以外の人間であったため、半ば強引にサキちゃんの担任を校長命令で変えさせたのです。

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中学1年生のクラス替えは誰がする?

子どもたちのことを知っている○○学校の先生

1.年度末に小学校の授業を見学する中学校の先生

 地域によっては2月~3月にかけて、中学校の先生が研修と称し小学校の授業を見学することがあります。これは4月から中学校に入学する子どもたちの実態を確認するという目的で行われます。見学に行く先生は中学3年生の担当をしている先生がほとんどです。なぜなら3年生の先生が新1年生の担任になる確率が高いからです。

「1回の見学で子どもたちの様子が分かるの?」

 このような質問をいただいたことがあります。この質問への返答は「もちろん分かります!」です。先生たちもプロですので授業を1~2時間みるだけでもたくさんの情報を入手することができます。

「Aくんは落ち着きがなく、すぐに周りの子に声をかけてしまうな!」
「4月の時点でしっかりと注意と支援を行っていこう!」
「Bさんはヤンキータイプだな!」
「この子が持っているエネルギーを良い方向に持っていきたい!」
「学級委員などリーダー的な役割を与えれば良い方向にいくだろう!」
「Cさんは周りの目を常に気にしているようだ!」
「このような真面目なタイプの子の担任はしっかりと注意ができる先生がいいだろう!」
「クラスが落ち着けば力を発揮できるタイプだな!」など

 ただ、これらの情報が「中学1年生のクラス替え」に影響を及ぼすことはありません。なぜならば「中学1年生のクラス」は小学校の先生がつくるものだからです。

2.中学校1年のクラスを決めるのは小学校6年の担任

 中学校1年生の「クラス替え」は小学校の先生が行います。当たり前ですが中学校の先生は小学6年生のことを何も知らないからです。
 
 小学校の先生には中学校から「新中学1年生のクラス数」が伝えられます。そのクラス数を元に小学校の先生は「学級編成」を行っていくのです。
 例えば「新中学1年生のクラスが4クラス」になることが決まっていたとします。その場合は、各小学校の先生は自分たちの学校の小学校6年生を男子4クラス、女子4クラスに分けます。

 例えば、ある中学校の校区には3つの小学校があったとします。

・A小学校:「男子40人」+「女子40人」
・B小学校:「男子12人」+「女子12人」
・C小学校:「男子20人」+「女子20人」

 この場合、それぞれの小学校の先生は下記の人数で6年生を4つに分けます。

・A小学校→「男子10人×4クラス」+「女子10人×4クラス」
・B小学校→「男子3人×4クラス」+「女子3人×4クラス」
・C小学校→「男子5人×4クラス」+「女子5人×4クラス」

※ 11人の場合は「3人」「3人」「3人」「2人」のようになるべく均等に分けます。

 小学校でも中学校の学級編成と同じようにクラス替えを行います。ただ、前述したとおり小学校では「人間関係を重視」した学級編成を行います。そのため、最初のテストでクラスの平均点に大きな差が出来てしまうことがあります。

3.小規模小が新しいクラス替えを提案するも・・・

 ある中学校に赴任する少し前の3月下旬のことです。以前、同じ学年で働いた先輩教諭から連絡がありました。その先輩はA小学校の校長になって2年目の先生です。

「西川先生はA中学校に生徒指導として赴任するんだよね!」
「A小学校の子どもの支援をお願いしたくて連絡したんだ!」
「去年、A小学校から中学校に入学した子のうち5人が不登校になってしまったんだ!」
「その5人の支援やフォローを頼むよ!」
「また、4月から入学する新1年生の支援もお願いしたいんだ!」
「もしかしたら、また、不登校になってしまうかもしれないから!」

 A中学校には、小規模小学校のA小学校、中規模小学校のB小学校、大規模小学校のC小学校の子どもたちが集まります。そのため、A小学校の子どもたちは、同じ学校の仲間がクラスに1~2人しかいない状態となります。仕方のないことかもしれませんが、確かにA小学校の子は肩身の狭い思いをするようになるでしょう。

 私はその学校で生徒指導主事と新1年担任の役職をいたたきました。先輩から相談をいただいた私は、学年会議や職員会議で「A小学校の子どもに意図的に声をかける」提案をします。特に学年会議では不登校の子どもを出さないように支援の大切さを伝えていきました。

 ゴールデンウィークに入ると、先輩(A小学校の校長)から、飲み会の誘いをいただきます。珍しく先輩のおごりです。

※ 教員の世界は割り勘が基本です。私は若い頃、先輩教員に飲み会に呼び出され2時間、説教をされたことがあります。ほとんど飲み食いができず五千円を払った最悪な思い出です。

「2時間の説教で五千円!さらに2次会では運転代行会社を・・・。」
「キャバクラ大好きの先輩!お気に入りのキャバ嬢は・・・。」など

 飲み会では「A小学校の卒業生」の様子について聞かれたり、感謝の言葉をいただいたりしました。さらには、先輩がA小学校で考えたアイディアについても教えていただきました。

「A小学校出身の子は中学で不登校になりやすいんだよ!」
「去年は5人、その前も3人、更に前も4人が不登校になっているんだ!」
「1学年で15人前後しかいないから、2割~3割が不登校になっている計算なんだ!」

 人数だけで考えると「少し多い」程度に感じますが、割合にすると「とても多い」と感じます。確かに15人のうち5人が不登校になるのは大きな問題と捉えたほうが良いでしょう。

「去年、A小学校に赴任してから、いろいろ対応をしているんだ!」
「中学校の見学を増やしたり、保護者や地域の人との体験を増やしたり・・・。」

 先輩も校長として様々な対策に取り組んでいるようです。話を聞いていると先輩の口から私が考えた事がなかったアイディアが発せられます。

「中学校は6クラスでしょ!そうするとA小の子は1クラス2~3人となるわけだ!」
「自分+1人~2人では、居場所が作りづらいのは仕方ないよね!」
「そこで、今年はA小を2つのクラスに分ける提案を地区の校長会でしたんだ!」
「例えば、1組にA小が7人、2組にA小が8人、3~6組は0人!」
「こうすれば安心感が増すから、不登校になりづらいでしょ!」

 このアイディはとても面白いアイディアです。私の頭の中には「クラスは均等にする」という固定観念があったため、このような「クラス替え」を考えたことはありませんでした。同時に「やってみる価値はある!」とも感じたアイディアです。

「ただ、A中の校長からはNOと言われたよ。」
「前例がないし、他の小学校の保護者から苦情がくる可能性があるからダメだと。」
「確かにそうだよな~。苦情が来る可能性はあるよな~。」

 もちろん、その後(私がA中にいる間)も、このアイディアが採用されることはありませんでした。

4.春休みに小学校と中学校で合同会議

 春休みに入ると小学校6年生の先生が、作成した「新クラス名簿」をもって中学校を訪れます。そこでは「新中学1年生の顔写真」をもとに、生徒1人ひとりについての情報交換を行います。

「Aくんは児童会長をしている正統派です!」
「Bさんは心が優しく、真面目でクラスのリーダーです!」
「Cさんは運動が得意で、何事も積極的に活動します!」
「Dくんの親御さんはクレームが多いので注意が必要です。」など

ひとつの小学校との会議には2~3時間を要します。そのため、中学校区に複数の小学校がある場合は別々に会議を行うため、1日の全てを小学校との会議に費やすことになります。

5.中学1年生のクラスが決定!

