小学校から中学校へ異動した先生が学校を「荒れ」させた!①

小学校の先生と中学校の先生の違いは?

1.5才先輩の小学校の先生と知り合う

ある宿泊研修で5才年上の島田先生(仮名)と言う先生と同じ部屋になりました。

島田先生は小学校勤務一筋の先生で、当時(45才)は小学校5年生の学年主任と担任を兼務していました

研修終了後、私と島田先生は夕食を食べながら「教育」や「子ども」「教科指導」などの話をしました。

2時間ほど話をしていると2人の間には「共通の趣味」があることも分かりました。

趣味の話で盛り上がった私たちは宿泊研修が終わった後も連絡を取り合うようになります。

勤務先が隣の市だったこともあり、その後も年に数回ですが一緒に飲みに行くようになったのです。

2.小中交流異動で中学校勤務になった島田先生!

初めて会ってから2年後の冬。

一緒に飲んでいると、島田先生が私に次のような話をしてきました。

「昨日、校長に呼ばれたんだ!」
「どうやら来年はA中学校勤務になるらしい!」
「希望は出していないんだけど・・・・。」
「小中の交流異動で行かなければならないらしいんだ。」
「さすがに担任ではなく新1年生の主任にしてくれるらしい!」
「でも、中学は初めてだから心配なんだよね!」

私は「生徒指導主事の研修」や「部活の大会」などからA中学校の印象を伝えます。

「A中学校の悪い噂は全く聞きませんよ!
「落ち着いている学校だと思います!」
「部活の大会でも礼儀正しい印象です。」
「強い印象はありませんが、爽やかな感じがします。」
「島田先生は初めての中学校勤務なんですよね?」
「それを分かっているから、教育委員会も落ち着いた学校を異動先にしたんじゃないですか?」

3.中学生を怖がる小学校の先生たち

島田先生は中学校の印象を次のように言います。

「小学校でも6年生って怖いじゃない!」
「下手に怒ったりすると反発したり無視したりする子もいるし!」
「そんな6年生よりも、中学生は怖いでしょ!」
「だから、心配なんだよね~。」
「言うことを聞いてくれるのかな~!」
「怖いな~。」

小学校6年生や中学生を怖いと言うのは「小学校の先生」あるあるです。

小学1年生や2年生の担任を長く務めている先生たちは尚更でしょう。

当然ですが、中学校勤務一筋の私は中学生を怖いと思ったことはありません。

逆に中学1年生であれば「怖い」と言うよりは「カワイイ」とさえ感じます。

そんな私にしてみれば小学校低学年の子供たちの「私を見て!」「僕!僕!」の方が怖いと感じてしまいます。

4.中学校の先生の生徒指導って細かいよね!?

島田先生がA中学校に勤務してから4ヶ月が経ちました。

ちょうど、夏休みに入ったこともあり、私と島田先生は飲みに行く約束をしました。

半年ぶりに会った私は島田先生に中学校勤務4ヶ月の感想を聞きます。

「みんな良い子で良かったよ~。」
「部活で会う2年生や3年生は怖いけど1年生は大丈夫だった!」
「授業も1年生だけだから何とかなってるし!」

どうやら、春休みの心配は杞憂に終わったようです。

ただ、後から思い出すと、島田先生は次のような「怪しい発言」もしていました。

「中学校の先生の生徒指導って細かいよね!」
「服装や提出物にうるさいところがあるよね!」

5.問題行動やいじめ、不登校が多い学年に!

その年の冬休みは島田先生と一緒に飲む機会を作れませんでした。

春休みも同様です。

私が島田先生と久しぶりに会うことが出来たのは、前回の飲み会から、ちょうど1年後の夏休みでした。

島田先生がA中学校に勤務して1年4ヶ月が経った頃です。

1年前と同様に私は学年の様子を聞いてみます。

すると、島田先生は暗い表情となりながらも学年の話をしてくれました。

「子供たちが言うことを聞いてくれない。」
「クラスのルールや学校のルールを守らない。」
「朝の会や授業の開始時間も守らなくて・・・。」
「提出物を出さない子も多いし、忘れ物も多くて・・・。」
「いじめやケンカなどの問題行動も増えてしまって・・・。」
「真面目で繊細の子が何人も不登校になってしまっているんだ。」

6.中1の後半から学年崩壊に・・・

島田先生は続けます。

「1年前は言うことを聞いてくれていたのに・・・。」
「2学期くらいから少しずつ言うことを聞かなくなって・・・。」
「宿題の提出率は下がる一方で・・・。」
「1年の3学期にはルールを守らない子が多くなって・・・。」
「いじめやケンカなどの問題行動が増えたのも1年の3学期からなんだ。」

最後に島田先生は次のように言いました。

「文句を言ってくる親も多いしな~。」
「逆に子供の面倒(宿題など)を見ない親も多くて。」
「やっぱり中学生って怖いな~。」
「はぁ~。」

この話を聞いたとき、私は1年前に島田先生が言っていた言葉を思い出したのです。

「中学校の先生の生徒指導って細かいよね!」
「服装や提出物にうるさいところがあるよね!」

7.共通の指導ができないと学校は荒れる!

「荒れている学校」では、先生たちの指導力不足が目につきます。

例えば、A先生はクラスや学年の子どもたちに「時間を守る」ように言います。

しかし、隣のB先生は「時間を守る」を大切に思っていません。

そのため、B先生は子どもたちが授業に遅れてきても何も言いません。

このように先生たちの指導がバラバラになってしまうと、子どもたちは先生によって態度を変えるようになります。

小学校のように学級担任制(担任がほとんどの授業を担当する)の場合は学年全体が荒れることはあまりありません。

反面、「学級崩壊クラス」と「落ち着いたクラス」の差がハッキリと出ることがあります。

逆に、中学校のように教科担任制の場合は少しずつ学年全体が荒れていきます。

このように、教員が自分ひとりの考えで「指導」を緩めてしまうことで、学年や学校が「荒れた状態」となってしまうのです。

8.学校を荒れさせない方法は?

学校や学年が「荒れない」ようにするにはどうすれば良いのでしょうか?

答えは簡単で「学校のルール」や「職員会議で決めた事」「学年の方針」などを徹底することです。

例えば、時間を守らない子どもがいた場合は、全ての教師が同じように注意をしなければなりません。

もちろん、教師によって注意の度合いが変わるのは問題ありません。

しかし、学校としてのルールが決まっているにも関わらず・・・。

「何度、注意をしても時間を守らない子がいますよね。」
「その子には、注意をする指導法が合っていないんだと思います。」
「時間を守らなかった場合は、気持ちに寄り添って話を聞くことが大切だと思います。」

このように仰る先生方は少なくないのが現状です。

ただ、このように仰る先生方は、粘り強く話を聞いたり、諭したりすることはありません。

最初の数回だけ、話を聞いたり、諭したりして指導を終わりにしてしまうのです。

※ 大切なのは4月の最初にルールを徹底したり、守れていることを褒めたりすることなのですが・・・。コレにより全員がルールを守れるようになるのですが・・・。

9.悪いことをしても優しく諭すことが大切?