 中学校区に1つの小学校しかない場合は「新中学1年生のクラス」=「小学校の先生がつくったクラス」となります。
 中学校区に2つ以上の小学校がある場合、中学校の先生が「小学校の先生からの情報」と「授業見学の情報」をもとに、各小学校がつくってきた「新中学1年生のクラス」を組み合わせます。例えば下記のように組み合わせをします。

1組女子→「A小の1組」「B小の4組」「C小の2組」を合わせる。
1組男子→「A小の3組」「B小の3組」「C小の1組」を合わせる。
2組女子→「A小の2組」「B小の1組」「C小の4組」を合わせる。

 ただ、中学校の先生は子どもたちのことをあまり知らないため、それほど時間をかけることはありません。上手に組み合わせができる場合もありますし、組み合わせに失敗することもあります。

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中1のクラス替えの為の小中会議で

小中合同会議で子どもと親の悪口を言う教師

1.自分の指導力を棚にあげ悪口ばかりの担任

 春休みに新中学1年生のクラス替えをするときに「子どもたちの悪いところ」ばかりを伝えてくる小学校の先生がいます。「学級崩壊」を起こしてしまった学年の先生ほど「子どもたちの悪いところ」を伝えてきます。

※『 』は私の心の声なのですが・・・・。

「Aくんは、本当にだらしないんです!」
「毎日、忘れ物をしてきます。」
「宿題も全く出しません!」
「親が面倒を見ていないのでしょう!」
「要注意人物なので気をつけて下さい!」

『忘れ物を減らすために、どのような支援をしたのですか?』
『宿題を出させていないのですか?』
『Aくんに何と声をかけていたのですか?』
『親ができないのであれば、先生が一緒にやるのはどうですか?』
『何も支援をしていないなら、あなたが要注意教師ですよ!』

2.「協調性がない!」→『学校で教えるものでしょ!』

「Bさんは頭はいいけど協調性がないんです!」
「マイペースで自分勝手なことばかりします!」
「親がテストで良い点をとる時しか褒めないからだと思います。」
「頭が良い=エライと思ってるようです!」
「親の教育が間違っているから、性格がゆがんでいるのでしょう!」

『勉強をがんばってるのは良い事だと思います。』
『もちろん、勉強が全てではないことを教えていきたいです!』
『協調性は学校で学ぶものだと私は思います。』
『自分勝手な行動やマイペースな行動をした時、どのように声をかけたんですか?』
『頭の良い子なので信頼関係が出来ていれば話を聞いてくれると思いますが・・・。』
『勉強以外にBさんの良い所を教えて下さい。』
『もしかして分からないんですか?担任なのに?』

3.「授業中うるさい!」→『授業がつまらないんだよ!』

「Cくんは、授業中おしゃべりばかりするんです!」
「教師の話を全く聞きません!」
「授業の邪魔ばかりしてくるんです!」
「勉強ができないから仕方ないかも知れませんが。」
「本当にうるさいので気をつけて下さい!」

『おしゃべりした時に先生がした声かけを教えて下さい。』
『その時のCくんの態度やその後の対応も教えて下さい。』
『Cくんと話が出来ましたか?』
『先生が一方的に注意をして終わらせていませんか?』
『即時確認や即時称揚をしましたか?』
『単純に先生の授業がつまらないんじゃないですか?』

4.「発達障害だから!」→『インクルーシブを知ってますか?』

「Dくんは、落ち着きがありません。」
「すぐに出歩いたり、おしゃべりをします。」
「多分、発達障害でしょう!」
「親が自分の子と他の子が違うと認めないんです!」
「検査をすれば一発で分かるのに!」

『落ち着けない理由は発達障害だからですか?』
『あなたはどんな支援をしたんですか?』
『検査をしてもらいたいと親に言ったんですか?』
『発達障害の診断が出たら支援をするんですか?』
『インクルーシブ教育ってしっていますか?』

5.「不登校だから楽!」→『支援はしないの?』

「Eさんは、不登校なのでほとんど学校に来ていません。」
「親も不登校を受け入れています。」
「面倒ですが月に1回はプリントを届けて下さい!」
「多分、学校に来ることはないので楽です!」

『不登校になった理由はなんですか?』
『不登校は親のせいではないです!』
『支援はしていないのですか?』
『楽っていうのは失礼じゃないですか?』

6.ガマンできなくなり心の声を口に!

 あるとき、私は小学校の先生の悪口に我慢ができなくなり、心の声を口に出してしまいました。

「Aくんには宿題を出せるようになってもらいたいですよね。」
「そのために、先生が今までに行った対応を教えて下さい!」
「上手くいったこと、いかなかったこと、どちらでも結構です!」

 小学校の先生は黙ってしまいました。

「Bさんが、自分勝手なことするのはどんなときですか?」
「その時には、どのような声かけが効果的ですか?」
「これに関しても、先生が試した対応を教えて下さい!」

 この先生も黙ってしまいました。

「Cくんが、おしゃべりするときはどんなときですか?」
「全ての先生の授業でおしゃべりをするんですか?」
「先生はどのような工夫をしたのですか?」

 こちらの先生からも回答はありません。

「Dくんを発達障害と決めたのは誰ですか?」
「発達障害と思っているのであれば合理的配慮が必要ですよね!」
「どのようなインクルーシブ教育を行っていたんですか?」

 この先生はあからさまに不服そうな顔をしました。

「Eさんの親が不登校を受け入れた気持ちがわかりますか?」
「たくさんツラい思いをしてきたと思いますよ!」
「不登校の原因のほとんどがクラスの人間関係です!」
「どのような学級運営をしたんですか?」

 この先生のクラスは「学級崩壊」していたようです。

7.校長室に呼ばれて・・・

 翌日、私が職員室で仕事をしていると校長室に呼び出されます。

「小学校の先生に失礼なことを言ったらしいね!何でそんなことを聞いたの?」

『失礼な聞き方をしたつもりはありません。純粋に子どもの苦手を改善するアドバイスが欲しかっただけです。』

「そうは言ってもね~。小学校から『バカにされた!』と苦情が来ています!」
「小学校の先生にも考えがあるんですよ!あなたの考えと違うからと言って、それを否定しないで下さい!」
「あなたは何様のつもりなんですか?」

 ちなみに、私が教員を辞めた理由の1つは、この校長の言動にあります。

8.問題行動を親のせいにして自分の指導力を改善しない教師

 子どもが問題行動を起こしたり、不登校になったりすると、学校はその理由を「親の育て方」にする傾向があります。もちろん、親の「育て方」によって、問題行動を起こす確率が変わることは否定しません。

 ただ、この考え方を元にすると「学校」や「教師」がどのような支援をしても「問題行動」や「不登校」は解決しないことになります。なぜならば、「問題行動」や「不登校」の原因は「親」であると言っているからです。当然、親が変わらなければ子どもは変わらないという結論に行き着いてしまいます。

 本当にそうなのでしょうか?私は教員時代に様々な子どもの対応や支援を行ってきました。深夜、警察に生徒を迎えに言ったことは1度ではありません。この子たちの問題行動は続いたのでしょうか?そんなことはありません。全員が学校生活を楽しく送れるようになり全日制高校に進学していきました。

 不登校の子どもも同様です。他のクラスで不登校になった子どもの担任となり、全ての不登校の子どもが私のクラスで登校できるようになりました。私の自慢は「教員生活25年で自分のクラスから不登校を1人も出したことがない」というものです。

 もちろん、中学校にも自分の指導力を疑わず「問題行動」や「不登校」を親や子どものせいにする先生がいます。反対に、小学校にも子どものことを真剣に考え、自分の指導力を改善しようと努力をしている先生もたくさんいます。ただ、年々、自分の指導力を疑わず、問題行動や不登校を親や子どものせいにする先生が増えていることは間違いないように思います。

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好きな子と同じクラスになる方法

好きな子と同じクラスになるには?

1.苦手な子と違うクラスになる裏技を教えます!

 クラス替えで最も気になるのは「誰と同じクラスになるのか?」という部分ではないでしょうか?

『仲の良いAさんと同じクラスになっているかな~?』
『大好きなBくんが一緒だといいな~!』
『Cさんが同じクラスだと・・・・。』
『怖いDくんがいると学校に行きづらいな・・・。』など

2.苦手な子と違うクラスになるには?

 苦手な子と違うクラスになるのは、それほど難しくありません。特に「いじめ」や「無視」「悪口」などで不登校になってしまったり、欠席が増えたりしている子の場合は高い確率で違うクラスになることができます。ただ、何もしないで違うクラスになれるわけではありません。苦手な子と違うクラスになりたい場合は、その旨を学校に伝えることが必須となります。

 最もシンプルかつ効果的な伝え方は、親が学年主任や教頭、校長に伝えることです。さらには、電話などではなく面会をして伝える事が大切です。
 私の教員経験では、校長への直談判だけでなく、手紙も一緒に持ってきた親がいました。ここまでやられては学校としても断るわけにはいかないでしょう。なぜなら、親の意思に反した学級編成をしたことで「不登校」や「いじめ」が悪化してしまった場合、責任問題が生じるからです。

3.好きな子と同じクラスになるには?

 好きな子と同じクラスになる場合も同様です。「いじめ」や「無視」などで不登校になったり、欠席が増えたりした子であれば、高い確率で「好きな子」と同じクラスにしてもらえます。
 もちろん、同じクラスになりたい旨を学校に伝える必要はあります。こちらも、子どもが先生に伝えるのではなく、親が伝えることで「好きな子」と同じクラスになる確率は上がるでしょう。

「不登校じゃないと好きな子と一緒になれないのですか?」

 このように聞かれたこともあります。もちろん、そんなことはありません。しかし、不登校の子どもと比べた場合、一緒のクラスになる確率が下がってしまうことは否定できません。それでも子どもに取っては1年を左右する大きな問題です。

 そこで、今回は先生にお願いをして「好きな子」と同じクラスになれる可能性を上げる方法をご紹介させてもらいます。

4.親に頼んでもらう!(成功確率90%)

 不登校でなくても、親が学校に相談することで「好きな子」と同じクラスになる確率は上がります。なぜならば、学校は親からのクレームを恐れるからです。

「申し訳ありませんが約束はできません。」

 このように言われることが多いでしょう。しかし、ここで諦めてはいけません。1回だけで諦めずに2~3回はお願いするといいでしょう。(学校からモンスターペアレント扱いされないように注意して下さい。)また、少しでも役職が高い先生に相談することをオススメします。

「若い担任より中堅の担任!」
「中堅の担任よりベテランの担任!」
「ベテランの担任より学年主任!」
「学年主任より生徒指導主事(主任)!」(これは学校によります)
「生徒指導主事(主任)より教務主任(主幹教諭)!」
「教務主任(主幹教諭)より教頭!」
「教頭より副校長!」
「副校長より校長!」

 私が教員をしていたとき、突然、校長が学級編成会議にきて「AさんとBさんを一緒にするように」と言ってきたことがあります。後にAさんの親が校長に直談判したことがわかりました。Aさんの親は「面倒(モンスターペアレント)」で有名な親でした。校長はAさんの親からのクレームを恐れて同じクラスにするように指示を出したのです。

5.学校は文句を言ったもん勝ちの世界

 学校は「文句を言ったもん勝ち」の世界です。一般常識では恥ずかしくて言えないことを平然と言ってくる親がいます。本来であれば「無視」「拒否」と言う対応をとればいいのですが・・・。クレームを恐れる校長は、それらの意見の全てを受け入れようとします。

 逆に「我慢」をして何も言わないと学校は動いてくれない場合があります。「いじめ」の加害者が被害者よりも優遇されるのは、総じて「いじめ」の加害者の親は「モンスターペアレント」が多いからです。
 反対に「いじめ」の被害者の親は「一般常識」があり、さらに「争いを好まない」方がほとんどです。

 悲しいことですが、学校としては「どちらの親を納得させる(黙らせる)ことが簡単か?」という基準で対応することが少なくないのが現状です。

6.親が言ってくれない場合の裏技!(成功確率60%)

 「いじめ」や「無視」などにより「不登校」になってしまっている状態であれば、親も心配して学校に相談をしてくれるでしょう。
 しかし、「いじめ」や「無視」などもなく、毎日、学校に行くことができていれば、親が学校にお願いに行くことはないでしょう。

 それでは「好きな子」と同じクラスになるのを「運」に任せるしかないのでしょうか?ここでは「とっておきの裏技」をご紹介します。それがコレです!

「スクールカウンセラーさんにお願いをする!」

 簡単に言うと、スクールカウンセラーさんと話をして、どれだけ「好きな子」と一緒になりたいかを伝えるのです。

「私はAさんのおかげで、今、毎日を楽しく過ごせているんです。」
「Aさんがいるとガンバることが出来るんです!」
「一緒に勉強をしたり、部活に励んだりしています!」
「もちろん、Aさん以外の人とも仲良くできるのですが・・・。」
「別のクラスになった時が不安で仕方ないんです。」

 子どもが不安に思っていることの解決方法を一緒に考えて下さるのがスクールカウンセラーさんです。また、自分のクラスの子がスクールカウンセラーさんと話をすると心配してくれる先生もいます。
 スクールカウンセラーさんから「先生に話す許可」について説明があったときは「はい」と返事をして下さい。これにより、スクールカウンセラーさんが担任の先生や主任の先生に上手に話をしてくれます。当然、「好きな子」と同じクラスになる可能性は上がるでしょう。

7.若い先生にお願いする(成功確率30%)

 親にも頼むことができず、スクールカウンセラーさんにも頼むことができない場合は、担任の先生や話しやすい先生、主任の先生に自分でお願いをしましょう。

 普段から話をする先生には相談がしやすいかもしれません。年齢の近い若手の先生に相談をするのもいいでしょう。ただ、若い先生には「学級編成」の決定権はありません。また、どんなに正しい意見を言っても採用されないこともあります。

 もちろん、誰にも相談しないよりは「好きな子」と同じクラスになる可能性は上がるでしょう。ベテランの先生や主任の先生に相談できない場合は、駄目元のつもりで若い先生にお願いをしてみましょう。

8.主任を味方につければ!確率アップ!(成功確率90%)

「好きな子と同じクラスになりたいけれど、親にもスクールカウンセラーさんにも頼めない・・・。担任の先生は若い先生だし・・・・。」

 そんなときは勇気を出して学年主任の先生に相談をしてみましょう。学級編成の最終決定権は学年主任にあるため、学年主任を説得できれば同じクラスは決定です。
 ただ、気むずかしい先生もいらっしゃるでしょう。そんなときはベテランで力のある先生に相談するのも1つの方法です。学年主任の先生も自分が信頼をしているベテランの先生の意見は参考にするからです。

9.主任の先生と仲良くして確率アップ!(成功確率95%)

 すぐには出来ないかも知れませんが、学年主任の先生の信頼を得ることができれば「同じクラス」になる確率も上がります。

 学年主任の先生の信頼を得るには、普段から授業に熱心に取り組んだり、質問をしたりすることが大切です。もちろん、休み時間に学年主任の先生に話しかけたりするのも効果的です。

 学年主任の先生の教科によって「説得の方法」は変わります。理系(数理)の先生は論理的に物事を考えるため「納得できる意見」を聞く事が出来れば「同じクラス」にしてくれる傾向があります。逆に文系(国社英)や技能系(音美体技家)の先生は、「熱意」や「努力」を感じる事で「同じクラス」にしてくれる傾向があります。

 これは成績をつけるときも同様です。理系の先生は「数字」を大切にする傾向がありますが、文系や技能系の先生はノートや作品など「熱意」や「努力」を大切にする傾向があるのです。

10.一緒になりたいプラスの理由で確率アップ!(成功確率80%)

 スクールカウンセラーさんへの相談で少し触れましたが「好きな子」と同じクラスになることで「プラスに作用する」ことを先生たちに伝えておくことは有効です。

「Aくんと学級委員をやって、学級や学年を良くしたいんです!」
「昔、私がいじめられていたときにBさんが助けてくれたんです!」
「Cくんとお互い、部活で優勝を目指そうと約束した仲なんです!」
「Dさんと一緒なら、ZさんやYさんに注意ができると思います!」など

 先生たちに「一緒になるとこんなに良いことがありますよ!」とアピールするのです。また、行動でも先生たちにアピールできると「同じクラス」になる確率は上がります。

「先生には、元気よくあいさつをする。」
「先生の話をしっかり聞く。」
「先生の手伝いをする。」
「授業で積極的に発表する。」など

 「好きな子」や「親友」と同じクラスになりたいと思っているのであれば、今まで紹介してきたことをスグに実行して下さい!まだまだ、「同じクラス」にしてもらえる可能性はあります!もし、今年のクラスで同じクラスになれなくても、努力を続ければ来年はきっと同じクラスになれるでしょう!

「ガンバレ!小学生!」
「ガンバレ!中学生!」
「お母さん、お父さん、協力してあげて下さい!」

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優しい子を「お世話係」にしないで!

優しい子の善意を「お世話係」として利用しないで!

1.○○ちゃんをお願いね?お世話係って何?