もちろん、それぞれの先生が、それぞれの「考え」や「支援」「指導」を行うことが悪いと言っているわけではありません。

その子の行動が変わるまで「支援」や「指導」を継続して下さればよいのですが・・・。

しかし、このように仰る先生方のほとんどは、その子に合った「支援」や「指導」を考えたり、実行したりしないのが現状です。

そして、次のように言って「自分の指導力(支援力)」のなさを認めようとしないのです。

「子どもが自分で気づかなければ意味が無い!」
「怒ってやらせても子供のためにならない!」
「優しく諭す事が大切だ!」
「子どもたちの自主性を尊重しなければならない!」
「時間の大切さを理解すれば、自然と守るようになる。」など

その結果、ルールを守らない子が少しずつ増えていき「学校の荒れ」や「学級崩壊」が起こるのです。

10.問題児の指導をしないと他の子も問題を起こすように

学校を「荒れ」ないようにするには、先生たちが「チーム」として同じベクトルで注意を続けるが必要となります。

もしかしたら「時間を守らない子」は変わらないかも知れません。

ただ、先生たちが「チーム」として同じベクトルで注意をすることによって、他の子どもたちは確実に時間を意識できるようになります。

逆に教師がその子を注意することを止めてしまうと・・・。

周りの子どもたちは次のように考えるようになるのです。

「また、Aは遅れてきた!
「でも、先生は注意をしない!」
「何だ、遅れても怒られないんだ!」
「ルールを破っても何も言われないんだ!」
「急いで戻ってきて損した!」
「これからは時間を気にせずゆっくり来よう!」など

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小学校から中学校へ異動した先生が学校を「荒れ」させた!②

荒れを「子供」や「親のしつけ」のせいにする主任

1.小学校の服装の基準と中学の服装の基準

私は「中学教師の先輩」「生徒指導の先輩」として、島田先生の学年が「荒れ」てしまった理由を伝えます。

「先生!」
「1年生の頃、制服や体育着のシャツだしを注意しなかったでしょ!」

『うん!何で分かるの?』

「小学校って私服が多いでしょ!」
「制服の学校もあるけど、だらしなく着こなしていても注意しないでしょ!」
「だから小学校の先生が中学にくると服装のことを注意しないんですよ!」
「するとそのクラスの服装がどんどん乱れる。」
「少しすると服装だけでなく、他のルールも守らなくなるんです。」

『確かにそうかもしれない。』
『去年の5月ころ、生徒指導主事の先生に1年生は服装がだらしないと言われた!』

2.授業を早く終わらせたり延長したりも×

「授業の時間も曖昧にするときがありませんか?」

『あるよ!』
『あとチョットで終わるから、やらしてもらうときもある。』
『逆に早く終わった時は早めに休み時間にしているよ!』

「それも小学校の先生あるあるなんです。」
「小学校は担任が全ての授業をするので授業時間を曖昧にしてしまうんです。」
「長くなると、子どもたちが次の授業の準備ができなくなるでしょ。」
「逆に、早く終わると他のクラスが授業をしているのに廊下で騒いだりする。」
「どちらにしても、教師は時間をしっかり守らないとダメなんです。」
「勉強を嫌いな子は、チャイムを楽しみにしているのに延長したらかわいそうですよ!」

3.4月や1学期に支援や指導に力を入れる!

「何事も最初が肝心なんです!」
「入学当初は子どもたちもガンバる気持ちでいっぱいでしょ!」

『中学に入ったガンバるぞ!』
『心機一転、ガンバろう!』

「そのときに、子どもたちのガンバリを見つけて、褒めてあげることが大切なんです!」
「認められたり、褒められたりすれば、更にガンバろうと思える。」
「また、先生は『見てくれている』と感じれば、自然と悪いこともしなくなるんです。」「もちろん、その後も『出来て当たり前』ではなく、『出来ている事』を褒め続けるんです。」
「それによって、ルールを守ることが当たり前になるんです。」

『僕は西川先生の言っている事と反対の事をしていたよ!』
『小学校と同じように服装や時間について何も言わなかった。』
『問題行動が起こった時も怒らないで優しく諭すダケだった。』

「それで、問題行動が減りましたか?」

『全然、減らない!』
『むしろ、増えてるくらい!』

「減らないのなら別の方法を試さないとダメでしょ!」
「いじめの被害者が我慢を続けなければならなくなってしまうでしょ!」
「まずは、いじめ加害者の事を考える前にいじめ被害者のことを優先しないと!」

4.発達障害やしつけの問題じゃないの?

『加害者も話を聞くと、その場では謝るんだよね!』
『でも、また同じようなことをする!』
『これって、発達障害や親の育て方の問題じゃないの?』

「問題行動は子どもや親、発達障害のせい?」
「そんなこと言ったら、教員研修とか必要ないんじゃないですか!」
「教師の支援や指導は無意味ってことになりますよ!」
「正しい支援や指導をすれば子どもは変わります!」

島田先生は真剣に私の話を聞いて下さりました。

ただ、最後に次のようにつぶやいていました。

「でもな・・・。」
「あの子たち言うこと気かないしな・・・・。」

5.カツアゲ、深夜徘徊、いじめ、万引きなど

この頃からA中学校の悪評が他校にも広がるようになりました。

生徒指導主事の研修でもA中学校の話題が頻繁に上がります。

「B中の子たちをカツアゲしたらしい!」
「深夜徘徊で10人ほど警察に補導されたんだって!」
「いじめがひどくA中から転校してくる子がいる!」
「近所の評判も悪く、暴言を吐いたり、ペットにケガをさせたりしている。」
「近くのコンビニで何度も万引きしている子がいる。」など

A中学校の生徒指導主事はとても力のある先輩教諭です。

しかし、その先生が私に次のように言ってきました。

「2年生がヤバイんだよ!」
「まったく言うことを聞かない!」
「とにかく学年の先生がなめられてる!」
「だから、問題行動の対応は学年以外の教師でやってるんだよ!」
「西川先生、来年、A中に来てよ!」
「そして、生徒指導主事を変わってよ!」

6.「あと1年で地獄から解放される!」(主任)

翌年の3月。

島田先生がA中学校に勤務を初めて約2年が経った頃、島田先生から飲み会のお誘いがありました。

飲み会での島田先生は「残念な事」と「嬉しい事」があったと言っています。

「12月に小学校への異動願いを出したんだよね!」
「ただ、小中交流は3年と決まっているからダメだって校長に言われた!」
「これが残念な事ね!」

どうやら、島田先生は自分の学年の子供たちを放り出して小学校に戻ろうとしていたようです。

「でもね、今年で3年が経つから絶対に小学校に戻すって確約をもらった!」
「もし、小学校に戻れなかったら組合に訴える事も伝えたよ!」
「何度も校長に確認をして『絶対』と言われたから大丈夫だと思う。」
「後1年で小学校に戻れるんだ~。」
「やっと、この地獄から解放される!」
「とにかく、後1年を何とか乗り切るよ!」

これが「嬉しい事」だったようです。

7.3年をまねて2年でも問題行動が多発!