 最後に「クラス替え」に関係している「お世話係」についての話をしたいと思います。

 先生たちの中には「クラス替え」をするときに「手のかかる子」に対して、その子の「面倒をみてくれる優しい子」を同じクラスに欲しがる先生がいます。
 この面倒を見てくれる子を「お世話係(お世話担当)」と言います。

 お世話係とは、休み時間や授業中に「手のかかる子」のお世話をする係の事です。もちろん、クラスの係として存在しているわけではありません。優しくて面倒見の良い子を先生たちが勝手に同じクラスに入れこう言うのです。

「○○ちゃんをお願いね!」

 お世話係の子どもの気持ちを考える先生はいません。なぜなら、お世話係が優しい子であることを知っているからです。そして、その優しさを利用して自分が楽(らく)を使用と考えているからです。

 もし、お世話係の子どもの事を考えている先生であれば、そもそも「お世話係」をやらせませんし、「○○ちゃんをお願いね!」などと声をかけることもありません。

2.周りの気にせずマイペース!自分の世界に入り込む子

 ある学校で中学1年生の担任をしたときの話です。

 私のクラスには「マイペース(不思議ちゃん)」のユメちゃん(仮名)がいました。(この言い方は好きではありませんが)いわゆる、発達障害のグレーゾーンと言われる子どもです。

 ユメちゃんは興味があることに対しては一直線です。当然、周りの事を考えることが出来なくなってしまいます。実際に学校では様々な一直線がありました。

・朝読書の時間、読んでいた本の世界に入りこみ、朝の会が始まっても読み続けている。
・掃除の時間、汚い所をキレイにすることに集中して、教室に戻らず掃除を続けてしまう。
・懇談会の準備で体育館に敷くシートに興味をもち、敷いたり丸めたりを繰り返し周りのジャマとなる。
・通学路の途中にいる犬と仲良くなり1時間おくれて遅刻したり、家に帰る時間が遅くなる。
(親から帰宅していない旨の連絡があり教員が周辺を探すと、楽しそうに犬と遊んでいるユメちゃんを発見しました。)など

 逆に苦手な算数の時間は、授業に集中できず常にキョロキョロしています。(笑)


3.理科の実験で集中モード!次の授業に遅れる!

 入学してから2週間後。

 理科の授業で微生物の観察を行っていた時です。ミジンコを見つけることができた事で、ユメちゃんの集中スイッチがONになります。
 ユメちゃんは他の微生物も見つけようと顕微鏡にかぶりつきです。本来、顕微鏡は2人で1台を使用するのですが、集中スイッチが入ったユメちゃんにペアの声は届きません。(ペアの子は先生の顕微鏡を借りて観察をしました。)

 ユメちゃん以外の子どもも真剣に微生物の観察をしています。それを見た先生は時間ギリギリまで観察を続けることにします。顕微鏡は片付けず、次の授業で「そのまま使う」事にしたようです。

 数分後、授業の終わりを告げるチャイムがなりました。

「顕微鏡はそのままでいいです!」
「プレパラートだけ軽く洗って持ってきて下さい!」
「カバーガラスを割らないように気をつけてね!」
「片付けが終わった子から、次の授業に行って下さい!」

 みんなが一斉に片付けを始めます。しかし、先生の声はユメちゃんに届きません。授業が終わっても微生物の観察に集中しています。
 5分経っても観察をやめないユメちゃんに理科の先生が声をかけます。

「やる気があるのは良いことだね!」
「でも、次の授業に遅れないようにしようね!」
「急いで片付けをしようね!」

 渋々、観察をやめたユメちゃんでしたが、次の授業に急いで行こうとしません。すると、ユメちゃんをズッと待っていたマキちゃん(仮名)が、ユメちゃんの手を引っ張ります。

「ユメちゃん!急がないとダメだよ!」
「次の授業に遅れるよ!」
「さあ!急いで!早く早く!」

4.4年間「ユメちゃんをお願いね!」と言われた子

 マキちゃんはとても真面目な女の子です。提出物は丁寧に期限を守って出し、先生や友達、近所の人には笑顔であいさつができる子です。そして、誰にでも優しく、面倒みがとても良い子です。

 マキちゃんは小学校3年生のころからズッとユメちゃんと同じクラスです。中学1年でも同じクラスのため5年連続で同じクラスだったようです。小学校の先生からは、毎年、決まった言葉を言われます。

「ユメちゃんをお願いね!」

5.ユメちゃんの代わりに謝るお世話係のマキちゃん

 理科の次は担任の私の授業です。

 授業開始のチャイムがなったと同時にユメちゃんとマキちゃんは走って教室に戻ってきました。マキちゃんは、全く急ぐ気がないユメちゃんの手を引っ張って戻ってきたのです。

 私はユメちゃんとマキちゃんに、ギリギリになった理由を聞きます。すると、マキちゃんは申し訳ないという表情をします。

「ギリギリになってすみません!」
「急いで戻ってきたのですが・・・。」

『どうしてギリギリになったの?』

「ユメちゃんが微生物の観察に夢中になって・・・。」
「間に合うように急いだんですけど・・・。」
「私がもっと早く声をかければ良かったんです!」
「すみませんでした!」

6.声をかけてくれてありがとう!でも、待たなくていいよ!

 担任になって2週間が経っていたため、ユメちゃんの行動パターンはわかっています。細かい理由は聞きませんでしたが「ユメちゃんの集中スイッチが入った」「マキちゃんが声をかけても動かなかった」この辺りが理由なのでしょう。

 マキちゃんの性格からして、何度も何度もユキちゃんに声をかけたはずです。しかし、集中スイッチの入ったユキちゃんに、その声は届かなかったのでしょう。ユメちゃんが謝るのならともかく、マキちゃんが謝る必要は全くありません。

「ユメちゃんに声をかけてくれてありがとう!」
「先生はうれしいよ!」
「でも、これじゃあマキちゃんが疲れちゃうよね。」
「授業に遅れないように声をかけるのは先生の仕事だからね。」
「まずは自分が遅れないようにしていいからね!」
「ユメちゃんには1回だけ声をかければいいよ!」
「待たないでいいからね!」
「後は先生がやるからさ!」

7.みんなの前で泣き出すマキちゃん

 私が声をかけるとマキちゃんは泣き出してしまいました。私が慌てているとクラスの子から野次(?)が飛んできます。

「先生がマキちゃんを泣かした!」
「真面目なマキちゃんを何で泣かすの!」
「女の子を泣かしちゃダメだよ!」
「先生!最低!信じられない!」などなど

 慌てた私は自分の身の潔白を証明するためクラスの子に言い訳(?)をします。

「先生が泣かせたわけじゃないし!」
「先生、怒ってないし!」
「先生、何も悪くないし!」

 私の動揺している姿を見たマキちゃんはクスクスと笑い始めました。

8.お世話係としての本音を告白!

 放課後。マキちゃんは私の所にきて泣いてしまった理由を教えてくれました。

「私はユメちゃんの事は好きです。」
「ユメちゃんに声をかけるのもイヤではありません。」
「でも、声をかけても聞いてくれないことがあります。」
「そんな時はやっぱりイラッとします。」

 マキちゃんも人間です。さらには善意でユメちゃんに声をかけてくれているのです。「イラッ」とするのは当然の事でしょう。

「ユメちゃんは好きですが、ユメちゃん専用はちょっと嫌です。」
「私だって、他の友達と話したり、遊んだりしたいんです!」

 これも当然のことでしょう。マキちゃんは1人の人間であり、まだ、中学1年生です。ユメちゃんの専用となってはいけません。この状態が続けばマキちゃんの成長や発達、才能を伸ばすことができなくなってしまいます。
 
「小学校の3年生の時に、先生に『ユメちゃんをお願いね!』と言われました。」
「先生に頼まれたのが嬉しくて、ユメちゃんの事を意識して見るようになりました。」
「もちろん、ユメちゃんの事は好きなので、話をしたり、遊んだりするのはイヤではないです。」

 真面目な子や優しい子、面倒見のよい子を「お世話係」にする先生が多いのが現状です。本来は「手のかかる子の支援」も教員の仕事なのですが・・・。

 先生に頼まれたことでマキちゃんはユメちゃんの「お世話係」の呪縛にとらわれてしまいました。

 さらには、マキちゃんが「お世話係」として優秀だった事も災いとなりました。優秀だったことで「ユメちゃんのお世話係」=「マキちゃん」と先生たちが思ってしまったのです。
 そのため、5年連続でユメちゃんとマキちゃんは同じクラスにされてしまったのです。

「私とユメちゃんは5年間、同じクラスです。」
「偶然ではないと思います。」
「多分、先生たちが同じクラスにしたんだと思います。」
「そして、毎年、担任の先生からこう言われてきました。」

『ユメちゃんをお願いね!』

9.お願いされなかったのは今年が初めてです!

 勝手にユメちゃんの「お世話係」に任命されたマキちゃんは様々な葛藤に悩まされたことでしょう。

「先生に頼まれた。」
「ユキちゃんの面倒を見なければ。」
「他の子とも遊びたい!」
「ユキちゃんが言うことを聞いてくれない!」
「でも、先生に頼まれたし・・・。」
「ユキちゃんは嫌いじゃないけど・・・。」

 小学生がこのような葛藤に悩んでしまったのは、小学校の先生が勝手にマキちゃんを「お世話係」にしてしまったからではないでしょうか?

「担任の先生から『お願い』されなかったのは今年が初めてです!」
「そして、『やらなくていいよ!』と言ってくれたのも先生が初めてです。」
「この言葉で肩の荷がおりたような気がしました。」
「そうしたら、自然と涙が出てきてしまって・・・。」
「先生を困らせてしまってすみませんでした!」

 私はマキちゃんに出来る範囲で「お願い」をします。

「ユメちゃんに声をかけてくれるのは助かるよ!」
「これからも『できる範囲』で声をかけてあげて!」
「でも、無理するのはやめてね!」
「マキちゃんが自分の時間を無駄にする必要はないからね!」
「1回、声をかけても、聞いてくれない時は放っておいていいよ!」
「先生がユメちゃんに活を入れるから!(笑)」

10.できる範囲でお世話をしてくれたマキちゃん

 マキちゃんは、その後もユメちゃんへの声かけを続けてくれました。私は定期的にマキちゃんに声をかけます。

「ユメちゃんの事を放っておいていいからね!」

すると、マキちゃんは次のように答えます。

「先生!」
「私は出来る範囲でやっているので大丈夫です!」
「授業に遅れそうになったときは、先に行くようにしています!」
「他の友だちと話したいときはソッチに行っています。」
「だから心配しないでいいですよ!」

 マキちゃんは自分のできる範囲で「お世話」をしてくれたのです。「お願いね!」の言葉がなくても、「お世話係」でなくても、優しくて真面目なマキちゃんは、友だちであるユキちゃんの面倒を「できる範囲」で見てくれたのです。

11.ユメちゃんママからマキちゃんへの感謝の言葉!

 夏休みに入り三者面談が行われました。私は意図的に「マキちゃんの面談」の前を「ユメちゃん面談」にしました。ユメちゃんの親から、マキちゃんに対して何か意見があるかもしれないと考えたからです。

 もちろん、「マキちゃんにお世話係をお願いしたい!」と言われても「NO!」と答えるつもりでした。

 しかし、ユメちゃんの三者面談は私の予想に反するものでした。面談でユメちゃんのお母さんは「マキちゃんへの感謝」の言葉を何度も何度も口にしたのです。もちろん、お母さんはユメちゃんの特性も理解しています。だからこそ、マキちゃんへの感謝が強かったようです。

「マキちゃんには本当に感謝しています。」
「小学校3年生の時から娘に声をかけてくれて。」
「集中すると無視する悪いクセがあるのに・・・。」
「マキちゃんは、それを気にせず声をかけてくれます。」
「本当にマキちゃんには感謝の言葉しかありません。」

 私はユメちゃんのお母さんに、感謝の気持ちを、直接、マキちゃんに伝えてもらいたい旨を伝えます。ただ、マキちゃんは「ユキちゃん専用ではない」こと「お世話係」でもないことは伝えました。当然、担任の私が責任をもって支援や対応を行う事も伝えます。

 マキちゃんのお母さんは、授業参観のたびにマキちゃんの所に行き、直接、お礼を言っていました。誕生日やクリスマス、バレンタインデーには、ユキちゃんとお母さんでプレゼントを買ったり、チョコレートをつくったりしてマキちゃんに渡します。

「そこまで感謝しなくてもいいのに。」
「私は普通の事をしているだけです!」
「これからもユキちゃんとは友だちとして仲良くしたいです!」

 照れながら言うマキちゃんは、とても輝いていました。

12.チーム学校としてユメちゃんへの支援を開始!

 ユメちゃんが物事に集中することは良いことです。しかし、周りの事を無視したり、予定を破ったりするのは認められません。なぜなら、学校は勉強だけでなく集団生活を学ぶ場でもあるからです。

 私はユメちゃんが集中して周りが見えなくなったときに行う対応や声かけを決めました。そして、その対応や声かけを、各教科の先生にも伝え、行ってもらうことにしました。

 もちろん、ユキちゃんがスグに「切り替え」られるようになったわけではありません。しかし、全ての先生が同じ対応を取ったことで、2学期には先生や仲間が声をかけると、スグに「切り替え」が出来るようになりました。

 私はユメちゃんの友人関係の改善にも力を入れました。小学校の4年間は「ユメちゃん」=「マキちゃん」という状態だったのを改善したいと考えたのです。

 クラスでは「エンカウンター」や「ライフスキル」など、クラスの人間関係を良好にするプログラムを定期的に行います。また、事前にユメちゃんには行うプログラムについて説明をし、どのように取り組むかを伝えました。

 最初はぎこちなかったユメちゃんでしたが、回数を重ねるごとに自然とプログラムを行う事ができるようになりました。また、プログラムをキッカケにマキちゃん以外の友だちとも話すことができるようになりました。

 これにより、マキちゃん以外の友だちも声をかけてくれるようになりました。マキちゃん以外の友だちと話すことになれたユメちゃんは、どんどん明るくなっていきました。

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「お世話係」として7年連続で同じクラス

ヤンキー系の子の「お世話係」として7年間同じクラスに!?

1.イライラしているときは「お世話係のモモちゃん」にお任せ!?

 私は「お世話係」と思われる子に「お世話をしなくていいよ!」と言ったことが何度もあります。これに対して、全ての子どもが私にお礼を言ってきました。

 クラスの子どもの支援は教師の仕事なのですからお礼を言われる筋合いはないのですが・・・。

 ヤンキー系のホノと言う子がいました。小学校では「ホノ」=「モモちゃん」と決まっていたそうです。1学年2クラスの小規模校だったためか、ホノとモモちゃんは7年間同じクラスでした。

 ホノが問題を起こしイライラしているときはモモちゃんの出番です。モモちゃんがホノに声をかけ、ホノを落ちつかせてくれるようです。

 私はモモちゃんに「ホノのお世話をしなくていいよ!」と声をかけました。しかし、優しくて真面目なモモちゃんは「大丈夫です!」と言ってお世話を続けます。

 2人が中学2年生になるとき、私はホノとモモちゃんを同じクラスにするか悩みました。その理由は次のように思ったからです。

「もしかしたら、モモちゃんにとってホノは必要な存在なのかもしれない!」

 ただ、ホノやモモちゃんの日々の様子を観察したり、親御さんの言葉を聞いたりして、最終的にはホノとモモちゃんを別のクラスにしたのです。

2.中2では別のクラス!お世話係から解放されたモモちゃんは?

 新中学2年生の初日。新クラスの名簿を見たモモちゃんは、スグに私の所にきました。

「先生、ありがとうございます。」

 ホノと別のクラスになったモモちゃんは、様々な場面で活躍するようになりました。テストでは常にトップ3に入るようになりましたし、部活では個人戦で準優勝を勝ち取りました。学級委員や生徒会にもチャレンジしていました。
 この様子を見た私は、中学3年生でもホノとモモちゃんを別のクラスにしました。ちなみにホノは3年間、私のクラスです!(笑)

 卒業した教え子からの突然の電話の内容は?進学の相談?進路の相談?恋愛の相談?不倫の相談?悲しい相談?ホノからきた連絡は○○の相談だった・・・。

 卒業式の後、モモちゃんのお母さんが私の所にきて手紙を下さいました。

「先生のおかげでモモは元気を取り戻しました。」
「中学2年生でホノちゃんと別のクラスになってからは、明らかに笑顔が増えました。」
「モモはホノちゃんの悪口を言ったことがありません。」
「それでも、ホノちゃんのお世話係は大きな負担になっていたと思います。」
「先生がモモの気持ちに気づいて下さって本当に良かったです。」
「ホノちゃんと別のクラスになったことで、モモは救われたと思います。」
「ホノちゃんには申し訳ありませんが、モモの親としては別のクラスにしていただいた事は感謝しかありません。」
「本当に本当にありがとうございました。」

3.「お世話係」は必要?頼まれた子どもの気持ちを考えて!