その年はA中学校の悪い評判がさらに増えた年でした。

島田先生の学年が3年生です。

本来は3年生は「学校の見本」とならなければなりません。

しかし、島田先生の学年は「学校の悪い見本」となってしまいます。

そんな3年生を見て育ってきた(?)2年生も着実に問題行動を増やしていきます。

生徒指導部の研修では「A中学校の2年生」による被害報告も多く上がるようになっていました。

「A中学の2年がC中の3年にケンカを売った!」
「○○駅の裏でもめていたところを警察に指導された!」
「近くのコンビニでは何度も万引きをしているらしい!」
「2年と3年がつるんで落書きをしたり、公共物を壊したりしている!」など

8.3年の先生は誰も子供を怒れない!

A中学校の生徒指導主事はとても力のある先輩教諭です。

しかし、その先生が私に次のように言ってきました。

「新3年は相変わらずヤバイんだよ!」
「もう、学年の先生は何も言えなくなってる!」
「注意をしてくれと言うと『ハイ』と言うんだけど・・・。」
「優しく声をかけて、子供のご機嫌取りをしてるんだよ!」

どうやら、島田先生は子供を注意したり、指導したりしていないようです。

「さらに新2年もヤバいんだよ!」
「新3年の悪行をズッと見てきてるからな~!」
「下手すると来年はもっと悪くなるかも!」
「主任はあの渡壁先生だから!」

 渡壁先生は「問題行動を起こす生徒」や「いじめの加害者」「その親」たちから絶大な信頼を得ている先生です。

 子供たちを「怒るのは良くない」と思っている(?)先生で、どんなに悪いことを子供がしても笑顔で話を聞き、優しく諭す先生です。

※ 私の書籍「学校の裏話シーリズ」にたびたび登場する先生でもあります。

9.A中学校で生徒指導主事をして?イヤです!

A中学校の生徒指導主事は何度も私を誘います。

「西川先生、来年、A中に来てよ!」
「生徒指導主事を交代してよ!」
「オレは来年もいると思うから、学校改善に協力するよ!」
「先生の下でガンバるからさ~。」

私が異動を断ると・・・。

「オレ、教育長と知り合いだからさ!」
「西川先生のことを教育長に伝えておくよ!」
「とにかく、助けてよ~!」
「一緒にやろうよ!」

しかし、私はきっぱりとA中学校への異動を断りました。

「いや~。」
「A中学校には行けないんですよ~。」
「今、甥っ子が2年生にいて、来年は姪っ子が1年生になるんですよ~。」
「近い親戚がいるところには行けませんからね~。」
「一緒に働けなくて残念です~。」

10.小学校に戻った先輩!そのとき私は?

その年の2月。

島田先生から飲み会の誘いをいただきました。

後2ヶ月で小学校に戻れる島田先生はニコニコ、ウキウキです。

「ついに小学校に戻れるよ~!笑」
「昨日、校長から内々に小学校への異動を教えてもらったよ。笑」
「いや~、あと1ヶ月半だよ~!笑」
「思うと、長いようで短かったな~。笑」
「あの子たちも卒業だよ~。笑」
「早いな~。笑」
「やっと小学校に戻れるよ~。笑」
「楽しみだな~。笑」
「ちなみに西川先生は異動するの?」

私は質問に答えます。

「昨日、校長から内々に異動を伝えられました。」
「A中学校で生徒指導主事となることが決まっているそうです。」
「甥っ子と姪っ子がいるのに・・・・。」
「何で島田先生の尻拭いを・・・・。」

その日の飲み代は島田先生が払ってくれました・・・・。

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学級崩壊クラスの授業をしてきた!①

1.子供が悪いことをしても注意ができない担任!

2.ゲストティーチャーとして学級崩壊クラスの道徳を!

昨年11月、知り合いの校長からこのような依頼を受けました。

「小学校5年生のクラスが学級崩壊になりかけてるんだ!」
「担任が何を言っても聞かなくなている!」
「主任と教頭がなんとかがんばってるんだけど、そろそろ限界なんだよね!」

この校長とは「荒れている学校」に勤務しているとき、学年主任と生徒指導主事の関係でした。

私の学級運営や生徒指導主事としての対応、道徳主任や道徳推進教諭としての公開授業などを絶賛して下さった先生です。

『学級崩壊の前の支援方法の相談をしたいのかな?』
『道徳やエンカウンター、人間関係スキルの資料が欲しいのかな?』

私がこう思っていると校長は次のように仰いました。

「残りの5ヶ月で月に1回、道徳の授業をしてくれない?」
「形はゲストティーチャーだけどメインで授業をやって!」

この校長とは、当時から一緒に飲みに行く仲でした。

そこで、私は授業後の飲み代をおごってもらう事を条件に、月に1回、合計5回の道徳の授業を行う事を承諾したのです。

3.学級崩壊クラスへの対策は担任の授業を減らす?

私は校長にそのクラスの状態を聞きました。

・担任は40代後半の男性教諭。
・子供とは距離を置く傾向がある。
・基本的に怒らず、優しい先生と言われている。
・クラスの子供は、先生の言うことをほとんど聞かない。
・一部の男子と女子は、授業中に勝手に出歩いたり、しゃべったりする。
・その他の子も、やる気がなくなってきている。
・授業中に挙手や発表はほとんどない。
・他の3クラスは落ち着いている。

そのクラスにどのような対応をしているのかも聞いてみました。

・担任の授業を減らし、他の教諭の授業を増やしている。
・具体的には、主任(女性で50代前半のメリハリある先生)や教頭が担任の代わりをしている。
・本来は1日で担任の授業が4~5時間だが、現在は2~3時間に減らしている。
・担任の授業にはベテラン支援員(元教員)を配置している。
・ただ、支援員が注意をしても、数人の子供は授業をきかなくなっている。

私がゲストティーチャーとして授業を行うのは、「担任の授業を減らす一環」の1つのようです。

4.子供の情報を持っていない担任

私はそのクラスの子供が、どの程度のエンカウンターや人間関係スキルができそうかを校長に聞いてみました。

すると校長は次のように言います。

「グループ活動は出来ないかもしれない。」
「先生の話を聞くこともできない可能性が高い。」
「ちょっとした『話し合い』くらいなら何とかできるかもしれないが・・・。」

私は授業について次のお願いをしました。

「4月の最初にクラスで自己紹介など掲示を作ったりしますよね!」
「その掲示のコピーをいただきたいです。」
「また、座席表もいただきたいです。」
「そこには気になる子供の様子をかいて下さい。」
「中心授業で配布するような感じでいいです。」

しかし、数日後に帰ってきた返事は次のようなものでした。

「自己紹介などの掲示はしていないのでコピーは出来ない。」
「ただ、座席表は作らせたから今日にでも持って行くよ!」

5.座席表にマイナス面ばかり書く担任

その日の夕方、校長が私の自宅に座席表を届けて下さいました。

私は、座席表に書かれた生徒の情報を確認します。

すると、誰に最も困っているのかが分からない位、全員のマイナス面が書かれています。

例えば、こんな感じです。

「Aくん:授業中に勝手に出歩くことが多い。」
「Bくん:話を聞かず、好き勝手な行動をとる。」
「Cさん:寝ているか、絵を描いているかのどちらか。」
「Dさん:隣のGさんと、授業に関係ないことを話している。」
「Eくん:話は聞いているが、挙手や発表をしない。」
「Fさん:能力があるので、課題はすぐに終わるが、その後、読書をしている。」など

担任が、このクラスの子供たちを「嫌い」であることが、よくわかりました。

それと同時に「クラスがバラバラ」で「授業が成立していない」ことも分かりました。

6.クラスがどのような状態でも対応できる準備!

私は、1回目の授業の構想をたてます。

「最初のつかみはどのような話にするか?」
「その後は、この話で笑いを取ろうか?」
「話を聞けないクラスなら、少し脅かすような内容にするのもありだ!」
「話を聞く体制ができているなら、それを褒めて、活動にうつろう!」など

結局、私は「つかみ」の話を3本。「つなぎ」の話を4本準備しました。

当日、クラスの様子をみて、「つかみ」でどの話を使うのか?何本の話をするのか?を決めます。

同様に「つなぎ」の話もクラスの実態により変えていくことにしました。

また、クラスで行う人間関係をよくする活動の資料の作成もしました。

これも、3つ用意しました。

クラスの状態が良ければ、「つかみ」や「つなぎ」の話を短くして、すぐに活動に入ります。

時間によっては活動を2つ行ってもいいと思っていました。

逆にクラスの状態が良くなければ活動を減らしていきます。

あえて活動を0(ゼロ)にするパターンも考えておきました。

私は教員時代も「4月の授業」については、上記のような準備をして授業に臨んでいました。

7.ゲストティーチャーを迎えに来ない子供たち!

1回目の授業当日。

校長室で授業開始を待つ私の所に、係の子が迎えに来る気配がありません。

すると、校長はこのように言います。

「担任には、係の子を校長室に来させるように言っておいたんだけど・・・・。」

校長室で来ない係を待っていても時間の無駄です。

休み時間の様子も見たいと考えていた私は「授業開始3分前」に校長と教室に向かうことにしました。

教室に入ると机はバラバラで教室はゴミだらけです。

教卓には配達係が配っていないプリントやノートが山積みにされています。

そんな中、子供たちが声をかけてきます。

「おじさん誰?」

私は笑顔で、子供たちにこう答えます。

「これから、道徳の授業をする先生だよ!」
「ヤンキーがいっぱいいる中学校で働いていた先生だよ!」

8.自分から仕事をしない子供たちを褒めまくる担任!

私の周りに来た子供たちの表情が少し変わりました。

私は教卓にあるノートを持って「笑顔」で次のように言います。

「配達係とかはいないの?」

すると、担任が慌てて声をかけます。

「○○くんと△△く~ん。」
「ノートとプリント配ってくれると嬉しいな~!」

○○くんと△△くんが、教卓に来て配達を始めます。

すると、担任がこう言います。

「エラいね~!」
「助かるよ~!」

そのとき、授業開始のチャイムが鳴りました。

ただ、配達係はチャイムを気にせずプリントを配っています。

※ 丁寧に机の上に置くのではなく、投げたり、取りに来させたりしていました。

9.チャイムが鳴っても席につかない子供たち!

チャイムが鳴った後も、半分くらいの子供は、休み時間同様に出歩いてしゃべっています。

もちろん担任は何も言いません。

仕方がないので、私が声をかけます。

「授業の時間だよ!」
「席について!」
「配達係も席について!」
「残りは帰りの会の前に配って!」
「号令係は誰?」

すると、ダラダラと子供たちが席に着きはじめます。

それと同時に号令係が声を出します。

「起立!気をつけ!れ」

私は、号令係にこう言います。

「ちょっと待って!」
「まだ、席についてない子もいるよ!」
「座っている子もいるよ!」

10.席に着かない子は無視して号令していいよ?

私は席についていない子や座っている子にこう声をかけます。

「急いで自分の席に行って!」
「ダッシュ、ダッシュ!」
「座っている子は立って!」

授業終了後、号令係に話を聞くと彼女は次のように話してくれました。

「先生(担任)に号令と言われたら、起立と言うんです。」
「最初は、全員が立つのを待っていたんですが・・・・。」
「席に着かない子や立たない子が多くて・・・・。」
「私は号令をどうすれば良いのか先生(担任)に聞きました。」
「そうしたら・・・。」

『時間がもったいないから、ドンドン号令をかけていいよ!』
『あいさつは、やることが大切だから!』

これでは、真面目な子供たちが担任の言うことを聞かなくなるのは当然のことです。

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学級崩壊クラスの授業をしてきた!②

授業ルールは最初の授業から徹底!

1.学級崩壊クラスには当たり前のことが通用しない!

昨年11月、知り合いの校長からこのような依頼を受けました。

「小学校5年生のクラスが学級崩壊になりかけてるんだ!」
「担任が何を言っても聞かなくなている!」
「主任と教頭がなんとかがんばってるんだけど、そろそろ限界なんだよね!」
「残りの5ヶ月で月に1回、道徳の授業をしてくれない?」
「形はゲストティーチャーだけどメインで授業をやって!」

私は様々なパターンを想定して授業の計画を立てました。

数日後、私は1回目の授業を行うために小学校を訪ねます。

しかし、授業を行うにあたって最初に大きな問題(?)にぶつかりました。

「授業以前に学校生活の基本ルールが全く身についていない!」

私は「初めて授業」を行う時は、次のようなことを意識して授業に臨みます。

「褒める場を意図的に作って良い所を見つけよう!」
「それ以外でも褒める行動や発言があれば意図的に褒めていこう!」
「子供の良い所を見つけ褒めてあげることで、気持ちを前向きにしよう!」

しかし、子供たちの状態は・・・・。

2.チャイムが鳴ってもしゃべっている子供たち!