 不登校や発達障害の子の数は増える一方です。そんな中、先生たちは「多忙」を理由に「お世話係」をつくってしまいます。
 本来は不登校の子どもや発達障害の子どもの支援は教員の仕事なのに・・・。

 お世話係になる子どもは「真面目」「優しい」「我慢強い」子がほとんどです。そんな子どもたちが自分から友だちを「フォロー(お世話?)」するのは良い事です。仲間がお互いに助け合ったり、苦手な部分をフォローし合ったりすることは社会に出ても必要なことだからです。

 しかし、「真面目」「優しい」「我慢強い」子どもたちの善意を利用して、勝手に「お世話係」を任命するのは良いことなのでしょうか?
 もちろん、子どもたちが手伝ってくれれば教師は楽(らく)になるでしょう。ただ、「手伝い」を「係」として強制するのはおかしいのではないでしょうか?

4.職員会議でお世話係廃止を訴えるも・・・

 私は生徒指導主事として「お世話係の子ども」について職員会議で話をしたことがあります。

「気になる子や手のかかる子の個別の支援は教師の仕事です!」
「特定の子に『お世話係』を頼むのはおかしいのではないでしょうか?」
「子どもの善意を利用して『お世話係』を作るのはやめましょう。」
「友達の『お世話』を頼まれた子の気持ちも考えてあげて下さい!」

 私の発言に対して、このような意見が返ってきました。

「発達障害を持っている子をクラスが受け入れるのは当然だと思います!」
「仲間の特性を理解し、受け入れ、フォローするのは当たり前ではないですか?」
「クラスの仲間で助け合うことが間違っているのですか?」
「西川先生の考えは理想論だと思います。現実をみて下さい!」
「先生たちは忙しいので1人ひとりに細かい対応はできないと思います。」
「お世話係に選ばれて喜ぶ子もいるのではないですか?」
「ムリにお世話係を無くす必要はないでしょう。」など

5.お世話するのは「当たり前」じゃない!

 もちろん、私の意見に賛成して職員会議終了後に声をかけてくれた先生もいます。個別の支援や対応の具体的なアドバイスを求めてきた先生もいます。
 しかし、ほとんどの先生が「多忙」を理由に「お世話係」を肯定していました。

 子どもたちが、善意で自ら仲間のお世話をすることを否定しているわけではありません。前述したとおり「仲間同士で助け合う」ことは大切であると思っているからです。私が問題としているのは、教師が勝手に「お世話係」を任命してしまうことなのです。

 クラスの子どもの支援は教師の仕事です。子どもたちが善意で手伝ってくれたのであれば、教師は「ありがとう!」とお礼を言わなければなりません。なぜなら、教師の仕事を手伝ってくれたからです。
 お礼を言われた子どもは、また、手伝ってくれるかもしれません。当然ですが、そのときも「ありがとう」とお礼を言うのが普通ではないでしょうか?
 
 クラス替えの時に「お世話係」を作る先生も、最初は「お願い」をしていなかったのかもしれません。もしかしたら、気になる子に対して「どのように支援をすればいいのか?」と悩んでいたのかもしれません。

 そんな先生を見たクラスの子どもたちは、善意から先生を手伝ってくれたのでしょう。先生も最初はお礼を言っていたのでしょう。しかし、「手伝ってくれる」状態が続いたことで、先生はそれを「当たり前」と思ってしまったのかもしれません。

6.3年間かけて説得!進路を変えさえた!

「先生!私、中学校の先生になりたい!」
「子どもの気持ちが分かる先生になるんだ!」

 モモちゃんとユメちゃんは、このように言っていました。「西川先生みたいな先生になりたい!」モモちゃんとユメちゃん以外にも、このように言ってくれた子が何人もいます。この子たちは総じて成績の良い子たちです。

 この子たちは、私が友達関係をよくするため、意図的に言った言葉や、わざとおこなった行動に気づいていました。そして、それを指摘してきました。

「先生!あのとき怒ったのわざとでしょ!」
「AちゃんとBちゃんが仲直りしやすくするためでしょ!」

 周りの事を冷静にみることができ、さらには、優しく、真面目で、ガンバリ屋の子どもたちです。そんな子たちが「先生になりたい!」と言ってくれるのは教師冥利につきると言うものです。

 そんなモモちゃんやユメちゃん、他の子たちに私は自分の気持ちをハッキリ伝えました。

「いいか!」
「先生にだけは絶対になるな!」
「君にはもっと明るい未来が待っている!」
「絶対に先生はダメだぞ!」
「分かったなっ!!!!!」

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新クラスが会議で決めたクラスと違う!

発表直前に黙ってメンバーを入れ替えた校長と学年主任

1.クラス替えの最終決定権は校長!実際は学年主任!

 毎年、3学期になると「学級編成会議」が行われます。そこでは「学校の裏話~クラス替え編①~」で紹介した方法で「クラス替え」が行われます。

 「新クラス」が決まると、校長や教頭、教務主任(主幹教諭)、学年主任で「新担任」を決定します。

 「新クラス」や「新担任」の最終決定権は校長にあります。しかし、現実的には学年主任が現場を取り仕切っているため、学年主任の意見通りになることがほとんどです。
 そのため、「学級編成会議」で決まった「新クラス」に対して校長が意見を言うことは、ほとんどないのが現状です。

 どの先生がどのクラスの担任になるのかを決めるのも学年主任です。担任の力量などを考慮して「新担任」と「新クラス」をマッチングしていくのです。
 また、新規採用の先生や若手の先生などが「新担任」として学年に入って来る場合は「新クラス」のメンバーを入れ替えることもあります。

 具体的には新規採用の先生や若手の先生のクラスにいる「やんちゃな子」や「トラブルが多い子」「モンスターペアレントの子」などをベテランの先生のクラスに移動するのです。

 ただ、このように「新クラス」のメンバーを入れ替える場合は、事前に学年主任が「負担増の先生(この場合はベテランの先生)」に相談やお願いをするのが通例です。

2.小学校を学級崩壊させた男ボスと女ボスの担任に!

 ある学校に生徒指導主事として赴任をしました。「荒れている」と評判の学校です。その学校に赴任した年、私は「生徒指導主事」「1年副主任」「1年担任」をすることになりました。

 新1年生は合計4クラスです。A小学校から約120人、B小学校から約40人の子どもが入学してきます。
 ただ、A小学校では3クラスのうち2クラスが「学級崩壊」となっていました。A小学校の子どもたちは小学校の先生にことごとく反発したようです。

 その中にはクラスを学級崩壊に導いたとされる5人(A、B、C、D、E)の子どもがいます。特にAは「男子のボス」でBは「女子のボス」でした。C、D、Eはそれぞれ、AとBの指示に従い暴れていたそうです。

 学年主任からの要請により、私は「男子のボスA」と「女子のボスB」のいる3組の担任となりました。「男子C」と「女子D」は1組、「女子E」は4組となりました。2組に問題児を入れなかったのは、2組の担任が採用2年目の若い先生だったからです。

 AとBはとてもエネルギーのある子でした。学級崩壊のボスになっただけに人を動かすのも上手です。
 私はそのエネルギーとリーダーの資質を良い方向で活かせるように支援をします。その結果、この2人は学級崩壊のボスではなく、学級を良い方向に導くリーダーとなってくれました。

3.学級崩壊させた他のメンバーはどうなった?

 残りの3人はどうでしょう?「男子C」は1組で「悪い頭角」を現してしまいました。常に担任に対して反抗的な態度をとります。注意をされると反抗します。担任も注意をするのですが、どうやら論破されてしまっていたようです。

「それは、おかしいと思います!」
「先生だって帰りの会に遅れてくることが多いですよね!」
「朝読書の時も仕事をしているじゃないですか!」
「自分が出来てないことをヤレというのはおかしくないですか?」

『先生と生徒は違います!』
『私も中学生の時はやっていました!』
『あなたもチャンとしなさい!』

「大人でも子どもでもダメなことはダメだと思います!」
「言ってることに納得できません。」

 同じクラスの「女子D」は「男子C」と一緒になって担任に反抗していました。小学校のときはそこまで目立って反抗するタイプではなかったようですが、「男子C」の影響と担任の対応のミスにより「女子D」も「悪い頭角」を表してしまったようです。

 「女子E」は「男子C」や「女子D」ほどではありませんが、小学校の時と同様に授業中におしゃべりをしたり、別の事をしたりしていました。ただ、1人で反抗する勇気はないため一緒に反抗する仲間をつくったようです。

 それでも「小学校の頃に比べれば担任への反抗は少なくなった」とクラスの子どもは言っていました。

4.学級崩壊させた5人をどう分ける?