授業開始のチャイムがなっても子供たちは席に着きません。

担任もそれを注意しません。

最初の授業でしっかりと指導をしないと、次回の授業でもチャイム着席はできないままでしょう。

本来は担任がこれをできるようにさせるのですが・・・・・。

少し待ちましたが、担任が指導をする気配は全くありません。

担任が言わないのであれば、私が言うしかありません。

私はゲストティーチャーでしたが子供たちに声をかけます。

「急いで自分の席に行って!」
「ダッシュ、ダッシュ!」
「座っている子は立って!」

3.この先生は恐い?面白い?優しい?分かりやすい?

子供たちは、「時間の意識」や「授業に対しての常識」を失ってしまっています。

初めての授業ですが、私は子供たちの悪いところを注意することにしました。

ただ、3月まで月に1回の授業を行います。

強く怒りすぎて、その後の授業をボイコットされても困ります。

そこで私は次のように行う事を決めました。

・つかみの話は「荒れていた学校」のことを話そう。
・私がその子たちと戦ってきたことを話そう。
・「この先生はすごい(怒らせたらやばい)!」と思わせよう。
・つかみとして、面白かった教え子の話もしよう。
・そこで「先生の授業は面白い!」と思わせよう。
・同時に話を聞けない子を注意し続けよう。
・繰り返すようなら「怖いオーラ」を出して強めに注意しよう。
・最後に10分ほど「楽しい班活動」を行おう。
・半分ほどで授業が終わるはずだから、続きは次回に持ち越そう。
・次の授業から「楽しい班活動」の時間を増やし、クラスの人間関係を良くしよう。
・2月と3月の授業はモラルジレンマなどを行い「自己理解」や「他者理解」も促したい。

4.おしゃべりを注意すると子供たちがびっくりしていた!?

私が自己紹介を始めると、ある男の子が後ろを向いて、友達とおしゃべりを始めました。

私はスグに笑顔でその子を注意します。

「そこの男の子!」
「先生の話が終わるまでは、どんな理由でもおしゃべりはダメだよ!」
「先生のことを後ろの子と話してくれているんだよね!」
「ありがとうね!」
「でも、先生の話が終わるまではおしゃべりはダメだからね!」

4月から悪い事をしても注意されていない子供たちです。

私がおしゃべりを注意したことに、その子以外の子供も驚いていました。

さらには笑顔で注意をしてくる私が恐かったのでしょうか?

その子はスグにおしゃべりをやめて前を向いてくれました。

5.教師の言うことを聞きたくない男の子!

ドラマで「今日から俺は!」を見ていた子が多かったため、子供たちは私の話に興味津々です。

そんな中、学級崩壊の主犯格の1人の子供が、立ち上がって後ろの席の友達の所に歩き始めました。

当然、後ろで私の授業を見ている担任は何も言いません。

私は話をやめ、彼を注意します。

「少年!」
「授業中に出歩いちゃダメだよ!」
「席に戻って!」

反抗はしませんが指示も聞きません。

私が再び声をかけると、おしゃべり相手の子が彼に言います。

「先生に注意されてるよ!」
「席に戻った方がいいよ!」

しかし、彼は席に戻りません。

周りの子がいる状況で、私に従いたくないのでしょう。

6.トイレ?借り物?授業中だから終わったらすぐに席に!

私は身長180cmで45才の大人です。

彼は身長150cm程度の小学5年生です。

小学生の子供にとって大きな大人は怖いものです。

私は笑顔で彼の所に行き、生徒指導主事モードのオーラを出して、わざと上から見下ろすようにして言いました。

「トイレに行きたいのかな?」
「それなら、1人で行ってきていいよ!」
「でも、終わったらすぐに戻って来るんだよ!」

また、別の言い訳も作ってあげます。

「友達に借りたい物があったのかな?」
「本当はダメだけど、今は特別にOKにしてあげる!」
「今すぐ借りちゃって!」
「そして、すぐに席に戻ってね!」

「荒れ」ている学校で様々な「ヤンキー」や「アッチ系の保護者」とやり合ってきた経験がある私にしてみれば、小学校5年生はカワイイ以外の何者でもありません。

彼は私の生徒指導主事オーラを感じたのか、こう言いました。

「トイレに行かせて下さい!」

7.悪い事をしたときも怒らない教師たち!

必要な場合はオーラで脅すこともありますが、できれば子供は褒めて伸ばしたいものです。

ただ、クラスを学級崩壊させる先生たちは安易に次のように言います。

「怒るのはよくない!」
「子供たちの心に落ちる説諭が大切だ!」
「褒めて伸ばす事も大切だ!」
「小さいことでも褒めるようにしている!」など

そして、悪い事をする子供たちを褒め続けます。

・「悪い事をしている子」は、悪い事をしているにも関わらず褒められる。
・「真面目な子」や「我慢をしている子」が褒められることはほとんどない。

その結果、真面目な子供たちが「いじめ」られ、我慢をしている子が我慢をせず一緒に悪さをするようになってしまうのです。

8.悪い事をすると恐いけどがんばれば認めてくれる先生!

私は主犯格の彼との関係を良いものにしたいと考えています。

ただ、先ほどの対応で彼は次のように思ったのではないでしょうか?

『この先生は恐い!』
『今までの先生とは違う!』

もちろん、これも必要な感情だと思っているからこそ「生徒指導主事オーラ」を出したのです。

ただ、彼には次のようにも思ってもらいたいとも考えています。

『この先生は悪い事をすると恐い!』
『でも、ガンバっていれば認めてくれる。』

私は初めての授業が終わるまでに、彼の良いところを見つけ褒めようと決めたのです。

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学級崩壊クラスの授業をしてきた!③

支援(指導)の後の確認、称揚で子供が積極的に!



1.学級崩壊クラスには当たり前が通用しない!

昨年11月、知り合いの校長からこのような依頼を受けました。

「小学校5年生のクラスが学級崩壊になりかけてるんだ!」
「担任が何を言っても聞かなくなている!」
「主任と教頭がなんとかがんばってるんだけど、そろそろ限界なんだよね!」
「残りの5ヶ月で月に1回、道徳の授業をしてくれない?」
「形はゲストティーチャーだけどメインで授業をやって!」

私は様々なパターンを想定して授業の計画を立てました。

数日後、私は1回目の授業を行うために小学校を訪ねます。

しかし、授業を行うにあたって最初に大きな問題(?)にぶつかりました。

「授業以前に学校生活の基本ルールが全く身についていない!」

私は「初めて授業」を行う時は、次のようなことを意識して授業に臨みます。

「褒める場を意図的に作って良い所を見つけよう!」
「それ以外でも褒める行動や発言があれば意図的に褒めていこう!」
「子供の良い所を見つけ褒めてあげることで、気持ちを前向きにしよう!」

しかし、子供たちの状態は・・・・。

私と子供たちは初対面でしたが、それ以降の授業のことを考え、私は子供たちを注意することを決めました。

2.おしゃべりをせず話に聞きいる子供たち!

前半の子供への注意が効いたのか?

私の話術に聞き惚れたのか?

子供たちは私の話を熱心に聞いてくれたり、質問に答えたりしてくれました。

主犯格の彼も「私の教え子の面白い話」から、顔が緩んできているのが分かります。

時計を見ると授業の残り時間は15分です。

私は子供たちに次のように伝えます。

「ごめん!」
「みんなの反応が良いから、ついつい気持ちよく話しちゃった!」
「今日は班対抗クイズをやるんだった!」
「時間が少なくなっちゃってごめんね!」
「今日は半分だけやって、残りは次回にやろう!」

子供たちは「班対抗クイズ」に興味をもったようです。

「班対抗クイズって何?」
「どんなクイズなの?」
「班で戦うの?」

3.仲間それぞれに得意な分野がある!だから相談!

私は子供たちに「班対抗クイズ」の説明をします。

「それじゃあ、1問目を言うから聞いてね!」
「あっ、でも、答えが分かった人も同じ班の人以外には言わないでね!」
「最後に合計点で順位をつけるから!(実際は順位はつけません)」

『第1問』
『鬼滅の刃の柱を全て答えなさい!』

すると、ある女の子が次のように言います。

「先生!」
「私はアニメを見ないからこの問題は分からない!」
「K-POPの問題なら分かるのに!」

私は彼女に次のように伝え、周りを見るように言いました。

「このクイズは班対抗って言ったよね!」
「班の仲間と協力するんだよ!」
「自分が分からない問題でも・・・・。」

彼女は同じ班の子を見回します。

すると同じ班の女の子が不敵な笑みを浮かべてOKサインを出したのです。

4.1人ひとりが主役になれる問題を準備!

もちろん、小中学生の女子がK-POPが好きなのは分かっています。

当然、私はK-POPに関するクイズも準備していました。

少しして、先ほど「アニメが分からない!」と言った彼女が大きな声で言います。

「K-POPの問題だ!」
「コレは私に任せて!」
「私はセブチの大ファンだから全員の名前を言えるよ!!」
「ミンギュでしょ、ホシでしょ・・・・。」

すると同じ班の男の子が人差し指を口の前にかざします。

「大きな声で言っちゃダメだよ!」
「他の班にばれちゃうよ!」

彼女は班の仲間に謝って、他の班に聞こえないように答えを伝え始めたのです。

5.学級崩壊あるある「話し合いで机を付けない」

話を少し前に戻します。

説明が終わった後、私は子供たちに次のような指示を出しました。

「机を班の形にして!」

すると、ここでも「学級崩壊あるある」を見ることができます。

・班の形になるときに他の子と机を付けない!
・4人の机がキレイな四角形にならない。

このクラスの班隊形は「学級崩壊あるある」の典型的でした。

男子は男子同士、女子は女子同士で机を付けます。

しかし、男子と女子はお互いに机を付けようとしません。

6.周りの事を考えられない子供たち

また、班対抗クイズの解答用紙を配ると・・・・。

クイズを仲間と協力して解くように言っているにも関わらず、男子は自分たちの机の上に解答用紙を置いています。

コレでは女子が問題を読んだり答えを書いたりすることができません。

「男子にはやる気があるから解答用紙を自分たちの机の上に置いている。」

このように解釈することも出来ますが、実際は「自分勝手」「自己中心的」という状態で仲間の事を考えていないだけなのです。

私は机間支援をしながら、全ての班の机をキレイにくっ付けていきました。

同時にクイズの解答用紙を全員が見やすい机の真ん中に置き直していったのです。

7.担任が班の机を付ける動きを見せたが・・・

私が各班の机をピッタリ付けて回っているのを見た担任は近くの班の机をピッタリ付けるために動き出してくれました。

『担任がやっと動いてくれた!』
『やっと教員らしくなってきたな!』
『いいぞ!』
『それで良いんだ!』
『机をピッタリ付けるように言わない=子供の意志を尊重ではない!』
『ダメなものはダメで良いんだ!』

私がこう思っていると失礼な発言をする男子がいました。

「何で机を付けるの!」
「やだ~な~!」

この発言を聞いた隣の女の子が申し訳なさそうな表情をしています。

8.机を付けるのを少しだけ我慢して(担任の言葉)

私が失礼な発言を注意しようとすると、担任が驚くべき発言をします。

「カウンセラーの先生が机を付けるように言ってるからね。」
「少しだけ我慢しようね~。」

担任は失礼な発言をしている子供を注意するどころか、失礼発言を肯定し、隣の子供に「あなたが我慢しなさい」と思われる発言をしたのです。

この失礼発言は「隣の女子」に対しての「いじめ」ととってもよい発言です。

それを、担任は肯定してしまったのです。

担任には申し訳ありませんが、私は強い口調で「失礼発言」を注意しました。

「班で協力するんだから机を付けるのは当たり前でしょ!」
「机を付けたくないと言うのは班の仲間を汚いと思っているの?」
「それは完全にい差別発言だよね!」
「いじめにつながる発言だから親や教育委員会に連絡するよ!」

ただ、子供を怒るダケでは問題は解決しません。

この子に対しても逃げ道を用意してあげます。

「いじめるつもりで言ったの?」
「それとも、何も考えないで言っちゃった?」
「何も考えないで言ったなら、次から気をつけてくれれば良いけど・・・。」

失礼発言をした男の子はスグに答えました。

「いじめるつもりはありませんでした!」
「何も考えずに言っちゃったダケです!」

私は「これからは気をつけようね」と軽く注意をして班対抗クイズに話を戻したのです。

9.授業中にするべき事を理解する子供たち

主犯格の彼は「私が班の机を付けて回っている」のを見たからか、私が彼の班に着く前に仲間同士で机をピッタリ付けていました。

※ 普段から机を付けていた可能性は・・・、ないと思います。

それを見た私は次のように思いました。

『早速、彼を褒めるチャンスが来た~!』

私は彼の班の所に行き、次のように言います。

「お~!」
「この班は自分たちで机をピッタリ付けている!」
「班で協力する姿勢があるね~!」
「いいね~!」
「先生に言われなくても、自分たちで考えて行動をしてるね!」
「素晴らしい!」

10.良い現れはその場で褒めて認める!

また、彼の得意分野のクイズを出した後も彼の班の近くに行きます。

当然ですが、彼は得意分野のクイズについて班員に説明をしていました。

「おっ!」
「この班はちゃんと話し合いができてるね!」
「Aくん(主犯格くん)が中心になっているのかな?」
「先生はこの班みたいに、みんなで協力している姿を見るのが好きなんだよね!」
「机も自分たちで付けていたもんね!」
「この班はみんなの見本になるね~!」
「他の班もチャンと出来ているかな~?」

私の言葉を聞いたAくんは笑顔になっています。

さらには他の班の子供たちも私に褒めてもらおうと、みんなが協力してクイズの答えを書き始めました。

「キーン、コーン、カーン、コーン。」

ここでチャイムがなって、初めての授業は終了しました。

11.えっあの子たちが授業を受けてる!?