 小学校で学級崩壊となってしまった学年ですが、中学1年生では比較的「良い状態」の学年になりました。ただ、1組だけは「悪い状態」」です。学級崩壊までは言っていませんが、担任に対して反抗的な態度が多く見られます。

 中学2年の「クラス替え」では、小学校を学級崩壊させた5人をどのように分けるのかが話題となりました。

(1組担任)
「私はCとDの担任はしたくありません!」
「絶対に別のクラスにして下さい!」
「逆にAとBは私のクラスにしてもいいですよ!」
「この2人は良い子のようですし!」

(2組担任)
「私も出来ればEを別のクラスにしてもらいたいです。」
「私もAかBなら担任をしてもいいです!」

(学年主任)
「AとBは元ボスですので引き続き西川先生(私)にお願いします。」
「また、来年度は新規採用の先生がこの学年に来きます。」
「ですから、Cは西川先生、Eは○○先生(1組担任)、Dは□□先生(2組担任)にお願いします。」

5.話し合いの結果、主犯3人を担任することに!

 私はクラス替えにおいて特定の生徒を拒否したことはありません。当然、この時も1組のボスとなった「男子C」を受け入れる事に反対はしませんでした。逆に、授業で「男子C」を見ていた私は「Cをどのような形で活かそう?」と考えていた程です。

 数回の学級編成会議を経て、最終的には5人を下記のように分担することになりました。

1組(元1組担任)   :E(元2組の小ボス?)
2組(元2組担任)   :D(元1組の小ボス?)
3組(私のクラス)   :A(元男ボス)B(元女ボス)C(元1組の小ボス)
4組(新規採用の先生) :なし

6.新クラス発表!「えっ?主犯格の4人が同じクラス?

 4月になりました。新中学2年生、最初の学年会議で「新担任」と「新クラス」の名簿が学年主任から配られます。

「クラス名簿をつくりました!」
「気になった所は私の考えで少し変えさせてもらいました!」
「コレが最終決定の新クラスです!」

 渡された名簿を見た私は声を出してしまいました。

「えっ?これが新クラスですか?」

 渡された名簿を見ると、私のクラスにいたはずの「A」がいません。さらには私のクラスに「B」「C」「D」「E」がいます。編成会議のときは「A」「B」「C」の担任だったはずです。

7.新規採用のクラスに主犯格のAが!?

 「A」と「B」は1年生のときに私のクラスで学級委員をしてくれました。最初は不安もありましたが上手に支援をすることで、1年後には頼りになるリーダーになってくれました。
 特に「A」は1年生の最後に「2年生では学年委員か生徒会をやりたい!」と言うほどに急成長しています。そんな「A」がいつの間にか別のクラスに行ってしまったのです。

 新しい名簿には、小学校を学級崩壊させた5人が下記のように分配されていました。

1組(元1組の先生)  :0人
2組(元2組の先生)  :0人
3組(私のクラス)   :B,C、D、E
4組(新規採用の先生) :A

 「A」の事が大好きで「D」や「E」が嫌いなわけではありません。とにかく驚いたのは「学級編成会議」で決まった5人の配置が大きく変わったことです。私の所から「A」が旅だったのは良いとして、なぜ、「A」が新規採用の先生のクラスに行ったのかが分かりません。

 「A」はリーダーの楽しみに目覚め、学年委員や生徒会を目指していたことに間違いはありません。しかし、元学級崩壊の男ボスである過去もあります。そんな「A」を新規採用の先生のクラスにして大丈夫なのでしょうか?

8.コッソリと主犯格を別のクラスに変えた理由

 少しして他の学年主任から「クラス替え」の真相を教えてもらいました。私のクラスに小学校を学級崩壊にした5人のうち「4人」が、新規採用の先生のクラスに「1人」が、1組と2組は「0人」となった理由です。

 学級編成会議で自分の意見が通らなかった1組の担任は校長に直談判します。

「私には子どもが2人います!だから担任を外して下さい!」
「もし、外すことができないのであれば問題を起こす可能性のあるEを私のクラスにしないで下さい!」
「学年主任に相談をしましたが『新規採用の先生がくるから』と言って、話を聞いてくれません!」
「もし、Eが私のクラスで問題行動を起こしたとしても、私は対応しません。」
「それでも良いんですね!」

 波風を立てなくなかった校長は学年主任に相談をします。そして、「E」を私のクラスに入れる事を2人で決めたようです。

 数日後、2組の担任も校長室に行き直談判したそうです。

「○○先生(1組担任)に聞きました!」
「私には小さい子どもがいます!そのため残業も出来ませんし、放課後に問題行動の対応もできません!」
「EよりもDのほうが問題が多いんですよ!だから、Dを別のクラスにして下さい!」

 1組の担任の意見を聞いて、2組の担任の意見を拒否する事が出来なかったのでしょう。校長と学年主任は相談をして「D」を私のクラスに入れることにしたそうです。

 しかし、5人全員を私のクラスに入れる事には抵抗があったのでしょう。学年主任は5人の中で落ち着いている「A」と「B」のどちらかを新規採用教員のクラスに入れることを決めたそうです。

 最終的に新規採用の先生が男性だったこと、男子指導と女子指導では女子指導のほうが難しいことから、「A」を新規採用教員のクラスに入れたそうです。

9.学級崩壊させた主犯格が4人もいる元気なクラス

 小学校を学級閉鎖にした5人のうち4人がいるクラスに周りの子どもだけでなく、「B」「C」「D」「E」も驚いていました。担任の私が驚いたのです。子どもたちが驚くのも当然でしょう。

 しかし、このクラスは楽しいものとなりました。

 私は「B」「C」「D」「E」を様々なことにチャレンジさせます。もちろん他のクラスメイトたちにも活躍する場を提供していきました。

 私は週に2回ほど学級通信を発行しています。そこでは、クラスの子どものガンバリ、面白エピソード、子どもたちのコラムなどを掲載していました。
 もちろん、「B」「C」「D」「E」のガンバりや面白エピソードも学級通信に載ります。

 小学校の頃は、叱られてばかりで褒められることが少なかった「B」「C」「D」「E」は、学級通信に載ることをとても喜んでいました。

 「ガンバる」→「褒められる」→「学級通信に載る」→「嬉しい」→「ガンバる」→「褒められる」→「学級通信に載る」→「嬉しい」→「ガンバる」→・・・・・・

 このような良い循環を作ることができたため、「B」「C」「D」「E」は前向きに学校生活を送ってくれたのです。

10.自分たちが信用されて同じクラスになったと思っていた!

 5年後の成人式では「D」と「E」から、おもしろい話を聞く事が出来ました。

「中1のとき、Bが先生と話している所を見てビックリしたよね~!」
「そうそう、あのBが先生と笑顔で話しているのは本当にビックリした!」
「Bは小学校のときに担任の悪口ばかり言ってたもんね~!」
「担任にウザいとか平気でいってたよね~!」
「大人は信じられないが口癖だったもんね~!」
「そんなAが先生と話しているんだよ!それも笑顔で!」
「マジ、ビックリしたよ!」

 何があったのかは知りませんが小学校の時の「女子のボスB」は担任に対して大きな不信感を持っていたようです。それを知っている「D」と「E」だからこそ、「B」が私と笑顔で話をしている姿を見ただけで「B」の変化に気づいたようです。

「2年の時のクラス発表はビックリしたよね~!」
「あれもスゴかったよね!だって、A以外の全員が同じクラスだったんだから!」
「クラス発表の掲示を見て西川先生が担任ってすぐ分かったよ!」
「でも、学年主任も思い切ったことをしたよね!」
「私たちを信用して同じクラスにしてくれたのかな?」

 私は「4人が同じクラスになった」真実を伝えていません。

 主任が「信用」してくれたわけではなく、1組担任と2組担任が「担任をしたくない」と校長に訴えたことを・・・・。

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離任式に新クラスを発表する理由は?

1.子どものため?教師が楽(らく)するため?

2.4月の登校日で新クラス発表だったのに・・・

 春休みが終わり学校に登校すると昇降口には人だかりができています。

 人だかりの先には「新しいクラス」の名簿が張り出されていました。

「やった~!」
「Aくんと同じクラスだ!」
「Bちゃん一緒だね~!」
「CさんもDさんもいる!」

 喜びの声と同時に悲しい思いをしている人もいるでしょう。

『Eさんと別のクラスになっちゃった・・・。』
『同じクラスにFくんがいる・・・。』
『えっ?』
『同じ部活の人が1人もいない!』
『誰のグループに入ればいいんだろう・・・。』

3.3月にクラスを発表するのは作業効率のため!

 ただ、最近は3月の終わりの離任式にクラスを発表する学校が増えています。これには理由があります。

・離任式の日に新しいクラスに机を移動させることができる。
・春休み中に新入生のクラス準備ができる。
・(先生たちが)春休み中に新年度の準備ができる。
・保護者が名札やノートなどに記名することができる。など

 ある学校で生徒指導主事をしていたとき、「離任式に新クラスを発表する」理由を校長に聞いてみました。

「不登校や不登校傾向の子に早くクラスの仲間を伝えてあげたい!」
「新クラスを知ることができれば、4月から安心して登校できるようになる!」

 確かに新クラスのメンバーを早く知ることで安心できる子もいるでしょう。ただ、逆に不安が大きくなり登校できなくなる子どもがいるのも現実です。

 この校長は「不登校の子どものため」と言っていましたが、私の経験では「学校の作業効率を優先するため」という方がしっくりきます。

4.少しでも良いクラス編成をしたい!

 私は「新クラスは4月に発表する方が良い」と考えています。なぜなら、春休みの部活動などで「子どもたちの人間関係」の最終チェックをしたいと思っているからです。

「私に見えていた人間関係は正しいのか?」
「A先生が言っていた人間関係は本当か?」
「BとCは一緒でいいのか?」
「Dが活きるためにはEと同じクラスの方が良いのでは?」

 そして、次のようにも思っていました。

「新学期の人間関係が少しでも円滑になるようにギリギリまで確認をしたい。」
「全ての子どもが楽しく学校生活を送れるようにギリギリまで人間関係を考えたい。」
「我慢をしすぎる子がいなくなるように、ギリギリまで相性を調べたい。」

5.優しい子の善意を利用する教師

 ある担任がクラスの子どもについて次のように言っていました。

「AはBと同じクラスにしてほしい!」
「なぜならAはBの面倒を見てくれるから!(お世話係)」
「Aさんに任せておけばBさんが1人になることはない!」

 この担任はAさんの気持ちを全く考えず、発達障害のグレーゾーンのBさんの事だけを考えいました。Aさんの優しい気持ちを利用してBさんのお世話をさせようとしていたのです。

 ※ 担任の先生に悪気はなかったようですが、それも問題だと思います。

→優しい子を「お世話係」にしないで!クラス替えの仕方⑦

6.人間関係の表面しか見ていない教師

 他の担任は次のように言っていました。

「CはDと同じ部活で2人ともレギュラーだ!」
「2人を一緒にすれば部活の良い関係がクラスでも発揮される!」
「他の子にも良い友人関係を広げてくれる!」

 しかし、部活の様子をみていると、どうも担任の言っていることが間違っているような気がします。私は顧問の先生(他学年)にCとDの関係を聞きました。

「CとDは良く言えばライバルです。」
「ただ、2人とも我が強いので対立してしまうときがあります。」
「実際、2学期の部活ではどちらが部長になるかで揉めました。」
「試合に勝つためには協力をしますが、練習中の雰囲気は良くないんです。」

 若い顧問の先生は私に次のように言いました。

「可能であれば別のクラスにしてもらった方が・・・。」
「同じクラスでは対抗心が出てしまうと思います。」
「それが部活にも影響しそうで怖いです。」

 私は「AとB」「CとD」について主任や担任に相談をしました。最終的には、春休みに小会議を行い「AとB」「CとD」は別のクラスにすることにしたのです。

→「お世話係」として7年連続で同じクラス!クラス替え⑧

7.新担任との相性は大丈夫?

 新担任についてもギリギリまで考えて決めたいと思っていました。特に赴任したばかりの先生に担任をお願いするときは慎重に相性を見極めなければなりません。

 過去に別の学校で一緒に働いた事がある先生であれば、その先生の性格やキャラが分かっています。当然、その先生に合った「クラス」や「子ども」をマッチングすることが出来ます。

 しかし、初めて一緒に働く先生の性格やキャラは分かりません。そのため、たった数日となりますが、その先生の性格やキャラを見極め、少しでも合った「クラス」や「子ども」をマッチングするように意識をしていました。

 もちろん、ギリギリまで考えたからと言って、全てが完璧になるわけではありません。それでも、少しでも多く考えることで「子どもたちが楽しい」と思えるクラスが出来る確率を上げたかったのです。

8.子どもたちの為だったんじゃなかったの?

 私は生徒指導主事として職員会議において上記の考えを伝えてきました。しかし、「少しでも」という私の考えに賛同する先生は一握りです。(25年の教員生活で数人です。)

 私が職員会議で提案をすると・・・。

「そんなに細かく考えても変わらないよ!」
「ギリギリに変更したら名簿を作り直さなきゃならないでしょ!」
(名簿の作り直しなど、たかだか10分程度で終わるのですが・・・。)
「誰が担任をしても一緒だよ!」
「不登校や問題行動は親や本人のせいなんだから!」
「自分の思い通りじゃなくても我慢させなきゃ!」

 また、次のように言われたこともあります。

「事務作業が遅れて先生たちの仕事が進まない!」
「4月に入ってからやることが増えてしまう!」
「教員の多忙につながってしまう!」
「完璧なんてムリなんだから割り切らなきゃ!」

 離任式で発表するのは「子どもたちのため」と言っていたのに・・・。

9.「仕事の効率」or「子どもの充実」

 仕事が効率的に進むように制度や慣習を見直すことはとても大切です。ただ、クラス編成と担任決定には「子どもの1年」がかかっています。

 先生たちは「教育のプロ」なのですから、どのようなクラスも「良いクラス」にしなければならないのですが・・・。
 そこまで指導力(支援力)のある先生は少ないのが現状です。(指導力は無くても気持ちがあれば良いのですが・・・。)

 結果的に先生たちは「仕事の効率」と「子どもの1年」を比べた場合、「仕事の効率」を優先してしまいます。

 学校は子どもたちの成長を促す場です。そのためには「安心」「安全」「居場所」が必須なのですが・・・。

「毎日、楽しく過ごせるクラスにしよう!」
「子どもの得意や良さが活きるクラスにしよう!」
「学校に行くのが楽しいと思えるクラスにしよう!」
「1人ひとりの居場所があるクラスにしよう!」など

 これらの目標を実現するためには「何が必要なのか?」を常に考えていただきたいのですが・・・。

 これが「教育のプロ」である先生の仕事だと思うのですが・・・。

10.4月は1年で最重要月間!

 4月は1年で最も大切な時期です。子どもたちも心機一転ガンバろうと考えています。だからこそ、教師も最も力を入れなければならない時期なのです。

 実際、私は中学1年生の担任をする4月を最重要と考えて支援や指導を行ってきました。中学1年の4月に「正しい対応」や「正しい支援」を行うと、子どもたちの「自治的活動」が活性化するからです。

 また、1~3学期で考えると、やはり「1学期」が最も重要な時期となります。

11.事前支援による未然防止の観点を!

 これは、事前支援による「未然防止」の考えからきています。

 普通の先生たちは子どもたちが「問題を起こした」後に対応や指導を行います。しかし、「未然防止」では次のように考えます。

「子どもたちが問題を起こさないように事前支援に力を入れよう!」

 もし、あなたが「子どもの問題行動」に10時間を費やしたのであれば、同じ10時間を「未然防止」に使ってみてはどうでしょう?

 同じ10時間でも、子どもたちを「怒る」指導より、子どもたちを「褒める」支援の方が良いと思いませんか?

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