その後、私は合計4回の授業を行いました。

ただ、1回目の授業で自分の思ったとおりの支援ができたことで、2回目以降の授業では何も苦労することはありませんでした。

子供たちが「班の仲間で協力」を自分たちで率先して実践してくれたからです。

私は授業での子供たちのガンバリを「見つけ」「褒め」「認め」たダケなのです。

担任以外にも、校長や教頭、主任が私の授業を見に来て下さいました。

また、何人かの保護者の方も授業参観にいらっしゃって下さいました。

私の授業を見に来た方々が口をそろえて言ったのは、次のような言葉です。

「あの子たちがチャンと話を聞いてる!」
「あの子たちが班で話し合いをしている!」
「あの子たちが出歩いていない!」
「あの子たちが・・・・・・・」

12.支援→確認→称揚→自主行動→のサイクル完成!

子供たちが一生懸命に活動をしてくれるようになったので、私は授業の中で子供たちの行動をたくさん褒めました。

すると、子供たちはさらに積極的に活動してくれるようになります。

当然、私はさらにたくさん褒めます。

校長や主任、保護者にも子供たちのがんばりを発信しました。

私の授業の効果なのか(?)他の授業でも以前に比べ「出歩き」や「おしゃべり」が減ったとの嬉しい報告もいただきました。

私は常に思っています。

「学級崩壊は『子供たちの質』や『親のしつけ』の問題ではない!」

来週が最後の授業でしたが、残念ながらコロナウイルスの流行により中止になってしまいました。

学級崩壊を発達障害のせいにする学校

発達障害を疑う前に、自分の授業を疑え!

1.学級崩壊を発達障害のせいにする学校

※ 同じような事例の相談を、毎年、いただきます。

ある中学校で特別支援コーディネーターをしていたときの話です。

私は校長に呼ばれこう言われます。

「1年1組が学級崩壊になりそうだ!」
「大地くん(仮名)がクラスを悪い方向に導いている。」
「どうやら、大地くんは発達障害のようだ!」
「スクールカウンセラーと一緒に授業を見てくれ!」

私はスクールカウンセラーと一緒に1年1組の国語の授業を見にいきました。

2.ADHDの傾向はあるけど・・・・

スクールカウンセラーと一緒に1年1組の授業を見ていると、気になる子どもが2人いることに気づきます。

さりげなく名前を確認すると、気になる子の1人が大地くんであることが分かりました。

確かに落ち着きがないようには感じます。

注意も散漫で常にキョロキョロしているのです。

しかし、担任の先生が問題を解くよう指示を出すと、大地くんは何も言わず問題に取りかかりました。

ただ、大地くんには難しい問題だったようで、すぐに諦めて問題を解くのをやめてしまいます。

問題を解くことが出来ないと思った大地くんは、席を離れて友達の所に歩いていきました。

3.教師の授業力(指導力)にも問題があるのでは?

これをみたスクールカウンセラーは私に耳打ちしました。

「スグに飽きてしまう!集中できない!動き出す!」
「大地くんは完全にADHDですね!」

大地くんがADHD傾向であるという意見に対しては反対はありません。

私も同じように感じたからです。

しかし、教員を20年(当時)してきた私には、大地くんの行動以上に気になることがありました。

それは、担任の授業進行や声かけ、机間支援の「未熟」さです。

4.問題を解き終わった子が苦手な子に教えるシステム

最初に担任は黒板を使い問題の解き方を説明します。

そして、その後の指示を出します。

「問題を出来た人は先生の所に持ってきて!」
「先生が○付けをするからね!」

子どもたちは急いで問題に取りかかります。

当然、大地くんも問題に取りかかりました。

勉強が得意な子がスグに問題を解き終わり、担任のところにノートを持っていきます。

先生は○付けをして、その子を褒めています。

問題を解き終わった子どもたちは、ぞくぞくと先生のところに並んでいきます。

すると、先生がこのような言葉を発します。

「合格した子は分からない子に教えてあげて!」

5.それぞれの指導法法にはメリットとデメリットがある

これは、小学校や中学校で良く見られる授業の光景です。

先に問題を解いた子が、問題が分からない子どもに教えるのです。

このような指導方法にはメリットもあればデメリットもあります。

どちらにしても、この指導方法は「落ち着いているクラス」や「子ども同士の仲が良いクラス」で効果を発揮する指導方法です。

逆に「荒れているクラス」や「スクールカーストがあるクラス」では、デメリットの方が多くなってしまいます。

1年1組は学級崩壊一歩手前のクラスです。

案の定、この指導補方法によるデメリットの方が多くなっていたのです。

6.問題を教えずにおしゃべりを始める子どもたち

合格した子は、仲の良い友達のところに行きます。

そして、まだ、問題を解き終わっていない友達に問題を教え始めました。

しかし、大地くんのところには誰も教えに来てくれません。

これでは、大地くんが永遠に問題を解き終えることはないでしょう。

合格した子が増えてくると、次のデメリットが生じます。

合格した子が、仲の良い友達のところに行くのです。

ただ、その友達も合格をしています。

そうです。問題を教えに行くのではなく、おしゃべりをしにいくのです。

大地くんが、問題を解き終わっていないのに席を立ったのはこの時です。

クラスの1/3の子どもが合格をもらい出歩いていたときなのです。

7.大地くんばかりが担任から注意をされる!

クラスの半分以上が出歩いて、問題を教えている(しゃべっている)状態になりました。

出歩いておしゃべりをしているのは大地くんだけではありません。

しかし、先生は大地くんを真っ先に注意します。

「大地くん!」
「あなたは、まだ、合格してないでしょ!」
「何で、出歩いてるの!」
「席に戻って、問題をやりなさい!」

大地くんは、素直に席に戻り問題を解こうとします。

しかし、答えがわからない大地くんはまた出歩いてしまいます。

ただ、冷静に回りを見てみると、大地くん以外にも合格をしていないのに出歩いている子が何人もいます。

それでも、他の同じような子は注意をされず、大地くんだけが注意をされます。

「大地くん!何度言ったらわかるの!」
「席に戻って、問題をやりなさい!」

8.イライラする大地くんと回りで騒ぐクラスメイト

大地くんは席に戻り机に突っ伏してしまいました。

表情からはイライラが伝わってきます。

私の予想ですが、大地くんはこう思っていたのではないでしょうか?

『何で、俺ばっかり注意されるんだ!』
『俺以外にも出歩いている子はいるのに!』

私はクラス全体を見てみます。

すると、黒板の磁石を勝手に持ってきて、いたずらをしている子。

電子黒板を勝手にいじっている子。

出歩いておしゃべりをしている子。

自分の席に座っているのは、注意をされてイライラしている大地くんと数人の女の子だけです。

9.大地くんがキッカケではないことでも怒られるのは?

先生のところに並んでいた子どもがいなくなりました。

すると、先生はまた授業をはじめます。

当然ですが、大地くんの授業意欲はなくなっています。

その後、国語の授業で大地くんは5回ほど注意をされました。

確かに、「大地くんが怒られて当然」という行動が2回ありました。

しかし、残りの3回の行動は「他の子が先に出歩いた」「他の子がおしゃべりを始めた」「他の子がヒソヒソ話を始めた」ことがキッカケです。

もちろん、そのキッカケに乗ってしまい、大地くんが一緒に出歩いたり、騒いだり、ヒソヒソ話をしたのは事実です。

しかし、担任の先生が怒るのは大地くんだけです。

「大地くん!何で授業をちゃんと受けないの!」
「いい加減にしなさい!」
「今は休み時間ではありません!」

一緒に遊んでいた子を先に怒ったり、一緒に怒ったりすればいいのですが・・・。

怒られるのは大地くんだけでした。

10.私は悪くない!あの子が発達障害だから!(担任)

大地くんは授業に参加しようとしていました。

しかし、授業の内容が分からなくなってしまい、やる気をなくしてしまったのです。

本来であれば、教師が上手に授業を行うことで大地くんは授業に参加できたはずです。

担任が上手に支援を続ければ・・・・。

ADHDの特徴を「得意」と思うことができれば・・・。

しかし、担任は大地くんの「何にでも興味を持つ」という部分を「悪い」と決めつけました。

「授業に集中しない!」
「自分勝手な行動をとる!」
「説明の途中に口を挟む!」
「授業中に出歩く!」など

担任が自分の教科である国語に興味を持たせることが出来ていれば、授業の内容に対する「つぶやき」が多く出るようになるのに・・・。

そして、最終的にこのような結論に達します。

「どうして、あの子は言うことを聞かないの?」
「なぜ、他の子と同じ事ができないの?」
「私は何も悪くない!」
「あの子が発達障害だから授業が上手くいかないんだ!」

11.薬を飲ませましょう!(スクールカウンセラー)

授業参観後、校長、担任、学年主任、特別支援コーディネーター(私)、スクールカウンセラーでケース会議を行いました。

「大地くんは、どうでしたか?」
「やっぱり発達障害ですよね!」

担任の問いにスクールカウンセラーが答えます。

「あの子は発達障害です!」
「完全にADHDでしょう!」
「だから出歩いたり、しゃべったりしてしまうんです!」
「まずは病院で検査をしてもらいましょう!」
「そして、薬を処方してもらいましょう!」
「もらった薬を飲めば、落ち着くでしょう!」

このことばに担任は笑顔で答えます。

「やっぱり!そうですよね~!」
「私もそう思っていたんです!」
「だから言うことを聞かないんですよね!」
「話を理解できないってことですよね~!」
「発達障害だから!」

12.授業改善の提案をするも・・・

「ちょっと待って下さい!」
「病院とか薬とか言う前に授業を工夫してみませんか?」

私の意見に対して校長が質問をしてきます。

「具体的に、どのような工夫をするんですか?」

そこで、私は授業の改善点を伝えます。

① 大地くんに勉強の個別指導を行う

大地くんは「勉強をがんばりたい」という気持ちがあります。

授業中の様子を見ると、分からないところを先生に教えてもらいたいという気持ちがあるように見えました。

もしかしたら、「友達には教えてもらいたくない!」というプライドがあるのかもしれません。

担任が個別指導を行うことで大地くんとの関係を良くすることが出来ます。

さらには、褒める場も作ることができるため、大地くんの担任への信頼が高まり、授業態度の改善にも効果があると思われたのです。

② 合格をもらった子が歩き回るのはやめる

合格をもらった子は「終わっていない友達に教えにいく」ことになっています。

しかし、現状はこの指導法により授業はざわつき、大地くんを指導する回数が増えています。

また、実際に「終わっていない友達に教えている子」はほとんどいないのが現状です。

逆に出歩いて「おしゃべり」や「いたずら」をしている子がほとんどです。

それならば理想を追い求めるのはやめ、この指導方法は封印するべきです。

ADHDの傾向がある大地くんは、回りの子が出歩いていると気が散ってしまうのです。

当然、一緒になって出歩いたり、しゃべったりする可能性は高まってしまいます。

③ 教え合うなら前後左右の子に限定する

担任として「教え合い学習」を大切と思うのであれば、他の方法を考えるといいでしょう。

例えば、教えていいのは「前後左右の友達」に限定するなどはどうでしょう?

出歩くことは禁止とすることでクラスが落ち着くとともに、「教え合い学習」による知識の理解も深まります。

もちろん、クラスが落ち着いてきたら、少しずつ「席を立って教えてもいい」とルールを緩和してもいいと思います。

こうすれば、今の指導方法より、スムーズに担任の思いを実現できるはずです。

④ 問題合格後にやるべき課題を伝えておく

合格した子は「教える」という大義をもって、堂々とおしゃべりをしています。

これでは、授業の規律が守られません。

おしゃべりに夢中になるため、その後の授業でもおしゃべりが続いてしまう可能性もあります。

問題合格後にやるべき課題やプリントを用意し、明確にするのはどうでしょう?

子どもたちはそれに真剣に取りくむのではないでしょうか?

少し難しい問題のプリントを用意するのがオススメです。

そのような問題であれば、友達との「教え合い学習」が活発になると思うのですが。

もちろん、問題合格後は読書や宿題を「静か」に行うというルールもオススメです。

13.前の学校では上手くいってました!(担任)

私は授業の改善方法を具体的にお伝えしました。

しかし、この提案は担任の癇に障ったようです。

「前の学校では、このやり方で上手くいっていました!」
「大地くんがいるから、上手くいかないだけです!」
「あの子は発達障害だから、私のやり方についてこれないんです!」

スクールカウンセラーもこう言います。

「まずは病院で検査をしてもらったほうがいいと思います。」
「薬を飲めば多動を抑えることが出来ます!」
「親御さんに病院を勧めた方がいいと思います。」

最終的に校長の判断で、担任とスクールカウンセラーの意見が採用されます。

14.大地くんママに病院での検査を勧めると・・・

その後、学年主任が大地くんママに「病院での検査」を勧めると、大地くんママはこのように言ってきたそうです。

「確かにADHDの傾向はあるかもしれません!」
「でも、小学校の時はしっかり授業を受けていました!」
「本人は担任が嫌いと言っています!」
「担任の対応が悪いんじゃないですか?」
「専門家であるスクールカウンセラーに相談をさせて下さい!」

相談を受けたスクールカウンセラーは、大地くんママの圧力に屈したのでしょうか?

ケース会議とは反対のことを大地くんママに伝えてしまいます。

「小学校のときは普通に出来ていたんですね。」
「それでは、大地くんに検査は必要ないかもしれませんね。」
「私から授業改善を学校に伝えておきますね。」
「検査についても保留でいいと思います。」